楽天のインバウンド事業 驚異の成長率+28%・旅行取扱高6,000億円 | 楽天の3つの強みと3つの事例を解説

楽天のインバウンド事業 驚異の成長率+28%・旅行取扱高6,000億円 | 楽天の3つの強みと3つの事例を解説

2018年の訪日観光客数はついに3,000万人を突破し、国の掲げる2020年4,000万人に向けて、日本のインバウンド市場が破竹の勢いで成長を続けています。旅行業界各社が次々にインバウンド事業を中核分野に掲げて取り組みを続ける中、国内大手OTA(online travel agent)である楽天の成長は著しいものがあります。

観光庁の統計によると、トラベル事業の旅行取扱高は6,000億円を超えており、特に訪日旅行の成長率は+28%と大幅な伸びを示しています。また、ヨーロッパの有名サッカークラブチームFCバルセロナとのメインパートナー契約、携帯電話事業への本格参入、キャッシュレス決済の導入など、多岐に渡る積極的なサービス展開とそのシナジーを存分に発揮しています。

ますます注目の楽天のトラベル事業と、関連するサービス領域のインバウンドへの取り組みをご紹介します。


国内最大のOTA楽天トラベルの3つの強み

1. 国内仕入れ力の高さ

楽天トラベルはインターネット専門の宿泊予約サイトとして、2001年にスタートしました。創業当初は86軒しかなかった契約宿泊施設は、現在で国内約30,000軒に上ります。これは国内2大OTAであるじゃらんネットよりも多く、国内ではNo.1の取扱施設数です。※2018年現在 

楽天は、インターネット黎明期に、時流を捉えた事業展開で地道に掲載施設数を伸ばし、宿泊施設と強固な関係を構築してきました。今では海外のホテル、航空券やレンタカーの予約も楽天トラベル上で可能になっています。

訪日旅行客の増加と個人旅行(FIT)の浸透により、更にインターネット旅行予約の需要が高まっていくことが予想されますので、楽天の強力な国内仕入れ力は、インバウンド事業を展開する上で強みになっていくでしょう。

2. 膨大に蓄積されたビッグデータ

現在70以上の事業領域にサービスを拡大し続ける楽天ですが、その会員数はなんと1億人以上を誇ります。※2018年9月現在

消費者の購買ビッグデータの蓄積が楽天の強みであり、このデータをマーケティングに活用し、消費者動向を捉えたサービス拡充と新たな開発を進められるのです。

2018年5月には「Rakuten AIris」というAIを用いて楽天のビッグデータを分析するAIエージェントを開発しました。インバウンドのデータ蓄積も進み、一層のサービス拡大を進めていくことでしょう。

3. 事業間シナジーと楽天のIT技術の活用

70以上のサービス領域を持つ楽天ですが、この事業間シナジーの増大が楽天のインバウンドに追い風となります。楽天のサービス領域があれば、訪日外国人の旅行に関するいかなるニーズ(旅マエ・旅ナカ・旅アト)に応えられます。楽天トラベルで予約し、旅行中は楽天Payで決済、気になる日本の商品はRakuten Global Marketで購入できるのです。

先述の通り、そういった消費行動を通して蓄積したビッグデータを自社のIT技術で分析し、新たなサービス開発に活用します。また台湾市場向けには、プリペイドSIMとスマートフォンアプリ「J-TripGateway」の提供も2018年に始めています。

楽天グループがついにインバウンド業界に参入

訪日外国人が日本を訪れる際の不満として今なお指摘され続けているのが、世界の観光地では整備されていて当たり前の「無料公衆無線LAN環境」。そうした声に応えて登場したのが、楽天グループのプリペイドSIMカード×観光情報アプリ「J-TripGateway」です。今回はこのサービスについてご説明しましょう。楽天コミュニケーションズ株式会社のインバウンドソリューションを資料で詳しくみてみる訪日外国人向けプリペイドSIM「楽天グループのプリペイドSIM×観光情報アプリ「J-TripGateway」」を...

