条例規制・観光税導入で訪日外国人と「共生」地域活性化への3つのキーワードとは【日銀レポート】

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日本銀行は6月10日、日本のインバウンドの現状について、企業・自治体等の取り組みや地域活性化に向けた課題を中心に実施した調査の結果を公表しました。

2018年のインバウンド需要の動向をふまえ、さらなるインバウンド需要の獲得に向けた企業や自治体等の取り組みと今後の課題について見ていきましょう。


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2018年のインバウンド動向:東アジアのインバウンド客とFITの増加が顕著に

▲日本銀行:「インバウンドの現状:企業等の取り組みと地域活性化の注目点<概要版>」より引用

2018年の訪日外国人観光客数は3,119万人と、過去最高を記録しました。最近のインバウンド需要の動向としては、東アジアからの観光客の増加 ②個人旅行の増加と訪問・宿泊地の広がり ③「モノ消費」の落ち着きと「コト消費」の拡大の3点が挙げられました。

東アジアからの観光客の増加において、2018年の訪日外国人観光客の内訳を見ると、東アジア中国韓国台湾香港が全体の7割強を占めており、とりわけ中国からの観光客が大幅に増加していることが明らかになりました。

個人旅行の増加と訪問・宿泊地の広がりでは、団体ツアーでの訪日旅行からFITへのシフトが進む中で、地方における延べ宿泊者数も増加傾向にあります。

③「モノ消費」の落ち着きと「コト消費」の拡大において、直近数年では「買い物代」がマイナスに寄与している一方で、飲食費・娯楽等のサービス費は足元でプラスに寄与していると言えるでしょう。

地域活性化を目指し、企業や自治体がインバウンド需要の獲得へ

▲日本銀行:「インバウンドの現状:企業等の取り組みと地域活性化の注目点<概要版>」より引用

日本は「観光先進国」の実現を目指し、インバウンドを含む観光の振興を「成長戦略と地方創生の大きな柱」として位置付けた上で、2020年訪日外国人観光客数を4,000万人訪日外国人による旅行消費額を2018年の4.5兆円から8兆円に増やすといった、さらなるインバウンド誘客や消費喚起に取り組んでいます。

国を挙げて取り組むインバウンド施策ですが、多くの企業や自治体でも、インバウンド需要の獲得に積極的な姿勢を見せているのが現状です。

特に地方では、高齢化や人口減少の進行への危機感が強く、インバウンド需要を積極的に取り込むことで、地域活性化を目指す動きが活発となっています。横浜市では、インバウンドを含む観光分野強化による交流人口増加を目指し、地方創生を実現する方針が盛り込まれた「新中期4か年計画」を策定しました。

企業が取り組む、3つのインバウンド対策

本調査で確認された、企業が取り組むインバウンド需要獲得に向けた取り組みとしては、主に①インバウンド客を受け入れる環境整備の進捗 ②スマホアプリSNSの活用強化、デジタルマーケティングの導入 ③「コト消費」の拡大を受けた取り組みの積極化の3点が挙げられます。

▲日本銀行:「インバウンドの現状:企業等の取り組みと地域活性化の注目点<概要版>」より引用

インバウンド客を受け入れる環境整備の進捗としては、多言語対応Wi-Fiの整備、キャッシュレス対応等を、中小・零細企業も含め多方面で取り組んでいることが明らかになりました。観光庁補助金を活用したWi-Fiの整備や、地元商店に携帯型自動翻訳機の無償貸与などといった取り組みから、訪日外国人旅行者の「旅行中に困ったこと」のアンケートで改善が見られています。

②スマホアプリSNSの活用強化、デジタルマーケティングの導入では、個人旅行の増加を受け、SNS等で情報発信を強化する動きも顕著です。特に海外のインフルエンサーを起用したSNSによる情報発信は、低コストで効果が高いとされ、重点的に取り組む企業や自治体も多い傾向にあります。最近ではデジタルマーケティングを導入する動きも見られており、インバウンド客によるSNS上の口コミ情報の収集・分析などから、地域のプロモーション活動を強化するといった取り組みが行われています。

③「コト消費」の拡大を受けた取り組みの積極化においては、地方を中心に耕作放棄地や空き家、閉鎖施設などの不稼働資産を有効活用する動きが見られました。熊本では、耕作放棄地の田畑を活用し、農業体験ができる観光商品の開発を進めているとのことです。大阪でも、空き家を客室に改装し、日本人の日常が体験できる場としてインバウンド客に好評となっているケースもあります。

インバウンド需要を地域活性化へ繋げるための3つのキーワード

▲日本銀行:「インバウンドの現状:企業等の取り組みと地域活性化の注目点<概要版>」より引用

本調査において、今後のインバウンド需要の獲得に関する課題として、「連携」「分散」「共生」の3つのキーワードが挙げられます。

「連携」について、それぞれの企業や自治体などの単独でのインバウンド対応には限界があることから、地域全体で業界団体や行政などとの連携拡大が不可欠であるとの指摘がされました。しかし、長年の競争関係や関係者間の意識のズレから、地域内連携に遅れが生じているとの声も挙がっています。今後は日本版DMOが観光地域づくりの舵取り役となり、インバウンド需要地域活性化に結びつけていくことが期待されるでしょう。

「分散」では、首都圏や主要観光地に集中する訪日外国人観光客地方へ誘客し、「分散」をより一層進めていく必要があるとの指摘がありました。インバウンド地方誘客促進のカギとなる、二次交通の整備を目指した、テクノロジーを駆使した課題解決に向けた動きが見られています。

「共生」では、観光による地域経済の持続的な発展のために、住民や環境との共生が重要との指摘がありました。京都などの人気観光地では、受け入れ能力を超えた観光客の急増に伴い、住民の生活の質や観光客の満足度低下などが懸念されるオーバーツーリズムが問題となっています。課題解決に向けて、条例による規制や税の導入を検討する動きも見られます。

まとめ:インバウンドによる観光振興からの地域活性化へ

インバウンド需要獲得に向けた、企業や自治体の取り組みをふまえた上で、今後はさらに「連携」「分散」「共生」の3つのキーワードをもとにインバウンド対策を加速させていく必要があることが、改めて明らかになりました。

日本版DMOが中心となり企業や自治体、業界団体、地域などを巻き込み、一丸となってインバウンド施策に取り組むことが期待されます。訪日外国人観光客地方誘客を促進する上では、二次交通の整備はもちろん、オーバーツーリズム防止に向けた、住民や環境との共生を実現するような取り組みが必要不可欠となるでしょう。


<参照>

・日本銀行:地域経済報告 さくらレポート別冊「インバウンドの現状:企業等の取り組みと地域活性化の注目点」

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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」

2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。

「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

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