コロナ禍を切り抜けるインバウンド版「事業継続計画(BCP)」ノーリスクではなく影響の最小化が肝:窮地からリカバーした観光地2つの事例

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インバウンド業界にとっても想定外の事態である新型コロナウイルスの感染拡大は、旅行会社や宿泊施設など、多方面で甚大な影響を与えています。こうした不測の事態に備えるために、事業継続計画(BCP)に対応しておくことは、事業の早期復旧を実現する上で非常に重要です。

今回は、BCPの概要をふまえ、インバウンド業界が想定すべき事態や、取るべき対策を解説していきます。

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事業継続計画(BCP)とは?

「事業継続計画(BCP)」とは、企業があらゆる不測の事態に備え、優先度が高い重要な業務から早期に復旧できるように策定しておく計画を指します。

海外で誕生したBCPは、2001年に発生したアメリカ同時多発テロをきっかけに日本へも徐々に浸透していき、2005年頃から推進されはじめました。

BCPには、大規模な自然災害や感染症のパンデミック、業務を停止させる要因となるシステム障害や材料の供給停止などによる被害を前提とした対策が必要となります。

例えば、キャノンシステムアンドサポート株式会社では、地震発生時を想定したBCPを策定しました。BCP発動の基準について、影響が及ぶ範囲をふまえて業務の分類ごとに業務停止の目安を定めているほか、スムーズに対策が進むよう対策本部の指揮系統も明示しています。また、「意思決定・指揮命令体制の整備をする本社機能は12時間以内に復旧」など、重要業務は業務ごとに復旧目標時間を設定しています。

防災計画との違いは?

BCPと似た内容の企業が策定する計画の一つとして、「防災計画」が挙げられます。防災計画とBCPは目的が異なり、防災計画は「人命や資産を守る」こと、BCPは「事業を復旧・再開する」ことを目的としています。

どちらも自然災害や感染症のパンデミックなどによる被害を前提とする一方で、BCPのみ、システム障害や材料の供給停止といった業務を停止させる要因も対策内容に含まれています。

インバウンド業界が準備すべきは?

BCPは、当然ながら業界によって想定しておくべき事態やその際に取れる手段、対策しておくべきことが変わってきます。

インバウンド業界は海外市場が相手となることから、国内の災害や感染症の動向はもちろん、海外の情勢も迅速に把握し対策を講じる必要があります。

今回は、インバウンド業界において想定される、具体的なリスクや、不測の事態に取るべき対応の例を紹介します。

想定されるリスク

自然災害が多い国である日本では、台風や地震などの自然災害はもちろん、今回の新型コロナウイルスのような感染症やそれによる経済危機なども、想定されるリスクといえます。

海外では、大規模なストライキやデモ、紛争、感染症の流行といった人的災害の発生により、訪日旅行が自粛されるリスクも考えられます。

自然災害や感染症の流行などは、自助努力だけで防ぐことが難しいのも事実です。そこで重要なのが、危機的状況の発生自体を防止するよりも、想定されるリスクが発生した場合にどのように観光業への被害や影響を最小化できるか、早期復旧のために何をするべきかを事前に検討しておくことです。

対応事例1. トップ自らが宣伝活動に

新型コロナウイルスが、地域によっては落ち着きを見せつつある中で、中国では新型コロナウイルスの収束後を見据えたライブ配信やショート動画を用いた宿泊施設のプロモーションが注目を集めています。

