青森県が外国人訪問率35位から快進撃「体験ツアー×アジア」がインバウンド誘客を成功にみちびく

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地方都市である青森県では、戦略的なインバウンド対策を行ったことにより、訪日外国人観光客が増加傾向にあります。

青森県のインバウンド事例を元に、地方都市のインバウンド対策について考察します。

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青森県で行われているインバウンド事例

青森は日本の中でも突出した知名度を誇る地方都市ではありませんでした。しかし、青森ならではのコンテンツを国外にアピールすることにより集客に成功しました。

元々伝統文化、ウィンタースポーツ、田んぼアートなどの独自性が好評だったことに加えて、海外旅行エージェエントとネットワークを構築したことにより、国外へ観光コンテンツを周知させることに成功しました。

青森でしか体験できないツアーモデルコースを個人・団体双方へアピールするとともに、アジアとの定期航空便の増便、さらには北海道新幹線の開業訪日外国人観光客の誘致を後押ししています。

ねぶた小屋ガイドツアーとハネト体験

訪日外国人観光客の誘致に当たって、青森が始めたのは地域観光資源の掘り起こし商品化でした。

青森県が主体となって地元の特産品を扱っている中小企業を「地域資源活用事業計画」に織り込むことによって、農林水産物から観光資源にまでスポットを当てたのです。

このような公民一体となった事業の中でもひときわ注目を集めたのが、「ねぶた小屋ガイドツアー」「ハネト体験」でした。

「ねぶた小屋ガイドツアー」には毎年春から夏にかけて大型ねぶたの制作小屋が立ち並ぶ青い海公園にガイドとともに訪れることができ、その制作過程を垣間見ることができます。

記念撮影を行え、ガイドの解説を聞くことで一層ねぶた祭りへの思い入れを深めるという狙いがあります。

ハネトは跳人と書き、ねぶたの周りで跳ねる人のことです。参加者は実際の祭りの場で跳ねる役割を果たします。ハネト体験は、ねぶた祭りを「見る」ものではなく「体験する」ものへと変化させます。

こうした「宿泊体験型ツアー」を訪日外国人観光客に提案することによって、日帰りではなく、滞在しならが青森の魅力を知るインバウンド誘致に成功しました。

滞在促進宿泊型施設魅力向上対策事業にも力を入れ、訪日外国人観光客にとって安心・安全・快適な滞在ができることもツアー成功の要因となっています。

青函圏周遊ぐっとくる旅

訪日外国人観光客の動線を考えた時に、青森の課題となっていたのは周遊ツアーに人を導くことの難しさでした。

これを解消したのが北海道新幹線の開業であり、「青函圏周遊ぐっとくる旅」です。

これは青森市、弘前市、八戸市、函館市の4市が連携した取り組みであり、4つの街の特色をツアーで楽しんでもらうコンテンツです。

「立体観光」と呼ばれ、各都市で独自の観光資源を打ち出し、なおかつガイドブックを作成したことで4都市を巡る周遊モデルコースを提示しています。

季節によって見所が変わる他、プロモーション動画で擬似的なツアー体験ができることも話題を呼んでいます。

景観・歴史・グルメ・郷土にスポットを分けることによって、明確なツアー目的を探ることができ、2次交通のパッケージプランを用意して移動の負担を軽減したことで4都市を巡る旅行がより身近なものになっています。

台湾で視聴率No.1ドラマとコラボ

日本でロケ地になった映画やドラマが海外で話題になり、「聖地巡礼」と称して訪日外国人観光客がやってくるのが通常の流れですが、青森では台湾連続テレビドラマ「嫁妝(ジャージュアン)」のロケ誘致を主体的に行いました。

ゴールデンタイムで放送されているこのドラマは台湾のテレビドラマ部門の視聴率が1位であり、青森県の物産の認知度を向上する狙いがあったといいます。

「主人公とヒロインがかつて青森を訪れたことがある」というオリジナルストーリを盛り込むことによって、ドラマのストーリーに大きく関わるインパクトを残し、ロケ地となったりんご畑と自ら出演を果たした青森県知事は台湾で話題となりました。

青森県の観光の現状と課題

訪問率だけで見ると、わずか0.6%と青森への訪日外国人観光客数は決して多くないようです。

ただし宿泊者数は激増しており、前述したような「宿泊型体験ツアー」が功を奏した結果であり、地方観光都市の誘致に先駆けた観光パッケージは他県にも転用できることを示しています。

インバウンド需要

訪問者数は185,716人と全国で第35位に位置しています。宿泊者数も349,050人泊であり全国第29位、決して高い数字とはいえません。

また平均宿泊日数は5.1日であり、全国平均の9.1日と比べてもそれほど高いわけではありません。

注目すべきは消費金額であり、青森でもっとも訪日外国人観光客がお金を費やしているのが「宿泊費」です。

交通費や土産代といった観光消費に伸び率が見られない中で、宿泊費に関しては2013年の47,432円から2017年の5万9,580円と、単価が1万円以上もアップしています。

