2025年4月から開催される「大阪・関西万博」まで、あと3か月となりました。万博には国内外から多くの観光客が来場することが見込まれており、インバウンド業界にとっても非常に重要なイベントとなります。
今回はインバウンドや観光に関連するものを中心に、大阪・関西万博に関するデータや、過去に日本で開催された国際イベントにおけるインバウンドへの影響などをまとめます。万博開催期間の動向や、その後の影響を見通すにあたり、参考になれば幸いです。
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万博の開催期間は?
大阪・関西万博の開催期間は、2025年4月13日(日)~10月13日(月)の184日間です。
約半年間、大阪市の人工島「夢洲(ゆめしま)」にて開催され、会期中は国内外から多くの来場客が来ると予想されます。
万博の来場者数は?
大阪・関西万博の来場者数は、約2,820万人と予想されています。そのうち海外からの来場者は約350万人で、全体の12%を占めます。
これは通常の訪日客数と比較してどの程度の規模なのでしょうか。大阪観光局の試算によると、2024年に大阪を訪れる外国人観光客数は1,400万人になる見通し。2019年の観光客数を14%上回り、過去最高を更新する見込みとなっています。
つまり月間でいうと約120万人が大阪を訪れている中で、万博効果で平均約50万人が上乗せされることになります。これまで以上に交通機関や観光地の混雑が予想されるため、鉄道の増発やライドシェアの規制緩和など、受け入れに向けた対策が急ピッチで進められています。
関連記事:大阪万博の来場者数は?海外からは「350万人」と予想、残された課題と対策とは
万博の経済効果は?
一般財団法人 アジア太平洋研究所(APIR)の試算によると、万博の開催場所である夢洲会場のみの経済波及効果は、2兆7,457億円になると試算されています。これに加えて万博や周辺のイベントにより宿泊数が増加すると想定した場合、経済波及効果は3兆2,384億円になると見込んでいます。さらに、日帰り客の増加を加えた経済波及効果は、3兆3,667億円と予測されます。
経済波及効果は関西地域以外にも
続いて、JTB総合研究所が試算した、大阪・関⻄万博に来場する訪日外国人が「万博以外の観光により周辺地域にどの程度の経済効果をもたらすのか」のデータによると、各都道府県の生産誘発額の合計は約3,598.9億円、通常時の観光消費額に対する経済波及効果倍率は約1.30倍と推計されています。
関西地域だけでなく、東京、愛知、静岡、山梨、神奈川などにも波及効果があると考えられています。
関連記事:大阪万博の経済効果は?「3兆円超」の試算も IR(統合型リゾート)は「毎年1兆円超」
訪日意向者の72%「大阪万博に行ってみたい」
(株)日本政策投資銀行と(公財)日本交通公社が発表した「アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査 2024年度版」によると、認知率は訪日意向者全体の50%にとどまるものの、72%が大阪・関西万博に行ってみたいと回答しています。
「訪日する際に万博がやっているなら(ついでに)行ってみたい」と考える人が多いようです。
関連記事:訪日意向者の72%「大阪万博に行ってみたい」 万博きっかけの訪日旅行にも期待【(株)日本政策投資銀行・(公財)日本交通公社】
万博の最新動向
交通機関の対応やパビリオン・イベント情報など、最新の動向をまとめます。
交通機関の増発や移動手段の確保に向けた対策実施
大阪万博の開催地である夢洲は四方を海で囲まれた会場となっており、来場者の輸送を円滑にする対策が必要となります。
「大阪・関西万博来場者輸送具体方針(アクションプラン)第4版(以下、アクションプラン)」では、輸送手段の拡大やシャトルバスの運行、駐車場対策を講じるとしています。具体的には、自家用車で来場する人向けに、駐車場の利用料金にダイナミックプライシング(変動料金制)を導入するほか、シャトルバスのバスターミナル周辺では、駐車場の事前予約システムを導入する予定となっています。
ライドシェア、24時間利用可能に
