東京五輪開催まで残り8か月、これから準備すべきインバウンド対策とは?

公開日:2020年10月30日

新型コロナウイルスの世界的流行の影響を受け、2020年開催予定だった東京オリンピックが延期され、2021年7月23日に開幕する予定となりました。

世界全体ではいまだ収束の見通しが立たない状況にありますが、政府や大会組織委員会は東京オリンピック開催の意義を果たすべく、感染対策との両立を図りながら動き出しています。

そこで今回の記事は、来年東京オリンピックが実現した場合に備えて、インバウンド事業者がこれから着手しておくべきインバウンド対策を紹介します。

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東京五輪「コロナに打ち勝った証に」

菅首相は10月23日、就任後初めて開かれた東京オリンピック・パラリンピック競技大会推進本部の会合で、「東京オリンピックを人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として開催し、東日本大震災の被災地が復興を成し遂げた姿を世界に向けて発信する場にしたい」と、東京オリンピック開催に対し強い決意を示しました。

26日の所信表明演説でも、菅首相は東京オリンピック開催への決意を改めて表明しました。

また、開催する上で重要な課題である「大会の簡素化」「新型コロナウイルス対策」の検討も進めています。

大会の簡素化については、大会組織委員会は7日に競技会場・選手村の装飾の見直しや選手を除く大会関係者の人数削減、聖火リレーの実施方法の見直しなど52項目を公表し、IOCに提示しました。今後も引き続き見直し計画を進めるとしています。

新型コロナウイルス対策については、選手の新型コロナウイルス対策を一元的に担う「感染症対策センター」が新設されることが決まり、訪日外国人観光客向けの「発熱健康相談サポートセンター(仮称)」の設置も検討されています。

以上のことから、東京オリンピック開催に向けて、政府と大会関係者が着実に準備を進めているといえます。

開催シーズンにおける訪日外国人観光客の客足の回復を見据えて、インバウンド事業はが今からどういう対策を打っていくべきでしょうか。

開催に向けて、インバウンド事業者が準備すべき5つのこと

ここでは東京オリンピック開催に向けて、これから必要なインバウンド対策として、以下5つを紹介します。

1. SNSによる情報発信

渡航制限の解除後、外国人に日本を旅行の目的地に選択されるために、どこの国に行くかを検討している「プレ旅マエ段階」である今、継続した情報発信が大切です。

SNSは、旅マエの情報収集の際によく利用される手段です。そのためSNSで地域の観光資源や自社の商品・サービスの魅力を発信することが重要です。

SNSの活用を通して、訪日を考えている外国人に認知してもらい、ファンになってもらうことで、新型コロナウイルス収束後のインバウンド客のスムーズな回復につなげられるでしょう。

また外国人の新型コロナウイルス感染への不安を払拭するために、地域で行われている「安心・安全」を確保するための取り組みを積極的に発信する必要があるでしょう。

ここで注意すべきなのは、国によって使用するSNSのプラットフォームは異なり、興味・関心をもつことも異なります。

ターゲットとする国の人々の心を掴み、効果的に魅力を伝えるために、その国のSNS事情や訪日ニーズ、消費動向などの情報を把握しなければなりません。

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2. ターゲットとする国の調査・リサーチ

前述したSNS運用はもちろん、それ以外にも、観光コンテンツの開発や磨き上げ、商品ラインナップの検討など、あらゆるインバウンド対策を検討する上でターゲット国に対する理解を深めることは必要不可欠です。

そのため、インバウンド向けの施策に取り掛かる前に、ターゲット国のデータを収集・分析することが重要となります。

インバウンドにかかわるデータの代表的なものとして、観光庁訪日外国人消費動向調査やJNTOの訪日外客数統計を押さえる必要があるでしょう。

これらのデータを通して、訪日外国人観光客全体と国別の市場規模や消費傾向などの全体像を掴めます。

ただし、より具体的な施策に落とし込むために、「なぜその行動を取ったのか」「商品やサービスについてどう思っているのか」などのより具体的なデータや、定性的なデータが必要になることもあります。

