2024年、インバウンド観光は完全復活へ。真の観光立国実現に向けて、やるべきことは【連載:オーバーツーリズムを考える 〜真の観光立国への道のり〜 第五回】

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日本政府観光局JNTO)が毎月発表している訪日外客統計によると、日本を訪れる外国人の数は2023年10月にコロナ禍前の2019年を上回る水準に回復。その後も順調に増加しています。このペースが続けば、2024年は2019年を通年で上回る数の観光客が訪れると予想され、観光業のさらなる活況が期待されています。

一方で、コロナ禍前から問題視されていた「オーバーツーリズム」の課題はより一層厳しい状況になる可能性も。すでに課題が顕在化・深刻化している地域も多く、政府や各自治体は対応を迫られています。

2025年には大阪・関西万博を控えており、さらなる観光客の増加が見込まれる日本のインバウンド市場。長期的な視点での対策が求められている今、真の観光立国の実現に向けて、やるべきことは何なのか。連載最終回は、この問題について改めて考えたいと思います。


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【連載:オーバーツーリズムを考える 〜真の観光立国への道のり〜】では、インバウンド業界の喫緊の課題である「オーバーツーリズム」問題の現状と解決策について、国の方針やデータ、事例などさまざまな内容をまとめ、不定期の連載形式でお届けしてきました。今回が最終回となります。

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インバウンドは完全復活へ。最新データを解説

日本政府観光局JNTO)の発表によると、2023年の年間訪日外客数は2,506万6,100人で、2019年比では21.4%減でした。通年では2019年比で約8割という結果でしたが、10月以降は単月では2019年の水準を超える訪日外客数を記録。10月が約251万6000人、11月が244万800人、12月が273万4,000人でした。

コロナ対策の水際措置が段階的に緩和されて以降、訪日外客数は右肩上がりで推移。2023年6月以降は最新のデータが発表されている2024年2月まで9ヶ月連続で200万人を超えています。さらに2024年の訪日外客数は、1月が268万8,100人、2月が278万8,000人で、1月、2月とも単月で過去最高を更新しました。

株式会社JTBが2023年12月に発表した「2024年(1月~12月)の旅行動向見通し」では、2024年の訪日外国人数は過去最高の3,310万人(2019年比103.8%)と推計されています。回復が遅れている中国からの訪日客の動き次第では、JTBの予想を上回る訪日客数となる可能性も。いずれにせよ、2024年のインバウンド市場は2023年以上に活況となることが確実視されています。

一方で、オーバーツーリズムの観点からすると、2024年はコロナ禍前よりも課題が深刻化する可能性が高いと言われています。飲食店や宿泊施設、タクシー事業者などではコロナ禍で離職した従業員も多く、もともと人手不足ぎみの業界である点も重なり、人員の補充や省力化に向けた企業努力が必要となっています。増え続ける観光客にどのように対応していくかが課題です。

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真の観光立国実現に向けてやるべきことは?

オーバーツーリズム対策を考える際に、基本となる考え方が「レジデンスファースト」です。地域住民の生活の質を最優先に考え、観光客の利便性や経済的利益だけでなく、地域の文化、環境、住民の生活を守り、向上させることを目指します。

改めて解説すると、レジデンスファーストでは、「理解の促進」「分散」「抑制」の3つの基本方針があります。

  1. 理解の促進: 観光客へのマナー啓発や地域文化への教育などを通じて、地域住民と観光客、事業者間の相互理解を深めます。
  2. 分散: 観光客を地域全体に分散させることで、特定の場所に集中することによる負荷を軽減。他地域に需要を分散させることで、広域での地域活性化を目指します。
  3. 抑制: 必要に応じて入場料の導入や人数制限などを実施し、人流の制限を実施。過度な観光客の流入を抑え、地域の環境や生活の質を保護します。

これらの方針は、観光が地域にもたらす経済的利益を住民の暮らしや地域の持続可能性に結びつけるためのものです。地域(世間)、事業者(売り手)、旅行者(買い手)の三方よしを目指し、共に観光の持続可能性を高めていくことが、レジデンスファーストの根本的な考え方です

