解禁に向かう民泊、しかし自治体は独自規制を強化!?…何故自治体は民泊に消極的なのか、民泊のメリット・デメリットを比較しながら考察

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先日3月10日、政府は民泊新法(正式名称:住宅宿泊事業法案)を閣議決定しました。同法案は、自役やマンションの空き部屋を旅行者(主に訪日外国人観光客)に有償で貸し出す「民泊サービスに対し、ある意味で規制、またある意味で緩和をするルールです。

主な内容は、

  • 緩和

    • 今まで民泊を適法に運営するには「旅館業法」の厳しいルールに則らねばならなかったのが、 各種手続き、申請をすることで簡単に民泊を営業できる ようになる
  • 規制

    • 民泊の 年間営業日数の上限が180日 になる

といったもので、政府は早ければ来年2018年1月からの施行を目指しています。

しかしながら、この民泊新法による規制緩和については、政府の思惑と自治体の対応が足並みが揃っていない様子で、「上乗せ条例」について新たな議論が白熱しているようです。

 

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民泊新法が目指すもの:健全な民泊サービスの普及と宿泊施設不足問題の緩和

ここ数年のインバウンド需要の急速な拡大に対応するように、民泊サービスが日本でも急速に普及してきています。今までの民泊に焦点を当てたルールが存在しなかったがために、民泊は謂わばグレーゾーンのような状態で広まっていきました。

解禁に乗り出す民泊新法案がいよいよ国会提出 その一方で、ヤミ民泊が横行しているという調査結果も

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厳密には、人を宿泊させ金銭を受け取るという営業は「旅館業法」によって規制されるものの、旅館業法は”レガシー”な旅館・ホテルを対象としたルールであり、民泊に適用するには少々規制が厳しすぎ、したがって、 実際には”適法ではない”民泊が広まっている 、という現状があります。

これによって、近隣住民とのトラブルが発生するなどの事例、恐れが出てきたことや、何のルールもなく無法地帯化することを防ぎ、健全な民泊サービスを普及させること、そして民泊サービスによる宿泊施設不足問題の緩和などの狙いがあり、今回の民泊新法が作られました。

 

日本のインバウンド拡大・観光立国という視点では「民泊」はどのような存在なのか

ここで、一度「日本のインバウンド拡大・観光立国」というマクロな視点で見た時の民泊普及のメリット、デメリットを見てみましょう。

インバウンドにおけるマクロ視点での民泊のメリットその1:宿泊施設不足緩和

近年のインバウンド需要の増加により、東京や大阪などの 都市部での宿泊施設不足が課題 となっています。

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平成29年(2017年)1月20日、みずほ総合研究所が2017~2020年ごろまでのインバウンド市場に関する予測を発表。試算から、大阪で大きな客室不足が発生する可能性があることを明らかにしています。客室不足は需要を取りこぼすことになる宿泊施設はもちろん、訪日外国人観光客の観光ルートにまで影響する可能性もあり、その他の観光関連事業者にとっても、重要な問題。また、民泊の規制緩和が進められている現在としては、ビジネスに乗り出すか否かと考えている方もいるのではないでしょうか。今回は、みずほ総合研究...

2020年の東京オリンピックに向けて、ビジネスホテルなどの宿泊施設の建造ラッシュが始まっているものの、それで足りるのかという確証が無いこと、そして宿泊施設の増設では弾力的な対応が難しいこと、さらには、建造し終わるまでの空白期間があることから、その穴埋めとして、民泊は有効な解決手段だと言えます。

インバウンドにおけるマクロ視点での民泊のメリットその2:コト消費対応

従来の「ゴールデンルートをめぐり、円安と免税を活用してショッピングを楽しむ」というインバウンドモノ消費)から、円高化、リピーター増加、中国政府の関税引き上げなどの要因により、インバウンド市場全体が「コト消費化」しつつあります。

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民家型民泊(オーナーが暮らす家に民泊させる形式)であれ、マンション型民泊(オーナーは住んでいないが所有するマンションの1室に民泊させる形式)であれ、「日本人の一般的な生活」を垣間見ることができる民泊は、日本でしか体験できないことの一つとして、訪日外国人観光客にとって大きな魅力となっています。

インバウンドにおけるマクロ視点での民泊のメリットその3:古民家などの空き屋の活用

特に地方部においては、少子高齢化の影響により、人の住まなくなった古民家の活用方法が課題となっています。前述のコト消費との兼ね合いから、昔ながらの日本人の生活を体験できる古民家の宿泊は、訪日外国人観光客にとっては大きな魅力であり、古民家をインバウンドで活用する動きが盛んとなってきています。

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国土交通省は平成28年(2016年)12月27日、空き家になった古民家や住宅を地域資源と捉え、観光振興などを目的とした用途変更に柔軟に対応する方針を明らかにしました。類似の取り組みは各地で行なわれており、さらに活性化する可能性があります。 訪日客の地方誘致に重要なのは、まず「知ってもらうこと」。効果的な

また、古民家を旅館業法のもと、宿泊施設としてリニューアルするには、それなりのコストがかかるものの、民泊として営業するには、民泊新法による規制が旅館業法よりはゆるいことから、より簡単に活用できます。

