日本政府観光局(JNTO)は、2021年8月の訪日外客数推計値を発表しました。訪日外客数は25,900人で前年同月比199.1%増となりました。
入国者数は東京五輪開催前の6月と比較してほぼ2倍となりました。東京パラリンピックの開催に加え、入国者数の上限が8月16日から緩和されたことも原因だと考えられます。
本記事では、2021年8月の訪日外客数について、各市場のデータと動向をふまえて解説します。
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8月の訪日外客数は25,900人
2021年8月の訪日外客数は25,900人となり、前年同月比199.1%増加しました。
8月16日から開始された1日あたりの入国者数上限緩和や、8月24日から開催される東京パラリンピックの影響に伴い、東京五輪開催前6月の水準のほぼ2倍程度となりました。
ただし、東京五輪が開会した7月の水準からは3万人ほど減少し、東京五輪の影響が大きかったことがうかがえます。
9月以降については、緊急事態宣言が都市部で解除されていないものの、行動制限緩和に向けた動きがでてきており、これから増加するかどうかが見られていると考えられます。
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東アジア
2021年8月の東アジア各国の訪日客は、韓国が1,600人、中国が2,400人、台湾が400人、香港が100人となりました。
国際的な人の往来再開に向けた段階的措置として、2020年10月8日からレジデンストラックおよびビジネストラックが運用されていたものの、2021年1月14日から運用が停止されている状態が続いています。
韓国
韓国では、海外旅行の中止や延期を国民に要請する韓国政府による特別旅行注意報が、昨年3月に発出されてから再度延長を繰り返しています。現在は2021年10月13日まで再度延長されている状態です。なお、ワクチン接種の進展に伴い接種者への規制が緩和される措置が一時期とられていましたが、9月1日以降日本が変異株流行国に認定されたことから免除対象外となっています。
韓国病気管理庁によると、韓国国内の接種完了率は9月20日現在43.2%で、1回目の接種完了率は71.1%となっています。ただ、国内での新規感染者数は1,577人と収束傾向はみられません。
中国
中国では2020年4月21日以降、中国政府外交部から海外旅行自粛が指示されており、実質的に観光客の渡航が不可能な状況が続いています。なお中国国家衛生健康委員会によると、9月20日現在1日当たりの国内新規感染者が49人だと発表されています。
中国人が日本から入国する場合は、原則としてフライト搭乗前2日以内に実施したPCR検査と血清IgM抗体検査の陰性証明の取得、及び搭乗時の陰性証明書の提示、14日間の施設での隔離などが求められます。
9月20日現在、日本のワクチンパスポートは使用できません。(IgM抗体検査の場合、陰性で感染力が少ないことが示されます。)
台湾・香港
台湾衛生福利部疾病管制署によると、9月20日現在1日当たり12人の感染が確認されました。ただし、台湾ではワクチン接種のスピードが遅く、9月17日から75歳以上の高齢者にモデルナワクチンでの2回目接種が開始され始めました。Our World in Dataによると、9月17日現在、ワクチン接種が完了している人は6.62%となっています。
なお、香港では日本のワクチンパスポートを利用でき、ワクチン接種者であれば14日間の隔離が必要なものの入国が可能になっています。
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東南アジア
2021年8月の東南アジア各国の訪日客は、タイが300人、シンガポールが90人、マレーシアが200人、インドネシアが600人、フィリピンが400人、ベトナムが400人、インドで300人となりました。
タイでは、10月1日よりバンコク、チェンマイ、チョンブリー、ペッチャブリー、プラチュワップキーリーカンの各県で、外国人観光客の受け入れを再開することが発表されるなど、徐々に観光業界の復興に向けて動き出しています。
またシンガポールでは8月21日から日本からのワクチン接種完了者に対しては施設指定ではなく自主隔離ができるようになりました。
またマレーシアでも観光再開への意欲を示しており、9月16日から離島において国内観光客の受け入れを開始しました。またワクチンを接種していれば、14日間の隔離を自宅で行うことも可能です。
なお9月20日現在、タイ(プーケット島、サムイ島、パンガン島、タオ島のみ)とシンガポールに加えマレーシア、インドネシア、ベトナムでも日本のワクチンパスポートは使用可能となりました。
ただし、ワクチン接種による隔離免除、隔離緩和等の措置がとられている国は少なく、タイとベトナムにとどまっています。
関連記事:タイ、5都市で外国人観光客受け入れ再開 ワクチン接種完了を条件に
豪州、北米
2021年8月の豪州の訪日客は、500人となりました。なお豪州政府による日本に対する海外渡航禁止は継続されており、日本のワクチンパスポートは使用できません。
2021年8月のアメリカの訪日客は、3,000人となっています。アメリカではグアムのみ日本のワクチンパスポートが使用できます。
ハワイ州については、ハワイ州指定の医療機関で検査を受け、ハワイ到着時に陰性証明書を提示すれば、ワクチン接種に関わらず到着後の10日間の自己隔離は免除されます。
2021年8月のカナダの訪日客は、500人でした。日本のワクチンパスポートは使用可能となり、接種が完了していれば隔離対象外となります。
2021年8月のメキシコ訪日客は、200人となりました。9月20日現在、日本のワクチンパスポートは使用できません。
欧州
2021年8月の欧州各国からの訪日客数は、イギリスが1,300人、フランスが1,800人、ドイツが1,000人、イタリアが600人、ロシアが800人で、スペインは600人となりました。
日本のワクチンパスポートが使用できる国は、訪日客数が速報で発表されている国に限ると、イタリア、フランス、ドイツとなっています。
なおフランスの場合は、フランス国内でレストランなどに入店する際に必要となる「衛生パス」について、ワクチンパスポートとは別に発行する必要があります。ワクチン接種者のみが対象となります。
また9月9日、欧州理事会は、感染拡大を受け日本を「安全な国」リストから除外すると発表しました。観光客の受け入れを停止する勧告がなされています。
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中東地域
2021年8月の中東地域の訪日客は、700人となりました。
中東地域各国も、日本政府による上陸拒否、14日間の隔離・PCR検査受検等、査証の効力停止等の対象となっており減少が続いています。
ただしトルコでは日本のワクチンパスポートが使用でき、入国が認められています。またトルコ、アラブ首長国連邦(ドバイ)においては日本への渡航制限が緩和されています。
なおドバイではドバイ国際博覧会(ドバイ万博)の開催にあたり、10月以降成田国際空港から週6便、関西国際空港から週4便ドバイへのフライトが計画されています。
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日本国内での旅行再開で、入国制限緩和されるか
日本政府は9月に入り、ワクチン接種率が50%を超えたことから県境をまたぐ旅行、大規模イベントの緩和を打ち出しています。さらに、ワクチン接種証明書もデジタル化することが発表されました。
まずは国内での旅行再開を行うことで、徐々に外国人に対しても門戸が開かれるのではないかと予想されます。台湾などではすぐに訪日旅行したいという声もあるなか、旅行制限解除の時期が重要となりそうです。
ただし、自由に国内旅行ができると思う時期が2024年だという意識調査が発表されたり、新型コロナウイルスの指定感染症分類の見直しなどもたっていない中、行先は未だ不透明な部分も数多く残っています。
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外務省:海外渡航用の新型コロナワクチン接種証明書が使用可能な国・地域一覧
韓国病気管理庁:코로나19 국내 발생 및 예방접종 현황(9.20. 0시 기준)
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中国国家衛星健康委員会:截至9月19日24时新型冠状病毒肺炎疫情最新情况
JNTO:訪日外客数(2021年8月推計値)
Our World in Data:Share of people vaccinated against COVID-19, Sep 18, 2021
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