政府もオーバーツーリズム対策については大きな課題としており、観光庁が主体となってオーバーツーリズムに関する関係閣僚会議を定期的に実施。混雑やマナー違反への対応や地方への誘客の推進、そして地域住民と協働した観光振興など3つの方針を示した対策パッケージ案をまとめています。

しかし各地域によって課題や要因が異なることから画一的な対策の実施は難しく、取り組みが進んでいない地域が多いのが現状です。政府としては関係者間の連携を保ち、先進的な事例から方策を学び考えながら、個別具体的な対策の実施と支援を行っていく方針です。

今後、各自治体や事業者は、これらオーバーツーリズムの基本的な方針を踏まえて、各自が観光への向き合い方や戦略を明確化する必要があります。オーバーツーリズムの問題は地域によって様々です。混雑など観光客が殺到することで起きるものもあれば、マナー問題など観光客の数に起因しないものもあります。「自分たちは関係ない」「まだ大丈夫」と思わずに、まずは関係者同士で認識を共有し、具体的な取り組みを考えていくことが大切です。

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オーバーツーリズム対策先進地域の「観光振興計画」を読む

各地で取り組みが進むオーバーツーリズム対策ですが、どの地域も試行錯誤の真っ只中にあり、道半ばであるというのが現状のようです。しかし、なかにはオーバーツーリズムに以前から悩んできた地域では、しっかりとビジョンを持って計画を策定してきた地域もあります。そうした地域の戦略は今後、オーバーツーリズム対策の取り組みを始める地域にとっては参考になるポイントが多数含まれています。

持続可能な観光を追求するヒントとして、オーバーツーリズム対策先進地域の「観光振興計画」を紹介します。

1. 関西観光本部

まずは一般社団法人関西観光本部が策定した「大阪・関西万博に向けた関西観光アクションプラン」。2025年に開催される大阪・関西万博に向けて、「持続可能な観光」「消費額拡大」「地方誘客促進」をキーワードに、(1)持続可能な観光地域づくり戦略(2)インバウンド回復戦略(3)国内交流拡大戦略 の3つの戦略に取り組む方針が記載されています。

コロナ禍後の観光客の拡大を受けて、人材不足が深刻化。観光DXの推進やデジタル人材の育成、高付加価値旅行商品の開発など、官民の連携により取り組みを進める必要があります。また、観光地までの公共交通機関は不十分な場合も多く、その点を理由に来訪機会を逸している地域が少なくないなどの課題があります。

そこで、関西観光アクションプランでは、新たな観光コンテンツの開発やICT技術の活用などにより、旅行需要・移動需要の創出。万博などの大型イベントを起爆剤にして関西地域全体で旅行消費を拡大させ、その賑わいを全国へ広げていく考えを示しています。

具体的には、「テーマとストーリー」「人材」「情報」「交通」の4つの視点で、地域を「つなげる」ことを目指す取り組みを実施。「住んでよし、訪れてよし」の観光地域づくりを目指します。例えば、来場者約2820万人を想定している万博期間中は、関西全体を「パビリオン化」することで万博来訪者の関西周遊を促進。関西の各地いで高付加価値な観光コンテンツの造成やイベントを開催する予定です。

対象となる地域は福井県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、徳島県の10地域を想定。また、移動手段と観光情報等を一元的に提供する「関西MaaS」を活用するなどして、対象地域全域で交通の利便性向上を目指していくとしています。

参考:大阪・関西万博に向けた関西観光アクションプラン

2. 京都市

世界的な観光都市として人気の高い京都では、早い段階から持続可能な観光都市の確立に向けて、様々な対策を実施してきました。

2021年に策定された京都市の「京都観光振興計画2025」では、2025年度までの5年間の観光戦略をまとめると共に、2030年時点の目指す姿を設定。長期的視点で計画を策定しています。