インバウンドにおけるマクロ視点での民泊のデメリットその1:近隣住民とのトラブル、生活環境の悪化

インバウンド対策として民泊を普及させるにあたって、最大のデメリットとなるのが、近隣住民とのトラブルに代表される、民泊周辺に住む住民の生活環境の悪化でしょう。民泊新法の狙いも、このデメリットの解消にあると言えます。

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違法業者の横行やホテル、旅館への悪影響、近隣住民とのトラブルといった懸念から、日本では慎重な導入が進められている民泊。本格的な解禁に向け、今年平成29年(2017年)に新たな法案が提出されると見られていますが、それに合わせて観光庁が民泊の苦情や相談を一元的に担う民泊相談窓口を設ける方針であることを日経新聞が報じています。右肩上がりに増加を続ける訪日外国人観光客によって、大都市圏を中心に宿泊施設が供給不足が発生しています。民泊はその解決策として注目されている一方、違法な民泊により物件価値の低...

訪日外国人観光客には、日本人的感覚の常識は通用せず、マンションであれば騒ぐ、ゴミ出しのルールを知らず守れないなどのわかりやすいトラブルがあるほか、「外国人が家の周りをうろつくのが怖い・不快」という感情的な部分での不満の声が上がっているという事実があります。ただ、後者に関して言えば、あくまでも「観光立国」の視点から言えば、民泊に限らず、今後国民全体が足並みを揃えなければならない意識の問題であるとも言えます。

インバウンドにおけるマクロ視点での民泊のデメリットその2:旅館・ホテルなどの宿泊施設への配慮・調整

おおよその場合において、民泊は旅館・ホテルなどの宿泊施設よりも安価に宿泊できることが多く、それによって「せっかくのインバウンド顧客が取られてしまう」という宿泊施設からの声があります。

また、政府や地方自治体から見ても、地方創生のためには地域の企業にインバウンド消費が落ちるようにしなければならず、そういった意味でも、民泊の活用・受け入れには慎重にならざるを得ない、ということがあります。

 

地方自治体は民泊の活用・受け入れに消極的?

さて、それでは民泊新法が制定されたら直ちに適法な民泊が普及するのでしょうか。答えは「NO」と言わざるを得ないかもしれません。

民泊新法による新制度イメージ図:観光庁プレスリリースより

民泊新法による新制度イメージ図:観光庁プレスリリースより

先日民泊新法について解説しましたが、住宅宿泊事業者(民泊する部屋を持つオーナー)は、都道府県知事に届け出を出し、その監督を受けることになります。つまり、民泊オーナーは、各自治体の管轄下に置かれるということになります。また、民泊新法においても、細則については、各都道府県による「上乗せ条例」が可能です。

解禁か?規制か?評価が分かれる民泊新法・改正旅館業法、閣議決定:年間180日まで営業可能に規制緩和の一方違法民泊には罰金100万円

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このことから、たとえ民泊新法で年間日数180日までを許容されていても、「◯◯県では、条例に寄って100日までにします」という条例を制定することが可能になるということになります。

2016年の政府による民泊規制緩和では、35の自治体が政府支持に従わなかった

地方自治体が、民泊に対し消極的条例を定める可能性を示唆する実例として挙げられるのが、昨年の旅館業法の規制緩和です。

政府は2016年4月、民泊において「旅館業法で定めるフロント(玄関帳場)を設置しなくても良い」という規制緩和をしたものの、 全自治体の4割にあたる35自治体が、条例によってフロントの設置を義務付けたままであった ことが毎日新聞の調査で明らかになりました。

さらに毎日新聞は前述の35自治体に対し、「今後フロント設置義務条例を緩和するか?」という意向調査を実施。その回答で 8自治体は「今後も条例改正しない」と回答した とのことです。

というのも、地方自治体としては、先に挙げた民泊のデメリット・メリットを見比べた時に、どうしても デメリットのほうが目立つ のだと思われます。住民の生活環境の維持・そして地域の企業へ消費を落とさねばならぬ立場としては、国に歩調を合わせるのは難しいと判断したのではないでしょうか。

この実例からも、民泊新法が施行されたとしても、 各地方自治体の「上乗せ条例」により、実際は適法な民泊が難しい状況が続く可能性 が出てきています。

 

まとめ:2020年に向けたインバウンド獲得・観光立国のために

政府は民泊新法を閣議決定し、早くて来年2018年1月に施行する見通しとなっています。いよいよ、180日の営業日数規定と共に正式な民泊解禁が迫ってきています。しかしながら、地方自治体は民泊に消極的な姿勢であり、営業日数の規制やフロント(玄関帳簿)設置義務などの「上乗せ条例」を施行する可能性もあります。

2020年の東京オリンピックに向けた、いわゆる「オールジャパン」としてのインバウンド市場の獲得、そして観光立国を果たすためには、国民一人一人、各自治体、政府がまさしく一丸となって意識を揃える必要があることが、今回の民泊新法の議論から見えてきます。

<参考>

 

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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