2027年に市場規模500兆円超え?「越境EC」がコロナ後の訪日中国人獲得に欠かせないワケ

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7月22日、経済産業省が「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」を発表しました。

この調査は日本・米国・中国を対象に1年間の企業間電子商取引(BtoB-EC)や消費者向け電子商取引(BtoC-EC)の市場規模などを推計したもので、今回で22回目となります。近年では、3か国間の越境ECの市場動向、市場規模、利用状況についても調査しています。

本記事では、この調査の結果を紹介するとともに、今後のインバウンド対策に活かせるデータや今後の越境ECのポイントについて解説します。

※本文中の流通総額や市場規模の数値は、記事執筆時点のレートで換算しています。

《注目ポイント》

  1. 2019年、世界のBtoC-EC市場規模は約373兆円、国別では中国がトップ
  2. 世界の越境EC市場規模は約96兆円、成長率はBtoC-EC市場を上回ると予想
  3. 中国の越境ECが重要な理由は「インバウンドとの密接な関係」

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世界のBtoC-EC市場:2019年の市場規模は約373兆円/年々増加傾向

世界のBtoC-EC市場規模推移
▲[世界のBtoC-EC市場規模]:令和元年度 電子商取引に関する市場調査

世界のBtoC-EC市場の市場規模は、2017年には2兆3,800億ドル(約251兆円)、電子商取引化率(すべての商取引に占める電子商取引の割合)10.4%でしたが、2019年には市場規模3兆5,300億ドル(約373兆円)、電子商取引化率は14.1%と推計されており、年々右肩上がりに増加しています。

さらに、2023年には市場規模6兆5,400億ドル(約691兆円)、電子商取引化率は22.0%にまで上昇するとの予測がなされています。

その中でも世界全体の傾向として、小売分野のEC化が引き続き拡大すると見られています。

国別EC市場規模:2位以下に3倍以上の差をつけ中国がトップ

国別EC市場規模
▲[国別EC市場規模]:令和元年度 電子商取引に関する市場調査

BtoC-EC市場規模を国別で見ると、1位は中国の1兆9,348億ドル(約204兆円)、続いて米国の5,869億ドル(約62兆円)、英国の1,419億ドル(約15兆円)と続いています。日本は4位で1,154億ドル(約12兆円)でした。

中国は市場規模で2位の米国とは3倍以上の差があり、また前年比でも中国は27.3%増と米国の14.0%増を上回る伸びを記録するなど、中国のEC市場の重要性がうかがえます。

また、世界のECプラットフォームの流通総額を見ても、中国と米国の市場規模の大きさがわかります。

順位 サービス 流通総額(日本円換算)
1位 Taobao/淘宝 中国 5,150億ドル(約54兆円)
2位 Tmall/天猫 中国 4,320億ドル(約46兆円)
3位 Amazon 米国 3,440億ドル(約36兆円)
4位 JD.com/京東 中国 2,590億ドル(約27兆円)
5位 eBay 米国 960億ドル(約10兆円)

このように1位、2位、4位には中国のサービスであり、3位のAmazonと5位以降は米国のサービスがランクインしています。

タオバオ(淘宝)とは

タオバオ(淘宝網/Taobao)とは、

世界の越境EC市場:2019年の市場規模は約96兆円/2027年には5倍に?

2019年の世界の越境EC市場規模は9,123億ドル(約96兆円)と推計され、2027年にはその5倍以上にあたる4兆8,561億ドル(約513兆円)にまで拡大すると予測されています。

その間の年平均成長率は約27%であり、世界のBtoC-EC市場規模の拡大を上回るとされていることから、越境EC市場はEC市場の中でも特に注目すべき市場であるといえるでしょう。

越境ECを利用する理由を尋ねたアンケート結果から、市場規模拡大の背景として主に以下の点が挙げられています。

  • 越境ECの認知度の上昇
  • 自国にはない商品・自国より安価な商品を入手できる
  • 商品やメーカーに対する信頼性
  • 消費者ターゲットを世界に拡大しようとする事業者の姿勢
  • 物流レベルの向上

越境ECで購入されている商品:衣類・服飾雑貨がトップ

2018年に世界31か国の約3万4,000人を対象に実施された調査では、越境ECで購入経験のある商品として「衣服、靴、アクセサリー(68%)」「家電、PC、スマホなど(53%)」「玩具、趣味(53%)」「宝飾品、時計(51%)」「化粧品、美容関連製品(46%)」などが上位に入っています。

92%が「配送料金の情報開示」を重視

越境ECユーザーが配送について重視すること
▲[越境ECにおける配送について重視すること]:令和元年度 電子商取引に関する市場調査

越境ECにおける配送について重視することに関するアンケートでは、「購入前における配送料金の情報開示」を「とても重要」または「重要」と答えた人が92%「一定額以上購入時の配送料金の無料化」が同88%という結果になりました。

配送料はECと実店舗の大きな差です。購入者が海外にいる越境ECでは、国内で配送が完結する場合よりも多くの配送料がかかることから、その点を特に気にしている人が多いと推測されます。

さらにアンケートからは、配送料に加え、返品プロセスや配送状況などがきちんと提示され、信頼できるかが重視されていることが読みとれます。

各国間越境EC市場:中国の購入総額は3兆6,652億円

日本・米国・中国 3か国間の越境EC市場規模
▲[日本・米国・中国 3か国間の越境EC市場規模]:令和元年度 電子商取引に関する市場調査

各国間の越境EC市場では、中国が購入総額でトップとなりました。中国の購入総額の推計は3兆6,652億円で、そのうち日本からの購入額は1兆6,558億円、前年比は7.9%増でした。

