政府のオーバーツーリズム対策案を徹底解説【連載:オーバーツーリズムを考える 〜真の観光立国への道のり〜 第二回】

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観光庁は10月16日、3回目となる「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に関する関係省庁対策会議」を開催。対策が急がれるオーバーツーリズムに対し、具体策を盛り込んだパッケージ案がまとめられました。

オーバーツーリズムとは、観光客の急増により、住民生活や周辺環境に悪影響が及ぶことを指します。インバウンドを含めた観光需要の急拡大に伴い、抜本的な対策・改善策が求められています。

対策にあたっては国と自治体、関連する業界団体、民間も含めた連携が必要であり、今回のパッケージ案を起点に具体的な取り組みが進むことが期待されます。

そこで本記事では、今回発表されたパッケージ案の内容を詳細に取り上げ、オーバーツーリズム対策に関する政府の具体的な方針を解説します。

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【連載:オーバーツーリズムを考える 〜真の観光立国への道のり〜】では、インバウンド業界の喫緊の課題である「オーバーツーリズム」問題の現状と解決策について、国の方針やデータ、事例などさまざまな内容をまとめ、不定期の連載形式でお届けします。今回は、連載第一回で予告した内容から変更してお届けします。

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政府によるオーバーツーリズム対策会議の流れ

9月6日、第1回オーバーツーリズム対策会議が開催され、観光需要の回復・外国人観光客の急増を受けての現状の確認と課題の把握を行いました。9月29日に開催された第2回の対策会議では、、すでに課題が顕在化している地域から関係者を招き、ヒアリングを実施。ヒアリングした内容をもとに具体的な対策を検討しました。

そして10月16日に開かれた第3回の対策会議では、これまでの議論や9月までのインバウンド状況を踏まえ、具体的な対策案の取りまとめを実施。具体的な内容に踏み込んだ「オーバーツーリズム対策パッケージ案」が提示されました。

その内容は、10月18日に開かれた観光立国推進閣僚会議でも議論が行われ、岸田首相は「正面から取り組む必要性を強く感じました」と発言。国として総合的な支援を進める方針を示しました。

オーバーツーリズムの議論が進むなか、9月に入り与党内でのライドシェアに関する規制緩和の議論も活発化。拡大する観光需要に対し、多方面での検討が続いています。

オーバーツーリズム対策パッケージ案の概要

今回発表されたオーバーツーリズム対策パッケージ案は、大きく3つの方針に分けられ、それぞれに細かく具体案が提示されています。

オーバーツーリズム対策の3つの方針

  1. 観光客の集中による過度の混雑やマナー違反への対応
  2. 地方への誘客の推進(11のモデル地域で地域づくりを実現)
  3. 地域住民と協働した観光振興(全国約20地域で実施し先駆モデルを創出)

1. 観光客の集中による過度の混雑やマナー違反への対応

オーバーツーリズムの課題として一番に挙げられる過度な混雑やマナー違反の問題。対策案の中ではさらに4つに分類され、それぞれに具体案が提示されました。

・受け入れ環境の整備と増強

大型手荷物を持ち運ばない「手ぶら観光」や、混雑が予想される交通機関から別の交通機関への乗り換えを推進することなどにより、混雑緩和を狙います。また、輸送力の増強策として、鉄道バス車両の長大化を支援します。

さらに「タクシー不足に対応する緊急措置」としてライドシェアを導入する案も明記。関係者と協議を進めながら具体的な対応が進められる予定です。

また、観光客が集中する地域では、歩道の整備・拡大、無電柱化を進める案も。国立公園などでは入域料の導入なども検討されているとのことで、受け入れ態勢を強化し、混雑の緩和を目指します。

・需要の適切な管理

観光スポットへの急行バスの導入や自由な運賃設定が可能となるよう規制緩和を実施。エリアによっては、エコツーリズム促進法などに基づいた入域制限やガイド同伴を義務化し、需要を適切にコントロールします。登山シーズンの混雑が激しい富士山などについても適正な入山管理が行えるよう議論が進められていく方針です。

・需要の分散 / 平準化

観光スポットの混雑状況をリアルタイムで発信し、混雑状況の見える化を促進。美術館などでは早朝や夜間の体験プログラムを実施し、観光客を分散させることを狙います。こうした取り組みに対し、国は各自治体主体と連携をして必要な支援を行う予定です。

マナー違反行為の防止・抑制

観光客のマナー違反への対応としては、旅マエから旅ナカでの啓発活動を実施。外国人観光客でもわかりやすいよう多言語での周知活動やピクトグラムなどを用いた啓蒙活動を推進していきます。また抑止策として、今年度中に条例に基づく罰則等の整備に関する事例集などを作成するとのことです。

2. 地方部への誘客の推進(高付加価値な観光地づくり)

オーバーツーリズム対策パッケージ案の大枠2つ目は「地方部への誘客の推進」です。

モデル地域において高付加価値な観光地づくりを進めると共に、地方部の4つの国立公園の魅力向上とブランド化の推進などが明記されました。

モデル地域には全国各地の11地域が挙げられており、他事業とも連携しながら総合的な施策を集中的に実施する予定。モデル地域での成果やノウハウは以後、他の地域にも伝播させていくことで日本全域での地域活性化を狙いたい考えです。

地域事例(一部):

・東北海道エリア

地元のDMOを事務局として関連する事業者や自治体と連携。世界遺産である知床を中心に、観光資源を活かした高付加価値なアクティビティの開発や宿泊施設の整備、情報発信を目指します。

・奈良南部・和歌山那智勝浦エリア

紀伊山地の霊場や修験道に根付く文化をテーマに、ツアーの企画や宿泊施設の改修などを進める予定。世界的に人気の高まる熊野古道など外国人に人気の高いコンテンツを活用し、海外からの誘客を狙います。

3. 地域住民と協働した観光振興

オーバーツーリズム対策パッケージ案の大枠3つ目は「地域住民と協働した観光振興」です。

持続可能な観光地域づくりには、自治体自身が地域の実情に応じた具体策を講じる必要があり、政府はそれを包括的に支援していくことが明記されています。国は自治体DMOが地域に働きかける取り組みを推進。包括的な支援を全国20地域で実施し、オーバーツーリズム対策の先駆モデルを創設します。優れた取り組みは横展開して、さらなる発展に繋げる狙いです。

今後の対応は?

国は今年度中を目処に、地域における計画策定や具体的な取組実施の参考となる事例や留意事項をまとめた地域向け指針を作成するとのことです。さらに、観光庁内には各地域における課題解決に関わる相談窓口を設置し、各省庁が連携・協力して地域を支援する体制を整備する予定だとしています。

関係閣僚級会議は今後も継続され、オーバーツーリズムの課題に対して関係者間の連携を保ちながら取り組みを進めていくと見られます。

一方で、地域によってオーバーツーリズムの実情は異なり、画一的な対策の実施は困難です。3. 地域住民と協働した観光振興 の項目でも言及されているように、各自治体が地域の実情に応じた具体策を講じる必要があります。しかし、オーバーツーリズムの具体的な対策はまだ始まったばかりで、一部の地域では先進的な取り組みが進んているものの、国内全体での事例の共有はまだ進んでいないというのが現状です。

そこで本連載では次回以降、地域のオーバーツーリズム対策に活かせる具体的な考え方や事例を取り上げ、すでにオーバーツーリズムが顕在化している地域や、今後オーバーツーリズムが懸念される地域の読者の方々へ向けて、対策に活かせる有益な情報をお届けしていきます。

→ 第3回はこちら


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<参照>

オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ(案)

観光立国推進閣僚会議(令和5年10月18日)

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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