東京オリンピックを翌年に控えた2019年の訪日外国人は約3,200万人にのぼると推計されています。訪日外国人市場全体を見渡すと最も存在感を示しているのは中国人観光客ですが、韓国や台湾をはじめとするアジア諸国からも多くの観光客が日本を訪れています。
訪日外国人は年々増加していますが、彼らは何のために日本を訪れ、何にどれくらいの金額を消費しているのでしょうか。
訪日ラボではこれらの項目を可視化するため、2019年の訪日外国人に関するインフォグラフィックを制作しました。東京オリンピックが開催される2020年に向けて押さえておきたい7つの重要数字を詳しく図解します。
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1. 訪問者数:やはり中国が最も多い
2019年の訪日外国人訪問者数の予想を見てみると、最も人数が多いのはやはり中国で約935万人が日本を訪れると予想されています。日本の百貨店や家電量販店にて免税品を大量購入する「爆買い」をする富裕層の中国人も多く見られるため、訪日中国人の生み出す経済効果は莫大であると言えます。
中国以外では、韓国の約640万人、台湾の約484万人などが目立っており、全体的に東アジア・東南アジアなどのアジア圏からの訪日外国人が多く見られます。
これらの国々と日本の間では、多くの格安航空会社(LCC)が就航しています。安価で日本旅行が楽しめることや、国土交通省によるビジット・ジャパン・キャンペーン(Visit JAPAN Campaign)が功を奏し、諸外国の日本文化への関心が高まっていることなどが理由として挙げられます。
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訪日外国人数3,000万人を突破!増加続く理由は「ビザ・LCC・日本ブーム・リピーター化」という4つの背景
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2. 1人あたりの消費額ランキング:欧米豪圏がベスト3
訪問者数ランキングではアジア圏が勝っていましたが、1人あたりの消費額ランキングを見てみるとアジア圏の国はトップ3には入りませんでした。アジア圏から日本へは安価かつ気軽に渡航できるため、消費額も低い傾向にあるようです。
一方、消費額ランキングの上位3位はフランス、イギリスそしてオーストラリアとなりました。ここでは、これらの国々の消費における傾向について解説します。
1人あたりの消費額ランキング1位となったフランスは242,437円、2位のイギリスは237,353円、3位のオーストラリアは233,424円を訪日旅行において消費しています。これらの国に共通する傾向として、宿泊費が全体の4割前後を占めている点が挙げられます。
フランス、イギリスはヨーロッパ、オーストラリアはオセアニアに位置し、各国から日本までの飛行時間は約10〜12時間となっています。そのためアジア諸国のように気軽に日本を訪れることが難しく、訪日旅行の際は7日以上に渡り連泊する傾向にあるため、宿泊費が大きな割合を占めています。
また、一部の訪日中国人による爆買いの傾向は見られるものの、アジア諸国の一人当たり平均消費額はおおむね10万円台であることと比較して、上位3か国はどの国も20万円を超えています。アジア諸国と比較すると、これらの国々からは訪問者数こそ少ないものの、各個人がもたらす経済効果は大きいと言えます。
特に飲食業界・宿泊業界にとっては無視できない数字だと言えるでしょう。
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3. 人気買い物リスト:菓子類が圧倒的な人気の高さ
人気買い物リストでは、69.0%の訪日外国人が菓子類を購入しており、他の項目を大きく引き離す結果となりました。
日本の多種多様かつオリジナリティ溢れる菓子類は訪日外国人にとって魅力的な商品の一つであり、2018年の訪日外国人による消費総額のうち、菓子類への消費額は1,589億円に達しました。
菓子類はスーパーマーケットやコンビニだけでなく、空港の免税店や薬局などの様々な場所で購入できます。そのため、帰国前に小銭を使い切る際や医薬品を購入する際に合わせて菓子類を購入する訪日外国人が多く存在するようです。
また、江崎グリコによる各地の食材を用いた「地元ポッキー」や、森永製菓株式会社による抹茶とあずきをふんだんに使用した「板チョコアイス抹茶あずき」など、菓子メーカー各社も訪日外国人にとって魅力的な商品を多数販売しており、これらの商品の成功も相まって菓子類は高い人気を維持しています。
お菓子のインバウンド消費額は1,589億円!?「外国人観光客×お菓子」の関係を数値から見る
2018年に農林水産省は「訪日外国人客の日本滞在中の旅行消費額」を発表しました。これによると、訪日外国人観光客における旅行消費額がはじめて4兆4,161億円を突破。その内訳を見てみると、買い物代(お土産)がもっとも多い1兆6,398億円と、全体の約40%を占めているのです。そして、その買い物代(お土産)の内約を見ていくと、菓子類だけで1,589億円、その他食料品・飲料・酒・たばこが1,868億円で合わせて前年比19%増の3,456億円となっています。この「菓子類」「その他食料品・飲料・酒・...