楽天グループの強みを生かしたインバウンドへの取り組みが既に始まっているのです。

楽天のインバウンドへの取り組み事例3選

1. 札幌の民泊施設にIoT技術を導入

楽天グループの楽天コミュニケーションズ株式会社は、札幌でインバウンド向けの民泊を運営する株式会社MASSIVE SAPPOROに、施設の運営効率を高めるIoTサービス「あんしんステイIoT」の提供を開始しました。

これは今までチェックインや宿泊者とのコミュニケーションなど有人で行っていた宿泊業務を、IoTの技術を使うことで無人の民泊運営を可能にするものです。タブレットと介してのコミュニケーションや施設のスマートロック機能など、宿泊施設の効率的な稼働をサポートするサービスです。

2019年1月より、MASSIVE SAPPORO社の運営する施設UCHI Living Stay Odoriが無人運営でリニューアルします。楽天の高いIT技術力が着実にインバウンド市場にも浸透しているといえるでしょう。

2. 神戸市とのインバウンド包括連携協定

2018年12月に楽天と神戸市は、地域活性化に目指した包括連携協定を結びました。包括連携協定の主な内容は、以下の6項目です。

  1. 神戸の魅力の向上と発信に関する事項
  2. インバウンドの推進に関する事項
  3. ふるさと納税の推進に関する事項
  4. 大学等と連携した人材育成支援に関する事項
  5. スポーツを通じた地域貢献に関する事項
  6. 神戸のまちの活性化等に関する事項

AIを使った人材育成やスポーツ振興などが挙げられており、その中に「インバウンドの推進」も掲げられています。

訪日外国人向けにキャッシュレス決済を推進、楽天のAIの活用、また楽天が運営に携わるサッカークラブ、ヴィッセル神戸のアンドレス・イニエスタ選手を起用した市のプロモーションなど、楽天との協業で出来る地域振興の可能性は限りなく広がるでしょう。

インバウンドの点では、神戸市は近隣の大阪や京都に比べると後れを取っています。平成26年から平成29年にかけて関西圏のインバウンド消費は全体で2.8倍の大幅な成長を見せているのですが、兵庫県では2割減となっています。

今後の楽天との取り組みで、神戸市への訪日外国人誘致がどれだけ伸びるのか注目です。

2年前より外国人消費2割減…インバウンドに苦戦する兵庫 神戸

概要|楽天が神戸市と包括連携協定を締結楽天は2018年12月1日、神戸市と包括連携協定を締結しました。この協定を通じ、両者は神戸市の市民サービスの向上と地域活性化を推進していく狙いです。協定は以下の6項目からなります。神戸の魅力の向上と発信に関する事項インバウンド の推進に関する事項ふるさと納税の推進に関する事項大学等と連携した人材育成支援に関する事項スポーツを通じた地域貢献に関する事項神戸のまちの活性化等に関する事項楽天は2007年に神戸支社を開設し、最先端のIT技術を活用した神戸市のP...


3. 日本政府観光局と共同で欧州向けインバウンドプロモーション

2019年1月、楽天が発表したのは、日本政府観光局(JNTO)と共同で行う欧州向けのインバウンドプロモーションです。先述したヴィッセル神戸のイニエスタ選手を起用し、SNSや動画によるプロモーション活動「Japan through Iniesta's Eyes!」を大々的に行います。


欧州では圧倒的な知名度を誇るプロスポーツ選手×訪日プロモーション、このかけ合わせは国内外でスポーツ振興を行ってきた楽天ならではの手法とノウハウと言えます。

スペインのサッカートップリーグのFCバルセロナの本拠地カンプノウスタジアムでは、2月2日の試合で、墨絵や折り紙などの日本文化を体験できる観光情報ブースを設置し、メインスクリーンではイニエスタ選手が登場する訪日プロモーション動画を放映します。

