日韓関係の悪化に伴い、韓国では8月14日からの上映が決定していた映画作品、劇場版「ドラえもん のび太の月面探査記」の公開が事実上の無期限延期を決定されています。
関係者によると、韓国での日本製品の不買運動や訪日旅行のキャンセルなど高まる反日感情のなかで、日本映画を公開するのは適切でないという判断を下したというもので、社会の空気や国民の感情を考慮したことが説明されています。
韓国においてドラえもんはどのような立ち位置にあるのでしょうか?韓国での日本のコンテンツの受容のいきさつと、SNS上の口コミを紹介します。(訳は全て訪日ラボ編集部によるもの)
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ボイコットジャパンで映画「ドラえもん」上映、無期限延期
劇場版「ドラえもん」の公開は、事実上、無期限の延期となってしまいました。
こうした現象からも、日韓関係が冷え込んでいることがはっきりと読み取れます。
実際に「ボイコットジャパン運動」として日本製品の不買運動や、訪日旅行のキャンセルが目立っています。
訪日旅行のキャンセルが相次いでいる影響で、韓国LCC株価は6月末から7月上旬までに軒並み下落しており、チェジュ航空15.5%、ジンエアー17.5%、ティーウェイ航空8.9%と大きな痛手を受けています。
また、8月22日には韓国政府が日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄すると発表しました。
韓国政府は、今回の日韓悪化の発火点ともなっている輸出規制強化措置を日本政府が撤回すればGOSMIA破棄についても見直すとしていましたが、日本政府は「全く別問題」として今まで通りの方針を示しています。
JNTOが発表した資料によると、8月の訪日韓国人客の数は前年同月比48.0%減と、大幅に減少しました。
長期化する冷え込みに、反日感情を抱いている人以外にも、この時期の訪日が不安で行き先を変更する人も増えるといった悪循環が起こっているようです。
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市民の声は意外にも冷静
しかし、反日的な意見や行動が目立つ一方で、全員がそうではないということを伝えてくれる韓国人もいます。
8月の頭には、日韓関係の冷え込みを受けて日本人がTwitter上で「#好きです_韓国」のハッシュタグをつくり、国民の声を届けようと企画しました。
これに応えるように韓国人が「#好きです_日本」のハッシュタグをつけて、日本旅行に行った際の日本人の優しさなどをツイートしました。
この動きは韓国のニュースでも取り上げられています。日韓の間の悪感情は外交上に限られたもので、国民全員が反日や反韓であるわけではない、ということが伝わる機会となったようです。
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コンテンツは日韓関係の悪化を食い止めることができるのか
一方でTwitterでは、ドラえもん好きな韓国人の利用者からの意見が多く見られました。
あるユーザーはドラえもんのアイスクリームケーキ、本と塗り絵を友達から貰ったことについて「とても嬉しかった」とツイートしており、またあるユーザーは「ドラえもんはとってもかわいい」と写真とともにツイートしています。
ほかにも「#皆さん小さい頃オタクのとき何を観ていましたか」という韓国語のハッシュタグでは、あるユーザーが「自分は4歳の頃からドラえもんを観ていた」とツイートしているなど、韓国人にとってもドラえもんは身近な存在であることがいくつものツイートからわかります。
80~90年代には「トンチャモン」の名前で海賊版が流行
80年代は歴史的背景から、日本文化の流入規制がかけられていましたが、こうした規制をかいくぐり海賊版の作品が韓国には存在していました。
作品や登場人物の名称は、ドラえもんではなく「トンチャモン(동짜몽)」と変更されています。
「トンチャモン」は丸くて背が低いという意味の言葉「トングルチャリモンタン(동글짜리몽땅)」の略です。
ドラえもんが正式に韓国の雑誌で連載を開始したのは1994年12月で、今でもコミック本が販売されています。
2001年からテレビアニメが放送され、2015年には初の3D映画「STAND BY MEドラえもん」も上映されました。
この作品は公開1か月で累計観客動員数は40万人を記録しています。韓国の市場規模からすると非常にインパクトのある数字と言えるでしょう。
「日本隠し」が招く韓国人の勘違い…反日感情の引き金にも
「日本隠し」とは、元のアニメの中にある日本の要素を韓国に書き換えることで一切の日本要素をなくすことを指します。
例えば、現在韓国で販売されているドラえもんの漫画には、作者である藤子不二雄の名前があるものの、トンチャモンでは韓国語への翻訳者の名前があるのみでした。
また、同じく韓国で人気の「名探偵コナン」の映画の中でも、新聞記事が韓国語に変わっていたり、お札がばら撒かれているシーンではすべてのお札が韓国のお札に変わっており、韓国人がみて自国のアニメと認識するような調整が施されています。
こうした「日本隠し」は、アニメ作品の原作は韓国で作られたものだという誤解も招いています。
実際に、韓国の女優が「日本に来るまでドラえもんは韓国のアニメだと思っていた」と発言したことがあり、一時話題になりました。
「日本隠し」はまた、自国の文化と思っていたものを日本が真似した、という誤解にもつながり、こうした誤解に基づき反日感情を引き起こする一因になっているとも言われています。
日韓関係に左右されないコンテンツ作り
キャラクターは日本のアニメ産業やサブカルチャーにおいて重要な役割を果たしており、インバウンドにも欠かせない要素です。
製品や映画公開など、産業として日本のアニメが遠慮されている傾向はあるものの、キャラクター自体を嫌いになる人は少ないと考えられ、実際Twitterでもキャラクターそのものを日本政府への悪感情と結びつけて評価するユーザーはほとんど見られません。
今後の日韓関係は、こうしたソフトパワーの一つである「コンテンツ」を推進力に、少しずつ関係を取り戻していくことも可能ではないでしょうか。
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