5月25日に緊急事態宣言の解除が発表されて以降、日本各地は徐々に以前までの生活を取り戻しつつあります。
新型コロナウイルスの世界的な流行を経験した今、接触や密集を回避することが当然となりつつあります。
いわゆる「3密」の塊ともいえる毎年10月末のイベント「ハロウィン」ですが、毎年人が集まる渋谷駅周辺の動向を鑑み、渋谷区は同イベントを目的とした来訪を避けるよう呼びかけています。
渋谷区はKDDI等の提供する「バーチャル渋谷」でのイベントへの参加も呼びかけます。渋谷区は同イベントの後援となっています。
今回はエスカレートする日本独自のハロウィン文化を紹介し、イベントに対する海外からの反応を見ていきます。
さらに、ハロウィンシーズンのインバウンド対策について紹介します。
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エスカレートする日本独自のハロウィン文化
ハロウィンとは、キリスト教の諸聖人に祈りを捧げる祝日「万聖節」の前夜祭として毎年10月31日に行われるお祭りです。
秋の収穫を祝い、先祖の霊を迎えるとともに悪霊を追い払うお祭りで、日本でいえばお盆にあたる行事になります。
しかし、日本では仮装を楽しむイベントといった風潮が強く、毎年渋谷駅周辺では多くの人が仮装をして街中を練り歩く様子が見られ、近年ではハロウィンに参加する人々の暴徒化や過激化が問題視されています。
そうしたエスカレートしつつある日本独自のハロウィン文化について見ていきます。
そもそもハロウィンの由来は
ハロウィンの由来は諸説ありますが、その昔、古代ケルト人の1年の終わりは10月31日であり、夜には、死者の霊がこの世に戻ってきて、悪霊が悪さをするとも信じられていました。そのため、秋の収穫を祝うと共に、悪い霊を追い払う宗教的な意味合いのお祭りも行なわれていました。
やがて、時代とともにケルト人が行っていたこのお祭りとキリスト教が融合し、現在のハロウィンの行事として残っていったといわれています。
仮装する理由は、魔女やゴースト、ゾンビといった恐ろしいものに仮装をすることで、死者の霊と一緒にやってきた悪霊を怖がらせて追い払うためだそうです。
また、子供たちが「Trick or Treat(お菓子をくれなきゃ、いたずらしちゃうぞ!)」 という言葉を唱えながら家々を訪ね、菓子を集めて回る習慣がありますが、これはアメリカで根付いた習慣だそうです。
日本に広まったのは1970年代に玩具メーカーが関連商品を出したのが始まりと言われています。
近年の日本のハロウィン、特徴は
近年、日本独自のハロウィンはSNSを通じて外国人にも広く知られています。
海外では子供が仮装をしているのに対し、日本では若者を中心とする大人が仮装を楽しんでいます。
仮装する対象も米ハリウッド映画のキャラクターやアニメキャラクター、有名人に扮したものなどさまざまです。
また、海外では屋内で楽しむことが多いイベントですが、日本では渋谷や川崎のハロウィンパレードなど、屋外で大勢の人が集まります。
そうした、大人が仮装をして楽しむ姿や屋外で多くの人が集まる日本のハロウィンは、外国人から見ると「クレイジー」と映るようです。
渋谷周辺では若者たちの大騒ぎの場と化し、本来の主旨とは異なっている側面もあります。
今年のハロウィンも警察が厳重態勢で警備をすると予想されます。
トラック横転やゴミ問題などマナーの悪さも
2018年10月28日午前1時過ぎには、渋谷センター街の路上に停めてあった軽トラックを数人が取り囲んで横転させ、車の上に乗って飛び跳ねるといった問題が発生しました。
去年は渋谷区の長谷部健区長が「節度を持って遊んでほしい」と初めての呼び掛けをしましたが、節度が守られることはなく、10月31日夜から11月1日朝にかけ、警視庁渋谷署などは強制わいせつや痴漢、窃盗、暴行などの容疑で計13人が逮捕されました。
また、渋谷区は、渋谷駅周辺のコンビニエンスストアなど酒類を扱う店舗に対し、瓶に入った酒の販売を自粛するよう異例の呼びかけを行いました。
区によると、仮装者が酔った勢いで酒瓶を割る行為が続発し、けがやタイヤのパンクなどの危険を防ぐためだといいます。
しかし、ハロウィン翌日の渋谷センター街の周囲には割れた瓶や空き缶などの、大量のごみが散乱しました。
外国人からは賛否両論
日本独自のハロウィンを独特で面白いと感じる外国人がいる一方で、本来の趣旨とはかけ離れた日本のハロウィンに対して嫌悪感を示す人もおり、賛否両論です。
実際に外国人の人々は日本のハロウィンに対してどう思っているのか、SNSから生の声を紹介します。
肯定的な意見を紹介
「日本のハロウィンの仮装は他では見られないわ。 渋谷でクレイジーなハロウィン祭りをチェックして!」
「夫と渋谷ハロウィンイベントに行きました。 たくさんの素晴らしい仮装がありました。 東京にいるなら、ぜひチェックしてみてください!」
このように、肯定的な意見では
- 大勢の人が一つの場所に集まっているのがクレイジーで、他ではないから
- 自国では見られない仮装を見られて面白い
-
大人もコスプレをして楽しめる
など、日本独自のハロウィンスタイルが珍しく面白いといった意見がありました。
否定的な意見を紹介
「毎年、渋谷でのハロウィンパーティーは手に負えない状況になっています。 私は彼女が大丈夫であり、誰も重傷を負わなかったことを願っています。」
「渋谷のハロウィンは今や日本で最悪のイベントのように見える。至る所から人が来る。」
否定的な意見では
- 自国の楽しい伝統がかなり曲がった捉え方をされていて残念
- ハロウィン後の街中のゴミがひどく、迷惑
など、日本の過激化しているハロウィンの状況にうんざりしているといった意見や、本来のハロウィンとはかけ離れた日本のハロウィンに戸惑いがあるといった意見が見られました。
ハロウィンのインバウンド対策を紹介
日本のハロウィンは一大イベントとなり、海外の観光客からの注目度も高くなっています。そこで、訪日外国人観光客に向けたハロウィンの取り組み事例を紹介します。
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ハロウィンがお目当ての訪日外国人観光客も
SNSを通じて日本のハロウィンが広く認知されたことで、訪日外国人観光客にとっても日本のハロウィンは「観光目的」となり、インバウンド消費につながっています。
海外では珍しい日本のハロウィンの形が需要を生み出しています。
訪日外国人観光客は10月に何を目当てに日本に訪れているのか?