滞在促進宿泊型施設魅力向上対策事業への取り組みが、成果をあげていることを示すデータになっています。

インバウンド対応の課題

訪日外国人観光客の数が急増している青森ですが、実はその対応状況は決して芳しいものではありません。

外国人の半数が情報を得るためにもっとも使用頻度の高いJapan.Free Wi-Fi登録施設は1,121施設であり、全国第41位、目的の場所にたどり着いたとしても、外国人観光案内所設置数は11施設しかなく、これも全国では下から5番目の低い数字です。

施設内案内表示の英語化率に至っては50%-75%で、おもてなし認証規格登録事業者の数は161件、全国第40位となり、ショッピングにおいても免税店の数は216店舗で、全国第37位という改善すべき課題が見えてきます。

日本銀行青森支店がまとめた「県内における訪日外国人観光客の取り込みに向けての現状と課題」によると、訪日外国人観光客の増加理由は空港のチャーター便が就航したことがもっとも大きく、多言語対応や外国語パンフレット、スタッフ雇用は誘致理由につながっていないのが現状です。

このため、インバウンド対応に積極的な施設とそうでない施設との間には訪日外国人観光客増加率に大きな差があり、観光業を青森県の基幹産業とするためには地域全体での取り組みが不可欠になりそうです。

青森県のインバウンド需要

青森県は他の東北地方各県と同様、訪日外国人訪問率、訪問数、インバウンド宿泊人泊数など前提的に伸び悩んでいる数値が多く、インバウンド需要においては課題が多いと言えます。

青森にも多く訪れている訪日外国人旅行者の国籍別特徴

青森県の訪日外国人の特徴として、台湾、中国、韓国、香港と隣国のアジア圏が多いことです。

2019年7月に就航し、週2便だったエバー航空(台湾)青森―台北線は、2019年11月2日から、週5便に増便されました。

青森―ソウル線の搭乗率が落ち込む中、台北線は高水準を維持しておりインバウンド誘致の期待が高まります。

青森県に訪日する外国人の全体的な特徴について紹介します。

台湾の旅行者の特徴

情報を仕入れる速さは日本人と変わらず、日本のブームや流行にアンテナを張っているため、それを目的として訪日する人も少なくありません。

20~30代が60%以上を占めていることもその理由の1つでしょう。

リピート率も約82%と高く、世界でも有数の親日家であることが訪日旅行の人気に拍車をかけています。

生活習慣や性格の面でも日本に近いことから親近感を持っていることも安定的に日本を訪れるきっかけになっています。

4~7月までに日本を訪れる人が多く、滞在日数は4~6日間となっています。

1人あたりの消費額は約6万円と訪日外国人観光客の中では第2位となっています。

中国の旅行者の特徴

買い物に費やす金額が群を抜いて高く、2位の台湾に2倍近い差をつけています。

ショッピングの内訳は化粧品、医薬品、スナック菓子といった日用品が多く見られ、リピート率が46%と非常に低いのも特徴の1つです。

滞在平均日数と年齢層は台湾とほぼ変わりませんが、女性が60%以上を占めていることが影響しているのでしょう。

年々観光客の数は増えているものの、一時の「爆買いブーム」は去り、日本の伝統文化を体験するツアーや個人旅行に興味が移ってきているようです。

親日家としてのランキングは圏外になっており、情報収集にはネット上の口コミやガイドブックが用いられています。

韓国の旅行者の特徴

長期滞在者が極端に少なく、約73%がリピーターなのが訪日韓国の特徴です。

利用者No.1の検索エンジン「NAVER」を使用して情報収集する人が多く、マップサービスもGoogleではなく「NAVER地図」を用いて目的地を探します。

2018年には735万人を超える人が訪れ、2014年と比較すると約2.7倍もの韓国人が日本を訪れました。

しかし政治的関係が悪化したために2019年の1~7月までの訪日韓国人の数は約20万人も減少し、韓国最大手の旅行会社「ハナツアー」によれば8月の日本旅行販売数は前年比の80%減少したとされています。

ハイシーズンは1月であり、消費額は台湾に注ぐ第3位につけているものの、今後はこういった数字にも影響を与えていきそうです。

青森の観光資源を有効活用し、効果的な施策を

インバウンド対策に積極的であり、交通機関が発達したことで訪日外国人観光客が増えたことをご紹介しました。

しかし、未だに受け入れ態勢が整っていない施設も多く、満足度に関してはまだまだ改善の余地があることがわかります。

訪日外国人観光客の60%以上がリピーターであることを考えれば、満足のいくおもてなしや対応を行っていくことでさらなるインバウンド消費を呼び込むことができるでしょう。

地域同時の観光資源を掘り起こしたことと、公民一体となったアピールが成功に結びついたからには、受け皿となる各施設が対応力を高めていくことが効率的な施策につながりそうです。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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