さらに万博開催期間中、日本版ライドシェアの運行エリアが大阪府全域に拡大されます。
来場者などの移動需要の高まりが見込まれることから、大阪府全域で24時間運行されます。タクシーとライドシェアの相互連携により、来訪者や住民の移動の足を確保します。
関連記事:万博期間のライドシェア、大阪府全域で24時間可能に
JR西日本、JR東海で在来線、新幹線の増発
JR西日本は、万博に向けたアクセス強化として、新大阪駅から桜島駅まで直通する「エキスポライナー」を設定し、桜島駅から会場まではシャトルバスが運行されます。大阪環状線では朝と夜、JRゆめ咲線では夜、阪和線では朝に増発し、万博アクセスに便利な列車を増発します。山陽新幹線では、新大阪駅に9時台に到着する鹿児島中央駅始発の臨時「さくら」を増設します。これにより、鹿児島中央駅発の列車で初めて、新大阪駅に9時台に到着できるようになります。
JR東海では、万博期間中の週末等に6時台東京発・新大阪行きの「のぞみ」を増発し、1日最大14本運転します。また、下りの最終時間帯の利用が多い日には、東京発・新大阪行の臨時「のぞみ」を1本増発します。利用者の多い時間帯に、山陽新幹線へ直通する臨時「のぞみ」を1時間当たり1本増やし、1日最大8本運転され、19時発の新大阪行定期「のぞみ」を、利用が多い日には博多行臨時「のぞみ」として運転するとしています。
さらに「のぞみ」の普通車指定席を拡大するなど、列車内の環境整備も進めていきます。
1月19日には、大阪メトロ中央線の夢洲駅が開業し、万博会場の最寄り駅となります。ピーク時には1日26万人が利用すると想定されており、アクセス面での利便性が期待できます。
その他の在来線でも万博開催に向けて、増便やシャトルバスの運行などの対策が行われる予定です。
各国のパビリオン情報
万博では、全161か国、9つの国際機関からの参加が予定されています。そのうち、独自のパビリオンを設けるのは52か国となっています。
メイン会場となる「大屋根リング」の内側は「コネクティングゾーン」「セービングゾーン」「エンパワーリングゾーン」の3つのテーマに分けられています。「コネクティングゾーン」には韓国、ドイツ、エジプトなど、「セービングゾーン」にはオランダ、イタリアなど、「エンパワーリングゾーン」には中国、アメリカ、カタールなどが配置されます。
日本からは、日本の先端技術などの取り組みを発信する「日本館」、滋賀、京都、兵庫などの9府県が出展し、観光などを発信する「関西パビリオン」のほか、13もの民間パビリオンが設けられます。
各パビリオンの詳細については、万博の公式サイトをご覧ください。
開催期間中のイベント情報
万博開催期間中、万博に公式参加する国・地域や国際機関の「公式参加者」が1日ずつナショナルデー(国・地域)またはスペシャルデー(国際機関)を開催します。
公式参加者の文化に対する理解を深め、国際親善の増進に寄与することを目的とし、当日は国内外の賓客や一般の来場者を招いて行う式典と文化イベントが行われる予定です。
詳細は大阪・関西万博イベント情報についてをご確認ください。
万博まで3か月、観光業の課題は
大阪・関西万博の開催まであと3か月に迫り、着々と準備が進められている一方で、その恩恵を受ける観光業にも課題が残されています。
1. 関連産業での人手不足
観光客の増加が見込まれる中で、宿泊施設や外食産業などでは人手不足が深刻となっています。
特に来場者の移動手段であるバスやタクシーの運転手不足が深刻となっていて、来場者の輸送に大きな影響が考えられます。開催期間中に増便が予定されている企業では、運転手の確保が急務となっており、先述したような公共交通の増発や、ライドシェアの規制緩和などの対策が取られています。
2. 宿泊施設の不足・価格高騰
すでに宿泊施設の供給不足や価格高騰の問題が起こっていますが、今後、さらに深刻化していくと考えられます。インバウンド客、主に富裕層向けのホテルの開業も相次ぎ、開催に向けて今後も予定されていることから、さらなる価格上昇が進むと予想されます。
そうなると大阪以外の宿泊施設に泊まる来場客も出てくるため、周辺地域の宿泊施設や民泊などにも集客のチャンスがあるといえます。該当する施設の方は、万博会場からどの程度の距離があるのかなどを発信しておくと良いでしょう。
