阪急電鉄、阪神電気鉄道などを中核会社とする純粋持株会社である阪急阪神ホールディングス(以下:阪急阪神HD)は、将来のインバウンド需要の回復を見据え、インバウンド向け沿線観光情報Webサイトをリニューアルし、『Enjoy!OSAKA KYOTO KOBE』を9月に公開しました。
長引くコロナ禍でインバウンド需要は未だ先行きの見通しが不透明な中、サイトリニューアルに踏み切った経緯、新サイトへのこだわりはどのようなものなのでしょうか。
今回阪急阪神HD様と、同社グループ内でインバウンドを含むプロモーションなどを手掛ける阪急阪神マーケティングソリューションズ(以下:阪急阪神MS)様に話を聞きました。
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「Enjoy!OSAKA KYOTO KOBE」とは?
阪急阪神HDはこれまで「大阪・京都・神戸 黄金路線360°(以下:旧サイト)」というインバウンド向け沿線観光情報サイトを運営しており、同エリアを中心とした情報を発信していました。
旧サイトではインバウンド向け企画乗車券のPRや「阪急阪神ウェルカムWi-Fi」「観光案内所」などのサービス情報を提供していました。
そうした中、アフターコロナにおける将来的なインバウンド需要回復を見据え、
2021年9月に「Enjoy!OSAKA KYOTO KOBE(以下:新サイト)」としてサイトをリニューアルしました。
新サイトはスマートフォン(以下、スマホ)での閲覧を全体としたレイアウト設計により、今後のインバウンド回復期のタビナカにおける活用も意識するほか、新たに追加されたタイ語、日本語を含め6言語の多言語に対応するなど、国外・国内に向け情報発信を強化しています。
(「Enjoy!OSAKA KYOTO KOBE」公式サイト)
インバウンドが「ゼロ」になった今こそ、先を見据える
_コロナ禍は続いており、インバウンド需要の復調のタイミングは未だ不透明です。そうした中で、サイトのリニューアルに踏み切った理由を教えてください。
実は、サイトリニューアルについて検討していたのはコロナ以前からでした。
2019年末くらいだったでしょうか、その頃から旧サイトでいくつかの課題を感じており、サイトリニューアルも含めた情報発信のあり方について議論をしている中で、コロナ禍になってしまいました...。
しかし、当社に関しては幸いにもインバウンドや観光関連のチームの人員や予算が大きく削減されることはなく、むしろ、引き続きアフターコロナに向けてやっていくべし、やりたいことがあればチャレンジすべし、というようなチーム方針もあったのでリニューアルを進めることができました。
_コロナ禍でインバウンドがストップしたことによって、こうした予算などは真っ先に削減されてしまうところも珍しくないように思います。そうならなかった理由はなんでしょうか。
例えば、2025年に開催を控える大阪・関西万博(以下、大阪万博)は、当社としても重要なイベントとして位置付けていまして。
大阪万博に限らずアフターコロナを考えた場合、2025年というのは大きなターゲットイヤーであると考えており、そこへの仕込みという点でも引き続きインバウンド対策は重要だと考えています。
また、コロナ禍で世の中のインバウンド関連事業がストップせざるを得ない状況の今だからこそ、しっかりと考えて準備する貴重な時間であるので。コロナ禍になったとはいえ、引き続きインバウンドに向けた施策を打っていこうという雰囲気が社内にありました。
サイトリニューアルにおいてこだわったこと
_今回のサイトリニューアルにともなって、特にこだわったポイントはどこでしょうか。
旧サイトはインバウンドが増えつつあった2012年に制作したこともあり、PCでの閲覧を前提とした設計となっていました。
そこから4、5年で急激にインバウンドが増え、またスマホ利用も増加していた時期だったので、スマホ閲覧向けの設定を加えたり、コンテンツを追加したりと、元々制作したサイトに新たに追加や上書きするような形で開発を進めていたこともあり、結果的にサイト内の回遊性が決して良いとは言えない状況になっていました。
今回はそうしたことから、改めてユーザー目線・外国人目線に立ってサイト内を構成するコンテンツを整理して見直し、サイト内の回遊性を高めるというポイントに注力しました。
またこのサイトのターゲットとして、20~30代のFITが使うことを意識しており、そのターゲットを含め、今やほとんどがスマホを利用した情報収集が主ですし、前述のとおりタビナカでスマホをつかって情報収集をすることも想定して、スマホ閲覧向けの設計になっています。
自動翻訳の導入でタイムリーな情報発信が可能に
WEBサイトに限らずインバウンド向け業務を行う時の課題の一つとして『翻訳』があると思いますが、新サイトには自動翻訳システムを導入しています。
これにより、ある1言語分の原稿を作れば自動で多言語に翻訳されるので、多言語対応のためにそれぞれの言語毎に翻訳する手間やコストを削減することが期待できますし、何より掲載したい情報を瞬時に多言語で展開・提供できるので、例えば『今すぐこの情報を出したい!』場合にタイムリーな情報発信ができるのも強みであると思います。
インバウンドに加え、国内からの誘客も視野に日本語サイトを作成
新サイトはインバウンドをターゲットとしていることは間違いありませんが、今回、新たに日本語サイトも作成しています。
当社グループにおける国内観光については、(旅行事業を除くと)沿線にお住まいの方々に対して沿線へのお出かけを楽しんで頂くことを目的にした案内等を展開していることが多かったのですが、沿線や関西以外にお住まいの方々にも沿線や関西の情報を知っていただき、訪れていただきたいという理由から導入しています。
また旅行需要の回復は、インバウンドの前に国内観光需要が先に回復すると思いますので、国内の方々が旅行先を検討する際の参考にしていただくとともに、関西を訪れて下さる契機になればと考えています。
外国人目線を意識した、コンテンツへのこだわり
サイト名に「阪急阪神」の表記がない理由
_こういった沿線の観光情報を発信するサイトを作る上で、路線のブランドを前面に押し出していく傾向があるように思いますが、そうしなかった理由はありますか?
