2011年の東日本大震災以降、東北の人気観光地の集客数減少や風評被害の拡大、余震の影響により日本のインバウンド市場は大打撃を受けました。 そんな中、徐々に震災以前のインバウンド市場へと回復していった2012年は、インバウンド市場にとって非常に重要な意味を持つ1年となりました。
この記事では2012年のインバウンド市場データやその推移について、訪日外国人客数、国・地域別の統計、インバウンド消費額の観点からまとめています。
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2012年の訪日外国人は835万人
2012年の訪日外国人客数は835万8,105人で前年比34.6%増という伸びを記録しています。
これは2011年3月に発生した東日本大震災、および地震により引き起こされた原子力発電所の事故の影響で、前年の訪日外国人客が激減したためと見られています。
しかしながら2012年以前の年別統計記録をさかのぼると、2012年の訪日外国人客数は歴代2位となっており、観光庁は2012年の年間統計をまとめ「震災等の影響からほぼ回復」したと報告しています。
2011年の訪日外国人データ
2019年・2020年にはラグビーワールドカップや東京オリンピックなど大きな国際イベントが予定されており、訪日外国人の数も年々増加しています。しかし、過去を振り返ってみると前年と比較して訪日外国人数が大幅に減少した年があります。それは、東日本大震災が起こった翌年の2011年です。世界中に衝撃を与えた東日本大震災と原発事故が、どのように日本のインバウンド市場に影響を及ぼしたのか、また、その影響は今も続いているのかどうかをデータから検証してみましょう。2011年の訪日外国人は621万人/震災の...
国・地域別では台湾が中国を僅差で抜き2位に
2012年
1位 | 韓国(204万人) |
2位 | 台湾(146万人) |
3位 | 中国(142万人) |
4位 | アメリカ(71万人) |
5位 | 香港(48万人) |
▲[2012年の国・地域別訪日外国人数ランキング]:JNTOより引用
2011年
1位 | 韓国(165万人) |
2位 | 中国(104万人) |
3位 | 台湾(99万人) |
4位 | アメリカ(56万人) |
5位 | 香港(36万人) |
▲[2011年の国・地域別訪日外国人数ランキング]:JNTOより引用
2012年の訪日外国人客数の国・地域別ランキングをみると、1位が韓国であることには変わりありませんが、前年3位の台湾が前年2位の中国を僅差で抜き順位を上げる結果となっています。
また、中国、台湾、タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナム、インドなど多くの国で過去最高の訪日外国人客数を記録しており、要因としては格安航空会社の新規就航、ビザ発給要件の緩和などが考えられます。
また、訪日外国人客の増加に伴い、日本を訪れた外国人客がSNSや口コミを通じて広告塔のような存在となり、その投稿や話が家族や友人の日本を訪れるきっかけにつながっています。
一方で中国やシンガポールのように訪日客数が減少している国や地域もあり、中国においては団体客を中心とした訪日旅行需要の減少、シンガポールにおいては放射能についての風評被害拡大などが影響を及ぼしています。
2012年~2018年の推移
それでは、2012年から現在までの推移を見てみましょう。
2018年の段階では1年間で3,119万人もの外国人客が日本を訪れており、2012年と比較すると約3.7倍となっています。
この間にも2016年4月の熊本地震、2018年9月の北海道胆振東部地震などの大規模震災は発生していますが、東日本大震災の時ほど訪日外国人客数に影響を及ぼすことはありませんでした。
日本は世界的にも地震の多い国として認知されていることもあり訪日外国人の間では地震の心配をする人もいますが、2019年現在においても多くの外国人客が日本を訪れており、震災や原発事故によるインバウンド市場への影響はかなり薄れてきたといえます。
【国別】2019年訪日外国人観光客数の予測|効果的なインバウンド対応のポイントとは?
日本政府観光局(
2012年のインバウンド消費は1兆861億円
続いてはインバウンド消費額の点から2012年のインバウンド事情について解説していきます。
2012年のインバウンド市場全体の消費額は1兆861億円で前年比33.5%の増加を示しています。大きく増加したように見えますが消費額についても震災の影響は色濃く表れており、2010年比では5.5%の減少という結果になっています。
また、訪日外国人1人あたりの消費額としてみると111,983円となり、前年比で1.7%減となります。
2012年のインバウンド消費データ(訪日外国人消費動向)
2012年のインバウンド市場全体の消費額は前年比+53.06%となる1兆846億円で、昨年の東日本大震災によるインバウンド消費の冷え込みからV字回復を見せる格好となりました。ここ数年、歴史的な円高が続いていましたが、2012年末ごろから円安基調にシフト。これが追い風となって、訪日外国人一人あたり消費額は前年比+13.88%の129,763円に上昇しました。
2012年~2018年の推移は?
