中国人民元とは | レートや紙幣の種類・政府の介入する管理変動相場制・人民元安・キャッシュレス決済についても解説

公開日:2019年11月22日

インバウンド市場における中国の存在感の増大が伝えられて早数年が経ちます。中国の人口は14億に迫り世界一位で、全国的にみれば農村部や内陸部などまだ発展の余地がある状況ですが、世界への経済的、政治的影響力は非常に大きくなっています。

中国の通貨である人民元の世界における存在感も増しています。今年秋には、中国の中央銀行である中国人民銀行がデジタル通貨である「デジタル人民元」の発行に向けて準備を進めていることが伝えられました。このデジタル人民元が実現すれば、現在話題になっている米中貿易戦争にも小さくないインパクトをもたらすと考えられています。

この記事では、中国の人民元やその歴史について触れ、訪日客数トップである中国のインバウンド状況や、今後訪日中国人を誘致する上でポイントとなる内容について解説します。


中華人民共和国の通貨「人民幣」

中国の通貨単位は「元」です。他国の通貨と比較するような文脈では「人民幣」の呼称を利用します。どちらも金銭を数える際に使える表現です。中国の中央銀行である中国人民銀行で発行されています。

ここでは、人民元の基本的な情報や歴史について紹介し、最近の人民元安についても解説します。 

基本情報

まずは人民元の基本情報を見ていきましょう。

  • 中国で使用されている通貨の基本単位は「元」(人民幣/RMB/レンミンビー)
  • 1元=約15.45円(2019年11月22日時点)
  • 流通している紙幣…5角、1元、5元、10元、20元、50元、100元。硬貨は1元とそれ以下のものがあります。
  • 外国為替では管理変動相場制が採用されています。 

地域貨幣に代わる管理通貨として創設された

人民元は、中国建国の少し前である1948年に、複数あった地域貨幣の代わりに管理通貨として発行されました。当時の中国は社会主義を目指しており、外国取引は限定的で、外貨取引は政府の管理下にありました。

時代の流れとともに、自国の通貨を市場の需給に合わせてレートを決定する変動相場制度への移行を迫られ、現在は管理変動相場制が採用されています。

それでも中央銀行である中国人民銀行が中国元のレートを強く管理し、値動きが決定されるなど、レートの揺れ幅はいまだ限定的であるといえます。 

ドル高・人民元安

2000年代より輸出主導で成長を遂げてきた中国ですが、ここ最近は経済成長が減速傾向にあり、先行きも不透明な状況です。

中国政府は、公共事業などに投資することで国内企業を強化し、高成長を遂げてきました。しかし近年は、公共事業にも不採算案件が増え、かつての「世界の工場」としての地位も低下してきています。

香港での反政府デモや中国内の民族問題など、中国共産党への不満や批判は小さくありません。今後の中国共産党の取り組みがこうした通貨の国際競争力を左右することになるでしょう。 

訪日中国人の特徴

人民元について見てきましたが、ここからは日本との関係についてインバウンド市場に注目して見ていきます。

近年は訪日外国人旅客数が増加は著しく、中国はその中でも圧倒的な訪日旅客数を記録しています。そんな訪日客数市場第一位の中国人について、インバウンドデータ、旅行者の特徴、そして最近話題の「神薬」について紹介します。 

1. インバウンドデータ

日本政府観光局(JNTO)によると、2018年の訪日中国人数は838万34人で、前年比13.9%の伸び率となりました。

消費総額は1兆5,450億円(確報値)で、一人平均で約22万5,000円となります。この数字は全国籍・地域と比べても、特に買い物が占める金額が他国と比べて格段高いといえます。

その背景には中国人の国民性が関係しており、日本土産を購入し現地で配るという行為がメンツを保つために有効であるといった考え方が関係しています。 

2. 中国人は何のために日本に来るか

昨年一年を見てみると、中国人はリピーター46.09%、初めて日本に来る人の割合が53.91%と、初めての方が若干多くなっています。

また、家族や親戚など団体で来日する人たちが多いという特徴があります。来日目的は仕事よりも観光やレジャー目的が多くなっています。

日本のドラッグストアやコンビニエンスストア、空港の免税店、百貨店、デパートなどで中国人が買い物をしている光景を見ることも多いでしょう。

中国人には日本製品が好きという人も多く、例えば爆買いという言葉が流行した2015年頃は家電などの高価で大型なものがたくさん買われていました。現在は化粧品や菓子類、医薬品などの比較的安価で小さいものが人気となっています。

データでわかる訪日中国人

爆買いという流行も後押しし、2015年の中国人訪日外客数は前年の約2倍となる499万人となりました。また、2015年の訪日中国人によるインバウンド消費額は約23万円で前年比10%増程度ですが、訪日外客数増加の後押しをうけ、訪日中国人全体のインバウンド消費額はなんと5,583億円。

3. 「神薬」とは?