過去の国際イベントによるインバウンドへの影響
最後に、これまでに日本で開催された国際イベントで、インバウンドの影響はどれほどあったのかを解説します。
1. 大阪万博(1970年開催)
1970年に開催された大阪万博では、77か国、4つの国際機関などが参加し、総来場者数は約6,421万人で、当時の過去最多の来場者数を記録しました。総来場者のうち、外国人は約170万人で全体の2.6%でした。海外旅行が一般的ではない時代でしたが、多くの外国人が参加したことがわかっています。
また、1970年の訪日外国人旅行者数は約85万人でした。東京オリンピックが開催された1964年は約35万人、万博が開催される前年の1969年には約60万人であったことから、万博時に多くの人が日本を訪れたことが分かります。
<参照>
- 第三節 日本万博博覧会
- 日本政府観光局(JNTO):訪日外客統計
2. 愛知万博(2005年開催)
2005年に愛知県で開催された「愛・地球博」。総来場者は約2,205万人で、そのうち訪日観光客は86.8万人と推計されています。国別の来場者の割合は、台湾(21.8%)、韓国(15.2%)、中国(12.0%)、アメリカ(11.8%)でした。
名古屋空港及び中部国際空港の外国人入国者数を見ると、万博開催期間中(3〜8月)は前年同期比で63.5%増加しました。また、愛知、岐阜、三重の3県における外国人宿泊者数も前年同期比35%増加となりました。
<参照>
- 愛・地球博:外国人入場者の調査結果
- 国土交通省:愛・地球博をめぐる交通・観光の動向
3. ラグビーW杯
1970年の大阪万博や2005年の愛知万博は、まだ日本全体のインバウンド誘致が本格的に始まっていなかったタイミングの開催でした。すでに訪日客が多く来ている2025年の万博期間には、ここまでの増加率にならないと考えられます。
そこで、2019年のラグビーW杯であれば現在の市況感とも近いため、こちらのデータも振り返っていきましょう。
2019年に開催されたラグビーワールドカップ日本大会では、チケット完売率99%で過去最高を記録し、経済波及効果も過去最高の6,464億円でした。そのうち、訪日客が消費した額は、3,482億円で経済波及効果全体の約54%を占めており、訪日客の影響力がうかがえます。
訪日客数は約24万2,000人。その内訳は欧州54%、オセアニア22%、アジア9%、北米7%で、ラグビーが人気の高いヨーロッパからの訪日客が多くなりました。訪日客の平均宿泊数は16泊と、複数試合見に行くことが関係して、2018年の平均泊数6泊を大きく上回る結果となりました。これにより、一人当たりの消費金額も前年(2018年)と比較して、4.6倍に増加しました。
関連記事:【ラグビーW杯】経済効果6,464億円、うち54%が「インバウンド消費」だったと明らかに:日本ラグビー協会が公式レポートを公表
万博にはどの国・地域の訪日客が来る?
2019年のラグビーW杯では、ラグビー人気の高い欧米を中心として訪日客が増加し、平均泊数や一人当たり消費額が大きくなったことがわかりました。では、今回の大阪・関西万博ではどの国からの観光客が多くなるのでしょうか。
パビリオンには全161か国が参加する予定のため、これまでほとんど訪日していなかった国からも観光客が来る可能性があります。
ただし、JNTOは「アジアでは中国・台湾、欧米豪中東では米国・イタリア・ドイツ・中東地域」を中心にプロモーションを実施するとしており、これらの国・地域からの訪日客が多くなる可能性もありそうです。
関連記事:JNTOメディアブリーフィング取材:大阪・関西万博 / 高付加価値旅行推進の取り組みについて
以上、大坂・関西万博の最新情報をお届けしました。国内外から多くの観光客が来ることが想定され、経済効果も大きく、インバウンド業界にとっては稼ぎ時となる期間といえそうです。
今回紹介したような過去のデータや今回の予測データをもとに、適切な戦略を取れると良いでしょう。
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