2018年のインバウンド消費額は4兆5,189億円でした。インバウンド消費額について2012年から2018年では約4倍の増加をみせており、1人あたりの消費額も増加しています。
インバウンド消費が過去最高記録!観光庁「訪日外国人消費動向調査」からわかるトレンドについて解説
2018年のインバウンド消費額は、過去最高を記録しました。しかしながら、以前に比べ消費額には伸び悩みが見られました。今回は、観光庁より発表された国・地域別総消費額や一人当たり消費額のデータから、訪日外国人の消費傾向を分析します。その上で、今までのアジア圏を主なターゲットとした誘致に対し、さらなるインバウンド消費増大を目指すための新たな指針を紐解いていきます。また、この記事では「モノ消費」から「コト消費」という訪日外国人の消費トレンドの変化について近年のデータを参考に検証し、今後の消費傾向を...
2012年の四半期別インバウンド消費データ(訪日外国人消費動向)を見る
インバウンド消費データを四半期別で表したものが以下になります。
年末年始やお盆に海外旅行に行く日本人が多いように、訪日外国人客数の増減も時期によって異なります。日本を訪れる外国人の母数が増減することで、インバウンド消費にも少なからず影響を及ぼします。
- 1/4半期(1月・2月・3月)のインバウンド消費データ(訪日外国人消費動向)
- 1/4半期(4月・5月・6月)のインバウンド消費データ(訪日外国人消費動向)
- 1/4半期(7月・8月・9月)のインバウンド消費データ(訪日外国人消費動向)
- 1/4半期(10月・11月・12月)のインバウンド消費データ(訪日外国人消費動向)
他の年のインバウンド消費データ(訪日外国人消費動向)を見る
インバウンド消費に関する大まかな推移としては先述の通りですが、以下では年ごとの詳細なインバウンド消費データを確認することができます。
長いスパンで見て消費データの推移をとらえるマクロ的な視点と、年ごとの消費データの特徴をとらえるミクロ的な視点を併せ持つことで、インバウンド消費を取り巻くさまざまな相関関係について理解することができるでしょう。
- 2011年のインバウンド消費データ
- 2013年のインバウンド消費データ
- 2014年のインバウンド消費データ
- 2015年のインバウンド消費データ
- 2016年のインバウンド消費データ
- 2017年のインバウンド消費データ
- 2018年のインバウンド消費データ
2012年のインバウンド関連出来事は?
世界的なニュースや諸外国との対外関係は、インバウンド事情に大きな影響を与えます。以下では、2012年のインバウンド市場に影響を与えた主要な出来事と、その影響によるインバウンド事情の変化について紹介します。
東京スカイツリー開業
2012年5月22日には高さ634mを誇る東京スカイツリーが開業しました。
タワーとしては世界1位の高さ、人工建造物としてはドバイのブルジュ・ハリファ(828m)についで世界2位の高さを誇るスカイツリーの開業は海外でも話題になりました。
訪日外国人客の利用も多い羽田・成田両空港からのアクセスの良さや、スカイツリー目下に設けられた商業施設「東京ソラマチ」の存在は、多くの訪日外国人客がスカイツリーを訪れる一因となっています。
また、スカイツリーではインバウンド対策として訪日外国人向け入場券「Fast Skytree Ticket」を用意しており、少し割高になるもののチケット購入列に並ばずに購入が可能なシステムで人気を集めています。
尖閣諸島の国有化/中国との関係悪化
2012年に起きた対外関係における大きなニュースとして尖閣諸島の国有化がありました。
それまで私有地であった尖閣諸島の3島が、2012年の9月11日付で日本政府の購入によって国有化されました。それにより、1970年代より尖閣諸島についての領有権を主張している台湾、中国の両国では反日感情が高まりました。
訪日外国人客数のうち両国からの旅行客が占める割合は高く、両国との関係悪化は2012年のインバウンド市場に影響を与えたと考えられています。
2012年は震災の影響薄れ回復傾向にあった
2011年の震災発生以降、それまで右肩上がりであったインバウンド市場が下火となりましたが、2012年のデータではその影響も薄れてきておりその後のさらなるインバウンド市場拡大への期待を見せています。
2012年は震災によるインバウンド市場の伸び悩みに直面した日本が、地震や原発の風評被害縮小や訪日外国人誘致のためのさまざまな施策を図ることによってインバウンド市場が好転した転換期ともいえるでしょう。
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今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。
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