月給200万円「世界最高の仕事キャンペーン」が大成功!豪クイーンズランド州の観光PR戦略から学ぶ自治体のインバウンド誘致法とは?

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訪日外国人観光客数が年々順調に増えていることから、日本国内の地方自治体はインバウンド誘致を進めており、これまで訪日ラボでもご紹介してきたように様々な取り組みが行われてきました。

このシリーズでは、少し特殊なPR方法で国内外から多くの観光客を獲得した海外の自治体における観光PR戦略 についてご紹介します。第一回目は2009年に行われたオーストラリアのクイーンズランド州における観光PRについて。

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豪クイーンズランド州とは?ブリスベンを州都に持つ豪北東部の都市:近くには世界遺産グレートバリアリーフが

クイーンズランド州とは、オーストラリア連邦北東部の州。オーストラリアで2番目に面積の大きな州で、オーストラリア大陸の4分の1を占め、その総面積は170万平方キロに達します。州都はブリスベンとなっており、聞き覚えのある人もいるかもしれません。

また、海岸線に沿って2000km以上移動したところには、世界遺産である「グレート・バリア・リーフ」が位置しています。

[直面していた課題]近くに世界遺産を持つも州の魅力が伝わらず、観光分野が伸び悩み

一見、世界遺産を観光地として持つ同州にPRなど必要ないのでは?と感じる方も多いかもしれません。しかし、グレートバリアリーフ付近の島々は、比較的観光客から知名度が低く、一般的に旅行者が海でバカンスを楽しむ際、多くの旅行者は、ハワイやモルディブなどを選択する場合が多い という現状がありました。

クイーンズランド州が提供する観光データベースによると、PRキャンペーンが始まる前4年間の年間宿泊客数は、36,296人、38,474人、40,746人、39,953人と増えてはいるものの伸び悩みが見られる状況です。

グレートバリアリーフ付近の島々は、「オーストラリア大陸から日帰りツアーで行く場所」というイメージが定着してしまい、島に実際に宿泊できるという事実は認知されていない状況にあってことがこの理由 だと考えられ、この状況を変えるべくクイーンズランド州政府観光局は、ブリスベンにある広告会社カミンズ・ニトロとタッグを組み、同地域に観光客を呼び込むため、観光PR事業を開始。具体的な内容はどのようなものだったのでしょうか?

クイーンズランド州がとった観光PR施策とは?実際どの程度効果があったのか?

[PR施策]月200万円で島の管理人を募集!Best Job In The World(世界で最高の仕事)キャンペーンの開始

Best Job In The World(世界で最高の仕事)キャンペーン イメージ画像:XCOM Medeiaより

Best Job In The World(世界で最高の仕事)キャンペーン イメージ画像:XCOM Medeiaより

グレートバリアリーフという世界遺産を持つクイーンズランド州は、「Best Job In The World(世界で最高の仕事)」キャンペーン を開始しました。

これは、グレートバリアリーフ付近の島であるハミルトン島の管理人としての働いてくれる人を募集するというもの。専用ウェブサイトや新聞・雑誌の広告、SNS、マスメディアとのコラボを通じてキャンペーンの告知は行われました。

  • 場所:クイーンズランド州・バリアリーフの島々
  • 給与:150,000AUD(日本円で約1,236万円)
  • 仕事内容:プール清掃・魚の餌付け・情報発信
  • 期間:半年
  • 応募資格:18歳以上・英語力必須・アウトドア好きであること

などが募集要項・主な仕事内容として挙げられます。  

同キャンペーンには、珍しい求人であることや給料が高額であるという点から世界中から応募者が殺到。約34,000件のビデオ応募が寄せられました。 最終的に、イギリス人のベン・サウスオールさんが管理人としてのポジションを獲得しました。

管理人として当選したベン・サウスオールは、写真や動画付きのブログを更新し、自身の島での暮らしを日記に綴りながら、世界中にクイーンズランドの観光地としての魅力を発信しました。

[結果]約80億円相当の宣伝効果!BBCなど各国大手メディアに取り上げられリゾート予約件数は140%に!

「Best Job In The World(世界で最高の仕事)」キャンペーンは、世界各国で話題となり、米CNN、TIMES誌、英BBCなどで取り上げられ、大きな話題を呼びました。

ハミルトン島の問い合わせ件数は、前年度180% となり、Wotifというホテル予約サイトでは ハミルトン島のリゾート予約は140% に。AFPによると、このキャンペーンは、比較的低予算(日本円で約1億2,000万円)で行われたにもかかわらず、1億1000万オーストラリアドル(日本円で約80億円)相当の宣伝効果を生み出した としており、数字上でもその成果は表れています。

このように、奇抜な観光PRで、大きな反響を獲得した豪クイーンズランド州。この事例から日本国内の自治体のインバウンド向けPRにおいて必要なこととして何が学べるのでしょうか?

[学び]一般人目線の徹底を!新しい発想でメディアも巻き込もう

一般人目線からの地方の持つ魅力配信は、インバウンドのみならず日本人観光客の誘致としても有効な手段です。以前であれば、有名人などが観光大使として任命されPR活動を行うといった事例が一般的でした。しかし、最近ではマンネリ化している感も否めず、最近では、大学生など一般人目線から地域の魅力を配信する動きが国内では見られる ようになっています。

今回ご紹介した豪クイーンズランド州の事例のように、その地域出身の人からではなく、事前に地域の持つ観光資材を見直し、世間に向けてアピールしたうえで、一般人からPR大使を選定することで、説得力が増します。

また、既存の観光PR手法にとらわれない新たな発想も必要になります。「求人広告」という観点から最終的に観光PRまでつなげた「Best Job In The World(世界で最高の仕事)」キャンペーンのように、違った切り口からアプローチすることにより、テレビや新聞、雑誌などメディアから取り上げられる可能性も上がります。

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まとめ:自治体のインバウンド誘致 海外の事例も参考に

今回は、2009年に行われたオーストラリアのクイーンズランド州における自治体PR「Best Job In The World(世界で最高の仕事)キャンペーン」に関してご紹介しました。

日本と海外では、慣習や文化的バックグラウンドが異なるため、外国人観光客の誘致という観点において必ずしも取るべき施策が一致するとは限りませんが、海外での自治体における観光PR成功事例から学べることも多くあります。

<参照>

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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