同じく、米国の購入総額は1兆5,570億円で日本からの購入額は9,034億円、前年比9.7%増となりました。

この数値から、中国と米国はどちらも日本からの越境EC購入額が大きいことがわかります。新型コロナウイルスの世界的な流行により、訪日外国人観光客の日本国内での消費が見込めない中、現地を訪れることなく商品を購入できる越境EC市場で需要を呼び起こすことがますます重要になってくると考えられます。

中国のEC市場:Alibabaがトップに

現在中国のEC市場規模は2位の米国を大きく引き離して1位となっていますが、現時点での利用は都市部に集中しており、今後農村部の利用が拡大していくと考えられています。そのため、市場規模はますます拡大するとみられます。

中国のECプラットフォーム事業者のシェア上位は、「Alibaba/阿里巴巴(55.9%)」 「JD.com/京東(16.7%)」「Pinduoduo/拼多多(7.3%)」となりました。トップのAlibabaは、2019年にECプラットフォームの一つであったKaola(考拉)を買収したことでシェアを拡大しました。

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「化粧品、美容関連製品」がトップとなった要因としては、日本の商品は安心して使用できると感じている人が多いことが挙げられます。日本の化粧品は厳しい基準のもと製造されており、アレルギーを持つ人や敏感肌向けの商品が多いことがその理由ということです。

中国の消費者が越境ECで購入している商品

▲[中国の消費者が越境ECで購入している商品]:令和元年度 電子商取引に関する市場調査

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中国の越境ECユーザーが事業者に改善を望むこと:商品やサービスの質

市場規模が拡大傾向にある中国の越境EC市場ですが、改善すべき点もあるようです。

中国の消費者が越境EC事業者に改善を望むことに関するアンケートでは、「真正商品であることの保証(55.7%)」「より多様な商品(51.9%)」「アフターサービスの改善(37.4%)」「商品の品質改善(36.6%)」「購入プロセスの簡略化(33.6%)」などが上位になりました。

ここから、中国の越境ECでは特に商品やサービスの質の向上が求められていることがわかります。

中国の消費者が越境EC事業者に改善を望むこと
▲[中国の消費者が越境EC事業者に改善を望むこと]:令和元年度 電子商取引に関する市場調査

中国の越境EC市場が重要である理由:インバウンドとの密接な関係

中国の越境EC市場の重要性はその市場規模から明らかですが、インバウンド需要喚起の面でも、中国の越境EC市場は重要な役割を持っています。

日本貿易振興機構(JETRO)により実施された訪日経験のある中国人消費者へのアンケート調査では、「なぜ越境ECを使って日本の商品を購入したか」という質問に対し、「日本に旅行をしたときに購入して気に入った製品だから」と答えた人が、2017年の調査では約4割、2018年の調査では約2割を占めました。

訪日中国人観光客が旅行の際に実際に自身で商品を体験することでその商品への信頼性や信憑性が高まり、その後のリピートへとつながっていく傾向があります。

また、旅マエ越境ECを通して購入した商品を旅ナカ(訪日中)で再購入したり、旅ナカで購入した商品を旅アト(帰国後)に越境ECで再購入するなど、越境ECでの消費を通じて訪日が促進されたり、逆に訪日により越境ECでの消費が喚起されたりすることもあります。

このように、中国人観光客の訪日と越境EC利用には密接な関係があります。新型コロナウイルスの影響で訪日が難しい現状でも越境ECを通じて中国人にアプローチしていくことで、収束後の訪日につなげることも可能であるといえるでしょう。

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1つ目は中国の電子商取引法です。電子商取引法は中国の電子商取引の規範の制定や消費者保護を目的として2019年1月1日に施行されたものです。

この法律によってソーシャルバイヤーの取り締まりが厳重化され、個人・法人問わずに海外代行販売をする場合は営業許可の取得が必須となるなどの規定ができました。一方、一部では専門家によって内容の不明瞭な点や課題も指摘されています。

2つ目はミニプログラムです。ミニプログラムとは、アプリの中で動作するインストール不要のプログラムです。インストール不要であるため、端末データの容量を気にせず利用できるのが利点です。

その中でもテンセント(騰訊)のWeChatミニプログラム(微信小程序)が注目されており、WeChatのアプリ内で配車の呼び出しやEC、シェア自転車、ゲームなどができます。

3つ目はインフルエンサーです。中国では、KOL(Key Opinion Leader)という、SNS上で多くのフォロワーを持つ特定の分野の専門家が注目されています。

専門性が高いため、消費者側からは商品に関しての知識や情報が豊富なKOLのレビューには信憑性があると考えられており、企業側にもKOLを起用するメリットがあります。2018年時点で、KOL経由でのEC市場規模は約1,000億元(約1兆7,000億円)といわれています。

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そのような状況下で、出かけずとも商品を購入できるEC市場の需要はますます拡大しています。世界のEC市場に目を向け動向を把握しておくことで新たな需要を見つけ、事業拡大へとつなげていくことができるかもしれません。

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<参照>

経済産業省:令和元年度 電子商取引に関する市場調査

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

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