オーバーツーリズムとは?|問題点・対策・取り組み事例を紹介

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昨年まで日本の観光業界では訪日外国人観光客の急増により、「オーバーツーリズム」が顕著な問題となっていました。

現在では、新型コロナウイルス流行の影響で訪日外国人観光客がほぼ消失しているものの、Fun Japan Communicationsの台湾や香港、タイなどアジア各国に対する調査では、90%以上の人が「訪日したい」と回答しました。渡航が制限されているなかでも、外国人の訪日意欲は依然として高いことがうかがえます。

また、新型コロナウイルスの影響による外出制限の反動で購買や旅行意欲が高まるという「リベンジ消費」の現象が、すでに中国で発生しています。

そのため、収束後に訪日外国人観光客が日本に殺到し、オーバーツーリズム問題が再び浮上する可能性もあります。

この記事では、オーバーツーリズムがもたらす課題、または国内外の事例や取り組みについて整理します。

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オーバーツーリズムの基本知識

観光地に受け入れ能力を超える観光客が集中することで、観光地では混雑や渋滞、ゴミ問題などさまざまな問題に直面しています。訪日外国人観光客が増えることでその分経済が潤いますが、観光地の地域住民の生活への弊害などに目を向けていきます。

オーバーツーリズムとは?

オーバーツーリズムとは、インバウンド用語で、観光客の人数が観光地の受け入れ可能人数を大きく上回ってしまう状態を指します。

観光地にとって訪日外国人観光客は、積極的に取り込みたい集客対象に他なりませんが、同時に交通渋滞や騒音、ゴミのポイ捨てやトイレ不足など、さまざまな「観光公害」の引き金となりかねません。また、観光地の近隣住民にとっては、それらを原因とした観光客とのトラブルも問題視されています。

オーバーツーリズムとは

オーバーツーリズムとは、多数の観光客が観光地を訪れることにより発生する諸問題の総称で、観光公害とも呼ばれます。


オーバーツーリズムの要因

オーバーツーリズムの要因として、近年の観光業会を取り巻く一連の変化が大きく影響しています。

具体的には、LCCをはじめとした国際航空運賃の低価格化や、近年注目されているクルーズ市場の拡大、加えてAirbnb(エアビーアンドビー)などに代表される民泊などの低価格宿泊施設の増加などが挙げられます。また、インフルエンサーがSNS上で観光地の情報を発信することでも注目が集まり、オーバーツーリズムへ拍車をかけています。

オーバーツーリズムの諸問題

オーバーツーリズムが及ぼすマイナスの影響として、まず最初に挙げられるのが「環境汚染」です。ゴミを片付けなかったり、そのままポイ捨てするなどにより、環境汚染問題が深刻化しています。

捨てる物によっては植物や生態系に影響がある恐れもあり、その観光地の本来の美しさが損なわれる原因となりかねません。

また「治安の悪化」も大きな問題となっており、観光客増加につれ、地域住民との間に生まれる折衝も増加してしまうことは想像に難くないでしょう。

文化的に受け入れ難い行為や、他人に迷惑かける行為などが頻発すると、地域住民の快適な暮らしが脅かされるうえ、旅行者同士のトラブルにもなりかねません。

さらに、ギャンブルや麻薬の密売など訪日外国人観光客を目的とした悪徳商法が増加する可能性があり、治安の悪化が懸念されます。

加えて「交通渋滞も深刻化」しています。訪日外国人観光客にとっては、バスや電車などの公共交通機関が主な移動手段であるため、ハイシーズンには公共交通機関は観光客で溢れ、バスに乗れないほど混雑するなど公共交通機関が機能しなくなってしまうことが深刻な問題となっています。

利便性が下がることは、地域住民だけでなく観光客にとってもマイナスであり、満足度の低下によるリピーター離れなどが懸念されています。

さらに、「文化の変容」も問題の一つです。

ポイ捨てやトラブル、治安の悪化など観光客の不品行が続くと、住民の感情が悪化し本来の伝統や風習が失われてしまう可能性があります。

また、人手不足により日本人ならではのおもてなしの精神やホスピタリティが低下してしまう恐れは否定できません。

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オーバーツーリズムの国内外事例

2021年にオリンピックを控える日本が、今後の訪日需要回復に伴い懸念されるオーバーツーリズムに対処するためには、先例に学ぶことが必要不可欠です。オーバーツーリズムの国内外事例として、イタリアのベネチア、スペインのバルセロナの事例、および京都の現状について紹介します。