観光振興計画では、京都市が目指す観光のあり方として「市民(地域)、観光客、観光事業者・従事者等がお互いに尊重しあい、三者にとって、より質(満足度)の高い観光」と規定。「住んでよし、訪れてよし、働いてよしのまちづくり」を実現し、将来にわたって京都が発展していく好循環を構築していくことを目指しています。

具体的には次の5つの項目で具体的な取り組みが進んでいます。

  1. 市民生活と観光の調和・豊かさの向上
  2. 京都の「光」の磨き上げ・観光の質の向上
  3. 担い手の活躍
  4. 安心・安全で持続可能な観光の推進
  5. MICEの振興
    ※ MICE(マイス):国際会議や企業の研修旅行などイベントの相性

人気観光地への観光客の過集中や一部観光客のマナー違反を対応すべき「観光課題」として、時期・時間・場所の3軸での分散化やマナー啓発を強化します。さらにデジタルを駆使した受入環境の充実も図ります。

さらに京都市は、公益社団法人京都市観光協会(DMO KYOTO)と共同で「京都観光モラル」を策定。観光客と地域事業者の双方に向けて、持続可能な観光都市を目指すための行動指針が示されています。オーバーツーリズム対策に特化した戦略の先駆けであり、地域内の理解促進策の成功事例の一つです。

参考:

3. 岐阜県

白川郷や下呂温泉などで有名な岐阜県は、外国人からも人気の観光地として毎年多くの観光客が国内外から訪れています。インバウンド需要の拡大により、岐阜県では早い段階からオーバーツーリズムが顕在化。観光地の混雑や交通渋滞、人手不足に悩まされてきました。

観光振興策として岐阜県では2009年に「みんなでつくろう観光王国飛・美濃条例」を制定。官民が連携して、観光・食・モノを一体化させた「岐阜ブランド」を確立し、インバウンドの誘客活動を本格化させました。条例では、交通網など観光に必要な基盤整備の他、「美しい自然を守る観光」として豊かな地域の自然を守り、大切に知る観光のあり方などが明記されています。

その後、マーケティングの一環として、「岐阜ブランド」にサスティナビリティ(持続可能性)の要素を追加。岐阜県が持つ伝統文化や自然を「サステイナブル(持続可能)な観光資源」と定義して、日本のみならず世界へ発信しています。

その結果、「サスティナブルツーリズムのメッカ」として世界的な認知が高まり、「本物のサステイナブルが残る場所」を体験すべく多くの観光客が訪れるようになりました。合わせてオーバーツーリズムの対策も強化し、DXの推進や人材の育成、人流の抑制策などを実施。直面する課題に県と市町村と事業者が一体となって取り組む体制を構築しています。

参考:岐阜県県の観光振興施策

関連記事:「低予算」でも自治体ブランディングに成功したワケ 世界が認めるサステイナブルな観光地・岐阜県の挑戦

関係者同士が連携し、100年先も持続できる観光業へ

ここまで、先進地の観光振興計画について解説しました。改めて各計画をみてみると、関係する人や団体、地域との連携を重視していることがわかります。地域間での連携を強化して拡大する観光需要を分散することで、地域全体や広域で消費の最大化を目指すことができます。

さらに行政や観光事業者だけでなく、地域住民の理解と連携を進めることは、地域の魅力発信力の強化にもつながります。地域全体で受け入れ態勢を強化することで、より付加価値の高い観光体験の提供を進めることができると言えるでしょう。

真の観光立国実現に向けては、地域住民を含めた関係者同士の目線を同じくして、具体的なアクションプランを策定していくことが必要不可欠です。オーバーツーリズム対策の基本である「レジデンスファースト」を土台に、10年先も、50年先も、100年先も持続できる観光業を目指すべく、早急な取り組みが求められます。

4月は、2025年の大阪万博開幕まで1年前を迎えます。これを機に、観光事業者や観光に関わる人全員で、この問題に取り組んでいけるとよいのではないかと考えております。本連載が、少しでもそのヒントになれば幸いです。


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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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