爆買い」ブームが去ったと言われる今でも、医薬品の人気は衰えていません。数多くある医薬品の中でも、特に神薬と呼ばれる中国人に人気の複数の医薬品があります。

神薬が注目を集めた理由は、2014年に中国の大手ポータルサイトに掲載された「日本に行ったら買わねばならない12の医薬品」という記事です。熱さまシートや龍角散など、日本でも知名度の高いものばかりが12種類「神薬」として紹介されています。

12種類のうち5種類は小林製薬の製品で、わかりやすいイラストの付いたパッケージが中国人にヒットした理由のひとつだと言われています。今後も神薬は訪日中国人市場で注目すべき商品でしょう。

訪日中国人に情報を届けたり商品を購入してもらうには?今注目されているトピックは?

インバンド市場における売り上げ拡大や集客を考えるとき、市場で圧倒的多数である中国をターゲットにすることも当然検討するでしょう。

中国の消費者にリーチする際に気を付けるべきことは、多くの場面で政府の介入が起こり得るという点です。インターネット利用においてもアクセス制限があり、また現金の持ち出しについても厳しく制限されています。

インターネットサービスへのアクセス制限、オンラインコンテンツには検閲も

中国人へ訪日旅行を訴求することを考えた場合、もちろん旅マエの情報提供が重要になります。

旅マエとは旅行前に訪問先の観光スポットや宿情報を検索するフェーズを意味し、この段階の旅行者が接する情報は、旅先での行動に影響を与えると考えられます。

中国人に対しインターネットを通じた情報発信をする場合には、中国のインターネット環境を念頭においた施策を取ることが重要です。中国では政府による特定のネットサービスへのアクセス制限

敷かれており、通常の回線ではGoogleやFacebook、Twitterなどにはアクセスできません。そのため、こうしたサービスの中国国内における市場シェアは数パーセント程度となっています。

中国国内でアクセス可能なインターネットサービスは中国国産のものである場合が多いですが、こうしたサービスに自社のコンテンツを展開する場合でも、その表現や取り扱う内容には注意が必要です。中国政府にとって不都合な内容は閲覧できないばかりか、アカウントの停止処分もあり得ます。

例えば中国向けのウェブサイトを立ち上げる場合には、こうした点を考慮する必要があります。

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キャッシュレス決済

増税を契機に、日本でもキャッシュレス決済の利用促進を促すムードが漂っていますが、インバウンド政策としてもキャッシュレス決済の導入は効果的です。

現在中国では、現金よりもAlipayWeChatPayなどのスマートフォンを利用したQR決済を好む人も多くなっています。利便性の高さがユーザーに評価されています。

海外旅行の際には、現金を取り出さずに済む利便性の高さに加えて、両替の手間なく現地の消費を済ませられることもメリットと言えるでしょう。

実際に日本の観光地では、現金不要のキャッシュレス決済をインバウンドの受け入れ強化のために導入するところが増えてきています。中国人にとってキャッシュレス決済のできるということは、その観光スポットを評価する理由にもなります。

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「聖地巡礼」のために日本に来る中国人も

中国人が訪れたい日本のスポットとして注目したいのが、アニメなどで登場する聖地です。ロケ地を巡る「聖地巡礼」が、インバウンド誘致のさらなる起爆剤になることが期待できます。

例えば、映画「君の名は」で有名になった飛騨市では、観光客数が前年対比で28倍に増加しました。また「千と千尋の神隠し」の中の世界に入り込んだような雰囲気を味わえる、台湾の九份も日本人観光客が訪れたい観光スポットとなっています。

中国では2019年になり初めて「千と千尋の神隠し」が上映され、公開後1週間で3億枚のチケットが売り上げられるなどの絶大な人気があったため、映画のモデルとなった愛媛県の道後温泉などに中国人訪日旅客が今後押し寄せる可能性があります。

日本アニメや映画の舞台となる場所、また現地の有名人などが撮影スポットとして利用した場所などに、中国人が聖地巡礼として訪れることが予測されます。 

中国人の通貨事情に注意を

インバウンドの中国市場は、人数でも一番ですが消費総額でも市場一位で、特に「買い物」での消費額が大きくなっています。

自国通貨である中国元のレートには中国政府による介入が影響していると言われており、現金の持ち出しも厳しく制限されています。こうした動向は、訪日旅行における消費行動にも少なからず影響を与えていると考えられます。

デジタル人民元が登場すれば、今後の米中関係や世界における中国の立場にも変化が生まれると考えられます。こうした要因も、訪日中国人の動向を左右するでしょう。人民元にまつわるニュースには引き続き注意を払っていく必要があると言えそうです。

<参照>

https://www.mlit.go.jp/common/001283138.pdf

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客のインバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!