こういった情報を集めるには、Webアンケートや街頭調査、グループインタビュー、ソーシャルリスニング、現地調査などが必要です。こういった調査により、ターゲットとする訪日外国人観光客の行動原理や購買心理を分析し、そこから得た知見を次なるインバウンド施策の打ち手に活用できるでしょう。

コロナ禍では特に、人々の消費全般や旅行に対する考え方は大きく変わっています。ターゲットとしている国・地域の現地調査などを行い、その変化を読み取ることも選択肢の一つです。

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3. 多言語対応

多言語対応は、訪日外国人観光客を呼び込むために重要な対策として考えられています。

日本の各地では多言語対応を進めていますが、十分とはいえない状況にあります。

観光庁の2019年に発表した「『訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート』結果」では、旅行中の困りごととして、「施設等のスタッフとのコミュニケーションがとれない」「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」の回答率が年々減少したものの、依然として上位を占めています。

▲[訪日外国人が旅行中に困ったこと 3か年比較]:観光庁「『訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート』結果」より
▲[訪日外国人が旅行中に困ったこと 3か年比較]:観光庁「『訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート』結果」より

では、訪日外国人観光客が「どこ」で言語に不満を感じるのでしょうか。

観光庁が2018年に発表した「『訪日外国人旅行者の受入環境整備における国内の多言語対応に関するアンケート』結果」によると、訪日外国人は主に「飲食店で注文する際」や「駅から目的地までの行き方を特定する際」、「観光施設の説明を読む際」といった商品やサービス、案内の内容を理解する時に不便さを感じることが多いようです。

▲[多言語表示・コミュニケーションで困った場面調査結果]:観光庁「『訪日外国人旅行者の受入環境整備における国内の多言語対応に関するアンケート』結果」
▲[多言語表示・コミュニケーションで困った場面調査結果]:観光庁「『訪日外国人旅行者の受入環境整備における国内の多言語対応に関するアンケート』結果」

このような訪日外国人観光客の言語に対する不便さを解消するために、以下の方法が考えられます。

  • 多言語に対応できるスタッフの採用
  • 公式サイトやSNS、パンフレット、施設の案内表示、メニューなどの多言語化
  • 音声翻訳ツールや多言語案内サービスなどの導入

またどの言語から多言語化対応を進めるべきかについては、言語の使用人口と国別の訪日来客数から考えると、まずは世界の共通言語である「英語」と訪日外国人観光客数の半分以上を占める中国、台湾、香港など中華圏が使用する「中国語(簡体字・繁体字)」から始めるのが得策といえます。

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4. キャッシュレス決済の導入

キャッシュレス決済とは、現金を使わずに支払う方法のことを指しており、大きく「IC電子マネー」、「クレジットカード」、「QRコード決済」の3種類にわけられます。

近年、日本でも広がりつつありますが、訪日外国人観光客の母国の多くではキャッシュレス決済がすでに主流となっています。

野村総合研究所の「キャッシュレス化推進に向けた国内外の現状認識」によれば、世界で最もキャッシュレス化が進んでいる国は韓国であり、2016年のキャッシュレス比率は96.4%に達したとされています。

欧米豪諸国のキャッシュレス比率も高く平均で50%を超えています。

日本でもよく見かける「AliPay支付宝)」や「WeChat Pay(微信支付)」が生まれた中国でも、同じくキャッシュレス化が加速しています。

中国人民銀行が発表した「中国金融包摂指標分析報告(2019)」によると、キャッシュレス 決済を利用した成人は全国で85.37%にのぼったという結果が出ています。

また、中国の場合は他国への現金持ち出しを制限しており、1万ドル(約100万円)を超える現金の持ち出しは原則禁止されているほか、5,000ドル(約52万円)を超えると税関での申告が必要です。