2019年も年始から楽天のインバウンド事業の勢いが止まりません。

楽天トラベル、イニエスタ選手を起用した欧州向けの訪日促進プロジェクトを展開

日本国内でイニエスタ選手がオフの時間を楽しむ様子などを発信2019年1月22日、楽天株式会社の運営する旅行予約サービス「楽天トラベル」は、JリーグJ1クラブの「ヴィッセル神戸」に所属するアンドレス イニエスタ選手(以下、同選手)が日本政府観光局(JNTO)の欧州向け訪日プロモーションに起用されたことを受けて、欧州各地から日本への旅行を促進するための施策をJNTOと共同で実施すると発表しました。同選手は、出身国のスペインをはじめとする欧州で高い人気と知名度を誇り、来日後も注目を浴び続けていま...


加速するインバウンド市場、楽天の”勝ち筋”とは?

不足する客室とシェアリングエコノミー

インバウンドが加速する一方、ホテルの客室不足が深刻化しています。日本の大都市圏でホテルの建設ラッシュが進む中、国内の宿泊在庫を巡っての競争は激化していきます。一方でシェアリングエコノミー、その中でもここ数年、「民泊」がクローズアップされるようになりました。海外ではシェアリングエコノミーはUberやAirbnbに代表されるように既に広く浸透している概念です。

観光庁訪日外国人消費動向調査によりますと、訪日外国人の12.4%が民泊を利用しています。インバウンドにおいて、訪日外国人の民泊利用は今後も拡大をしていくでしょう。

楽天グループでも民泊事業会社である楽天LIFULL STAY株式会社を2017年に設立し、民泊事業を積極的に進めています。2018年5月には協力会社と提携し、島根県松江市に戸建型宿泊施設をスタートさせました。一戸建ての快適さと高品質な宿泊体験を提供しています。 

楽天の宿泊OTA事業は、多様化する宿泊ニーズに対してどれだけ多くの選択肢を提供できるか。客室在庫を確保しつつ、新しいサービス価値を創出できるかがカギになっていくでしょう。

競合する海外OTAとの差別化とグローバルブランディング

Expedia、Booking.com、Agoda、Ctripなど、世界的には楽天よりも知名度のある海外OTAがある中で、楽天が競合他社とのどう差別化していくかが重要です。

2018年秋に楽天トラベルは大幅なサイトリニューアルを行いました。


Rakuten Travel

訪日旅行を意識した非常に見やすいUI(ユーザーインターフェイス)になっており、2019年1月現在で、11か国語に対応しています。日本発のIT企業ですので、地の利を活かしたインバウンド施策や、先述のJNTOのような訪日プロモーション施策を積極的に進めていっています。

またFCバルセロナとのメインパートナー契約、2018年のブランドロゴ統合のように、国際的な認知度向上とブランディングは楽天グループ全体の課題であり、注力しているポイントといえます。

グローバル認知度を上げ、現在1億人の楽天ユーザー数を更に拡大することで、トラベル事業と関連するサービス領域の利用者も増えていくことでしょう。

まとめ:楽天が目指す「グローバルOTA」とインバウンドは不可欠

楽天トラベルの公式ウェブサイトによると、「楽天は今後『グローバルOTA』を目指していく」と示されています。グローバルOTAとは、世界中の人が日常のいかなるシーンにおいても、当たり前のように楽天トラベルやその関連サービスを使って、旅をするような世界だということです。

間違いなく増え続けるインバウンド需要への取り組みは、楽天のグローバル展開には不可欠な要素です。

そのためには、独自の高いIT技術とビッグデータを活用しながらサービスを拡充していくことで、楽天を通して日本を訪れ、楽天を通してモノ・コトを買うような、インバウンドに関わる全てを包括するサービスとその仕組みを、グローバル規模で構築していく必要があります。

2019年も楽天のインバウンドへの取り組みにとって、飛躍の一年になることでしょう。


<参考>

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客のインバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!