イタリア・ベネチア

「水の都」として名高いベネチアでは、長年オーバーツーリズム問題が課題となっています。

観光客が増加すると共に、大量の排水による水路の汚染や、観光客を乗せた大きなクルーズ船により景観を損なうなどの影響を及ぼしています。

また、家賃の値上げや賃貸アパートの宿泊施設への転用などが相次ぎ、地域住民の退去が増加、住民が減少するという事態に発展しています。

そこで市は、観光客数を規制するために入場料を導入するなどの策を実施しました。

さらに、復活祭やカーニバルなどの大きなイベント時には、観光を避けるよう呼びかけるなど、人気観光スポットに向かう観光客の数をコントロールする取り組みが行われています。

スペイン・バルセロナ

スペインのバルセロナでも同じくオーバーツーリズムが起こっています。年間3,200万人もの観光客が訪れており、160万人の人口に対して人口の20倍もの観光客が押し寄せています。

それほどの人が集中しているので、交通渋滞や騒音問題、また民泊の浸透により一般市民の住居の高騰化も問題になっています。

これを受けてバルセロナでは、一部区内で観光客向けの新しい商業施設や宿泊施設の開設が禁止されました。

京都

京都は、日本で最もオーバーツーリズムに悩まされている地域と言っても過言ではないでしょう。

重要文化財や京都嵐山の竹林といった重要観光資源への落書きをはじめ、食べ歩きによるゴミのポイ捨てなど、マナーを守れていない観光客が増加しています。

日本では排出者責任という観点からゴミ箱が設置されていない場所も多く、このことが逆に訪日外国人をはじめとした観光客によるポイ捨てを招いてしまっています。

また、バスの利用者が増加し定員を大きく上回るなど、先述した公共交通機関へ悪影響を及ぼしています。

身体の不自由な方や通勤に利用する地域住民がバスに乗れなくなるなど、交通渋滞は特に深刻な問題となっています。

オーバーツーリズムに向けた取り組み

実際の観光客数が、観光地の受け入れ可能人数を大きく上回ってしまうことによって生じるオーバーツーリズムは、しっかりと対策を講じることで緩和することは可能です。

民間業者とも積極的に協力しながら、改善に向けて動いている取り組みを紹介します。

京都での取り組み

特にオーバーツーリズムの問題が深刻な地域のひとつである京都では、観光客分散化を目的とし「時間・季節・場所」の3つの分散を掲げて取り組んでいます。

まず「時間の分散」では、寺社と協力して開館時間を早めたり、朝限定のイベントを開催するなど「朝観光」を推進しており、「季節の分散」では夏の時期の「青もみじ」をPRすることで、定番の春の花見や、秋の紅葉の時期に観光客の極端な集中を防いでいます。

さらに「場所の分散」として、これまで比較的観光客の混雑が少なかった市中心以外のエリアのプロモーションに注力しました。

2018年3月、OTA大手のエクスペディアと連携し海外向けに発信したほか、2018年11月には京都の隠れた名所を発掘し活用する「とっておきの京都~定番のその先へ~」プロジェクトを立ち上げ、同年12月31日まで期間限定で公式ウェブサイトを設立しました。

このように、観光客の「分散」に焦点を当ることで、観光客を減らすことなく観光地が本来保有する収容能力の範囲内で受け入れることができます。また分散させることにより、新たな地域の魅力が発見され、新しいビジネスが生まれる可能性も高まり、期待度の高い取り組みだといえるでしょう。

手ぶら観光の推進

関西観光本部では、オーバーツーリズム問題の改善に向けた取り組みとして「手ぶら観光」を推進しています。

具体的な施策としては、旅行中の荷物を、宅配便を使って宿泊施設や空港へ運ぶことができ、観光客自身で荷物を持ち歩かないで済むため、利用者に好評となっています。

さらに関西観光本部は訪日客に向け、宅配便の利用方法や、全国主要都市・観光地までの料金表などが記載された「手ぶら観光」ガイドブックを配布しています。

ヤマト運輸や日本郵便と連携し作成されたこのガイドブックは関西周辺地域の宿泊施設やお土産屋、観光地などに設置されており、英語、中国語、フランス語、日本語で表記されています。 観光客の利便性を向上させるのと同時に、オーバーツーリズムの改善にもつながると期待されています。

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コロナ収束後のオーバーツーリズムへ備えを

オーバーツーリズムは観光地の環境に汚染や交通渋滞など様々な悪影響を及ぼし、国内外で入場料の導入やシーズンの分散化など観光客の過集中を解消させる取り組みを行われています。

今後新型コロナウイルス収束に伴い入国規制が緩和されれば、日本では外国人観光客の回復も見込まれます。

さらに、2021年に東京オリンピックも控えているため、今のうちからオーバーツーリズムによる課題を洗い出し、対策を早めに講じることが求められているでしょう。

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京都・鎌倉・箱根といった日本を代表する人気観光地では、バス・電車などの公共交通機関が訪日外国人観光客で混雑を極め、乗り場に大行列ができている風景が日常茶飯事となっています。これらの交通手段は市民も利用するため、通勤や通学に影響が出るなど地元住民の生活の弊害となっています。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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