オンライン旅行代理店大手・Trip.comグループでは、「トップ自らが宣伝活動を行う」ことで、旅先に対する「安心感」を印象付けることに成功しました。

グループの梁建章会長は、中国・海南の5つ星ホテル・アトランティスサンヤでライブ配信を実施し、わずか1時間でおよそ1億5,000万円を売り上げる結果となりました。

新型コロナ感染拡大による長期の外出自粛に伴い、動画コンテンツの鑑賞が増えていたということに加え、外出に向けての意欲が高まっていたことも前提にあるでしょう。

トップ自らの訴求により、視聴者に対し宿泊施設の魅力がより強く映ったという可能性もあるかもしれません。

対応事例2. 危機的状況での対応が、評価を上げる結果に

2004年12月にスマトラ地震・津波発生時には、現地での対応を評価するスウェーデン国王により、同地の評判を高める結果につながっています。

スマトラ地震・津波発生によりタイ屈指のリゾート地であるプーケット島において、ホテルやレストラン、土産店などが被害を受け、多くの北欧や英国からの観光客も被災しました。プーケットの病院ではこうした観光客に対し適切な医療を提供しています。

プーケットの病院で、負傷した自国民が献身的な医療ケアを受けたことを知ったスウェーデンのグスタフ・カール国王は、自らプーケットを訪れ病院や州政府等に感謝の意を表明し、その翌年には病院の1つに自らの名前を冠した国際会議室を贈呈しました。

この出来事は欧州で報道され、プーケットは「高いレベルの医療サービスとホスピタリティのある観光地」として評価を受けたことから、早期に欧州からの観光客を呼び戻すことにつながりました。事業の早期復旧のために人命救助につくしたというわけではありませんが、危機的状況での振る舞いは結果として世間からの評判を高め、事業の回復に結びつく面があります。

「観光危機管理」がその後を左右

災害などの不測の事態が発生した際の観光客への対応は、その観光地や企業の評価を大きく左右するものとなります。

インターネットやSNSを通じたコミュニケーションが活発化する昨今では、災害や事故の被害にあった観光客が、国内外にむけてタイムリーに現場での対応を発信できるようになりました。

危機的状況で観光客が受けた、地域の観光関係者や住民による支援や心遣いは、Twitterやブログなどを通じて瞬く間に広まり、その観光地の評価を高めることに繋がります。一方で対応が十分でなかった場合は、マイナスの評価が拡散されるケースもありうるため、注意が必要です。

観光危機管理を事前に策定しておくことで迅速に対応が可能となり、観光地や施設の評判を高めて早期に観光客を呼び戻し、ピンチをチャンスに変えることができるでしょう。

迅速かつ適切な対応が観光事業の早期復旧の鍵に

不測の事態に備えてBCPを策定し、危機的状況が実際に発生した際に迅速かつ適切な方法で対応することが、事業の早期復旧の鍵になるといえます。

状況に合わせて、商品やサービスの訴求方法を柔軟に変えることも大切です。たとえば今回のコロナ禍における飲食店の場合、外出自粛が続く現状に合わせて、Instagramに新たに追加された料理注文機能を早い段階で活用することは、一つの打開策となるでしょう。

また、事例にとりあげたように、企業や国のトップはそもそも大衆の注目を集める存在です。彼らが訪れる観光地や宿泊施設には自然と注目が集まります。計画的に来訪を実現できるケースとそうでないケースがありますが、機会があればポジティブな面を外部に伝わるようにすることは、自然災害や経済的ダメージを受けた市場の早期回復に良い影響をもたらすと考えられるでしょう。

ビジネスモデルに影響を与えるのは外的要因だけではありません。消費トレンドは常に変化を続けており、技術の進歩でトレンドも瞬く間に変化していきます。インバウンド業界は海外市場を相手にしているため、海外のトレンドや情勢も含め、より幅広い領域の情報にキャッチアップし、またすばやく新たな条件に適合する瞬発力も必要でしょう。

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<参照>

・月刊総務オンライン:事業継続計画(BCP)と防災計画の違い

・JTB総合研究所:BCPとしての観光危機管理(第1回)

・JTB総合研究所:BCPとしての観光危機管理(第3回)

・JTB総合研究所:BCPとしての観光危機管理(第2回)

・キャノンシステムアンドサポート株式会社:BCP策定例 地震発生時

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

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