日本政府観光局(JNTO)の訪日外客統計によれば、訪日外国人観光客が日本に最も多く訪れているのは毎年7月で、その他にも4月、10月、12月に訪日外国人観光客数が増加し、下がっていくという傾向があることがわかります。<関連> 目次直近5年の10月の訪日外客数推移日本の紅葉秋祭り京都 時代祭京都 鞍馬の火祭東京 靖国神社 秋の例大祭長崎 長崎くんち埼玉 川越まつりハロウィンパレードモータースポーツ直近5年の10月の訪日外客数推移2016年10月の訪日外客数は、前年同月比で16.7%の成長となり...
ハロウィンに向けた準備の例を紹介
近年ホテルや小売店では、ハロウィンを感じられる装飾やグッズ販売など、インスタ映え要素を取り入れ、買うだけではなく体験を重視したコト消費にも対応しています。特にハロウィンを目的に訪日する観光客は、自分も日本のハロウィンを体験したいという思いが強いです。
そのため、ハロウィンシーズンはお店の店内をハロウィン仕様に飾り付けをしたり、料理のメニューをアレンジしてみると良いでしょう。また、お店に仮装グッズやフォトスポットを用意し、来店客がプチ仮装を体験できるといった工夫も外国人には嬉しいでしょう。
海外の人から見ると、ハロウィンという海外の文化と日本の文化が融合している点に興味をそそられているようです。
そのため、自店舗に少しハロウィンの要素を加えることで、観光客にとっては目新しく、興味を持ってもらいやすくなるでしょう。
また、今年のハロウィンは感染対策にも留意しなければなりません。「3密」のできる限りの回避や、イベント時間帯の限定など、自治体・民間問わず今後の対策が求められます。
アフターコロナの観光市場、中国のケースから予測/インバウンド需要はいつ戻る?
新型コロナウイルスの流行により、世界中で消費や旅行、人の流れなどに大きな変化が生まれています。 その中でも世界で初めて感染拡大が始まった中国では、世界に先がけて新型コロナウイルスの感染拡大を食い止め、徐々に人の動きや経済活動が回復しつつある様子がうかがえます。 しかし、武漢市では5月上旬に感染「第二波」と思われる兆候が出始め、感染拡大を食い止めるべく10日間で武漢市民全員をPCR検査するという空前の規模の対策が行われました。 今回の記事では、このような中国の現状を人の流れ、消費動向、...
新型コロナの流行いかんにかかわらず節度を保ったハロウィンイベントを
今回は日本独自のハロウィン文化が海外からどのように見られているのか、そして訪日外国人観光客に日本のハロウィンを楽しんでもらうための工夫について紹介しました。
アメリカから取り入れたハロウィン文化が日本独自のハロウィン文化として発展し、海外から日本のハロウィンを目当てにした訪日外国人観光客が増えていることは喜ばしいことでもあります。
しかし、同時に日本のハロウィンの過激化やマナーの悪さも世界中に知られてしまっていることもまた事実です。
そして今年のハロウィンはこれまでとは違い、新型コロナウイルスの感染対策や衛生管理の観点でも厳しい目を向けられることが予想されます。
ハロウィンイベントが新型コロナウイルスの感染拡大の温床となってしまっては、日本のイメージは大きく下がりかねません。
日本国内の経済効果に大きな影響を与えるだけでなく、インバウンド需要を取り込むイベントとしても発展しつつある日本のハロウィンイベントを絶やさない為にも、一人ひとりの意識改革は今後より一層求められるでしょう。
<参照>
シブヤ経済新聞:渋谷区長、ハロウィーンの来街自粛呼び掛け オンラインイベントへの参加促す
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今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。
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