こうした規定により、キャッシュレス決済が利用可能な店は訪日中国人観光客に選ばれやすく、その結果売上の増加につながるといえるでしょう。

また、買い物時の店員との接触が減ることから、キャッシュレス決済は新型コロナウイルス対策の一つとして注目されており、今後世界でさらに浸透していくこと予想されます。

上記を踏まえると、キャッシュレス決済は、訪日外国人観光客に利便性をもたらすだけでなく、消費の促進安心・安全イメージの造成といったメリットもあるため、インバウンドを推進する上で重要なポイントです。

なお、キャッシュレス決済と一言で言ってもサービスは多様であるため、インバウンド事業者は各サービスを比較し、ターゲットとする国の利用習慣に合わせて検討する必要があります。

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5. 災害時対応

日本は地震、台風など災害が多発する国であり、また来夏のオリンピック開催時には新型コロナウイルスはもちろん、熱中症にも警戒する必要があります。

例えば交通機関や商業施設、宿泊施設など観光客が集中したり滞在したりする業種は、こうした事態への対応策を用意しておくべきでしょう。

災害時への対応と備えはそれ自体が直接的な利益にはつながりませんが、万が一の時に訪日外国人観光客の命を守ることはもちろん、安心感を与えることもできます。

適切な対応を受けた訪日外国人観光客からすると、観光地や店舗に対する好感度が高まり、さらに彼らの口コミが広まると、最終的にリピーターの造成や新規顧客の開拓につながるかもしれません。

インバウンド向けの災害時対応を進める上で、2つのポイントがあります。

一番大切なのはまず、目の前の訪日外国人観光客の安全を確保することです。そのために各施設では、災害発生時に現状を伝え、何をすべきか伝えるのが最優先です。

観光庁や各自治体が発表したインバウンド向けのマニュアルを参考にし、災害時の避難場所や注意事項などの多言語案内や、実際発生時のアナウンス文例などを事前に準備しておくと、訪日外国人観光客への対応がスムーズになるでしょう。

2つ目は、施設で非常用電源や備蓄食品、飲料水を確保しておくことです。

大規模災害の発生に備えて、発電機、食品、飲料水、ヘルメット、常備薬などの防災グッズを備蓄しておきましょう。

特に電力の確保が非常に大事です。

サーベイリサーチセンターの2018年大阪府北部地震時の訪日外国人観光客の行動調査によれば、地震がおさまった後、5割前後の訪日外国人観光客がインターネットやSNSで情報収集や安否確認を行っていたことがわかります。

訪日外国人観光客のスムーズな情報収集と観光地の有効な情報発信を確保できるよう、充電環境の整えも行う必要があるでしょう。

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五輪開催時のインバウンド対策に備え

安心・安全な東京オリンピックを実現するために、政府などの大会関係者が大会簡素化や新型コロナウイルス対策などの動きを推進しています。

開催時の訪日外国人観光客を取り込むために、ここから進めるべき5つのインバウンド対策が考えられます。

まず、外国人に旅行先に選ばれるために、SNSによる情報発信で継続した動機付けが不可欠です。

次に、ターゲットとする国の需要や最新動向を調査・リサーチし、適切なプロモーション戦略や旅行商品の造成に活かします。

そして、訪日外国人観光客が旅先で不便さを感じず観光を楽しめるように、英語、中国語などに対応できる表示やコミュニケーションなどの多言語対応が求められています。

さらに、施設・店舗にキャッシュレス決済を導入し、訪日外国人観光客の買い物時の利便性をより高め、売上の向上に結びつきます。

最後に、地震や台風などの災害が発生した場合を想定し、訪日外国人観光客の命を守る災害時対応にも備えておくことが大切です。

再びインバウンド需要が高まる東京オリンピックに向けて、いま一度インバウンド対策を再考・改善する必要があるでしょう。

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<参考資料>

観光庁「訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート」結果

観光庁「訪日外国人旅行者の受入環境整備における国内の多言語対応に関するアンケート」結果

・野村総合研究所:キャッシュレス化推進に向けた国内外の現状認識

・サーベイリサーチセンター:大阪府北部地震における訪日外国人旅行者の避難行動に関する調査

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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