ありがたいことに、『阪急阪神』のブランドをご信頼下さっている方々がわざわざ当社グループのサービスを選択してご利用いただくことがありますが、インバウンドの方々にとっての『阪急阪神』はブランドではなく、目的地としての『場所・エリア』であることが多いと思っています。
「Enjoy!OSAKA KYOTO KOBE」の名称にもあるように、まずは京阪神を知って頂き、関西を旅していただくことが最終的に沿線を利用していただけることにつながると考えています。
『阪急阪神』はご存じでなくても、結果的に阪急阪神のサービスをご利用いただいているようなことも意図しています。
コンテンツも『阪急阪神』にこだわっていないことで、サイトの幅を広げることが出来たと思っています。
阪急阪神沿線の大阪、京都、神戸、ひいては関西自体の観光情報をご紹介することで観光サイトとしての魅力を高めるとともに、ご紹介している観光地を訪れていただき、その際に阪急阪神の電車、ホテルやショッピングセンターのご利用機会を得る...という形で『結果的に阪急阪神のサービスを利用していた』方々を増やしていくことができればと思っています。
_サイトをリニューアルされて、今後どのような情報を発信していく予定ですか?
少し話がそれますが阪急阪神HDでは多言語SNSも運営していますが、現地のライターを起用したり、ネタ選定で現地からの情報を入れたりしながら、コンテンツの充実を図っています。
例えば、グループで扱っている日本人向けの沿線情報誌には結構ニッチな情報をたくさん載せており、沿線に関する情報を非常に豊富に持っています。
こうした情報を、実際に外国人の方々の反応を見ながら、ニーズとのマッチングを意識して掲載する情報を考えています。
WEBサイトも同様に豊富な情報をもとに、特集記事などを作成して、現地目線・外国人目線で魅力的な情報を発信していく予定です。
モデルコースの紹介から乗車券への購買につなげる
あとはモデルコースに関する記事コンテンツも充実させていきたいですね。
当社グループ内で販売しているインバウンド向け企画乗車券で、様々な観光スポットを巡るモデルコースを提案しています。
これらの記事や紹介をきっかけに、『1枚の企画乗車券でこんなに阪急阪神沿線を楽しめるんだ』と興味をもっていただき、企画乗車券の販売促進につなげたいと考えています。
_コロナ対策に関する情報も今後追加していく予定ですか?
コロナ禍の現在は、実際に旅行や旅行先を検討できないこともあり、海外向けの情報は十分に発信できていなかったかもしれませんが、今後徐々にインバウンド回復の兆しが見えてくると、旅行や旅行先の検討がリアルになってきます。
『安心・安全』というのは重要なテーマなので、今後どう発信すべきかについては課題に思っています。
直近では、感染症予防対応に関係する対訳集をグループ内で共有したり、コロナ禍でも安心して楽しめる梅田や沿線のPR動画を作成したりしていますが、海外旅行がリアルに感じられる時期は間違いなく来ると思っていますので、その到来に備えた対応も考えていきたいですね。
グループ全体のインバウンドを牽引するサイトへ
_最後に、本サイトを今後どのように運営していきたいか、展望を教えてください。
沿線に訪れて下さったインバウンドの方々を受け入れて実際にサービスを提供するのは、鉄道、商業施設やレジャー施設などのグループの各事業部門です。阪急阪神HD:私たちのチームの役割は、グループの各事業部門にインバウンドを誘客するため、『いかにしてインバウンドの方々に沿線にまで来ていただく』ための施策を実施していくことが、大きな役割の一つであると考えています。
こうした役割分担からも、グループの情報を一元的に海外に強力に発信していくことは、私たちのチームの重要なミッションのひとつであると考えており、WEBサイトにおいては、外国人目線での特集記事の制作、広告配信やSEO対策などを通じて絶えずサイトの充実を図りながら、グループにおける海外向け情報発信をけん引していきたいと考えています。
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