4. 宿泊タイプ:意外にも旅館は不人気!?
訪日外国人に人気の宿泊施設を見てみると、洋室中心のホテルが80.7%と圧倒的多数を占めています。和室中心の旅館は16.6%と大きく引き離されており、日本独自の文化である旅館が多くの訪日外国人に利用されていないのは、大きな機会損失であると言えます。
訪日外国人が旅館を避ける理由としては、外国語対応のできる旅館が少ないことや、刺身などの和食を好まない外国人が多く、毎晩豪華な料理が提供される旅館の宿泊プランは外国人にとって必ずしも魅力的にはならないことなどが挙げられます。
旅館を選ぶ日本人は料理や景観、雰囲気などの旅館における体験を重視します。しかし多くの訪日外国人にとってこれらの体験はあまり重要視されないようです。
それよりも食事の選択肢が多く、外国語対応も整っており、慣れたベッドで安価に宿泊できるホテルの方が魅力的なため、圧倒的多数の訪日外国人が宿泊施設としてホテルを選んでいます。
現状に鑑みると、旅館が訪日外国人にとって魅力的な選択肢となるには、いくつかの点において改善が必要です。
外国語対応については、必ずしも外国語の話せる従業員を配置する必要はなく、チャットコンシェルジュや翻訳機の活用などにより低コストで訪日外国人フレンドリーな環境を構築できます。
また、ホームページの多言語化や海外に向けた情報発信も積極的に実施することで、より多くの訪日外国人の目にとまるでしょう。
食事についても、各宿泊客の好みに合わせた食事を提供することで、訪日外国人の宿泊へのハードルを大きく下げられます。魚より肉を好む外国人も多く存在し、中には宗教上の理由で豚肉や牛肉など、一部の食材を食べられない人も存在します。
また、そもそも旅館で食事をしようと思わない外国人宿泊客も多いため、食事が無い代わりに料金を落としたプランを用意することで、旅館は更に気軽に泊まれる存在となれるでしょう。
合わせて無料Wi-Fiの整備や洋式トイレの増設、ベッドの設置などの設備強化を図ることで、旅館はより多くの訪日外国人の選択肢となり得ます。
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訪日外国人が日本宿泊の際に選ぶ宿泊施設にはホテル、旅館、Airbnbなど民泊がありますが、こうした宿泊施設の中で一般的に良く選ばれるのがホテル、そして近年急激に伸びているのが民泊です。一方、実は昔ながらの旅館はインバウンドの取り込みに苦戦が続いています。 訪日外国人の宿泊先として旅館が選ばれにくい理由はいくつかありますが、インバウンドを見据えてすぐに改善出来る点、ビジネスモデルに関係するためすぐには変えられないが、インバウンドを見据えると改善が必要な点があります。詳しく見ていきましょう。目...
5. 訪問目的:意外と無視できないビジネス目的の訪日外国人
ここまで消費、買い物、宿泊などの視点から訪日外国人を分析しましたが、そもそも外国人が海外旅行の目的地に他国ではなく日本を選ぶには、どのような理由があるのでしょうか。ここでは来日目的、期待度、人気の都道府県から訪日外国人の動向を分析します。
訪日外国人全体の79.4%が観光目的で日本を訪れています。また、インターネットが発達した現在では個人で日本の情報を発信するユーザーも多く、各国の言葉で発信された日本の情報は多くの訪日外国人の下調べに活用されています。
具体的には、訪日外国人の26.0%がFacebookやTwitterなどのSNSを用いて情報収集をしており、同じく25.1%は個人のブログ、15.4%はトリップアドバイザーなどの口コミサイトやYouTubeなどの動画サイトから情報を収集しています。
6. 期待度ランキング:圧倒的な食への期待の高さ
期待度ランキングを見てみると、27.5%が日本の食事に期待しており、13.7%が自然や景勝地観光、11.9%がショッピングに期待をしていました。これらの情報は多くがSNSやブログなどから発信されており、実際に体験した訪日外国人のレビューや撮影した写真などがインターネットで簡単に入手できます。
このように、多くの訪日外国人がインターネットを活用し情報を得た結果、訪日外国人の96.1%が日本食を体験し、83.0%がショッピング、75.0%が繁華街の街歩きを楽しんでおり、SNSやブログなどの口コミにより拡散する情報が多くの訪日外国人の注目を集めていると分かります。
7. 人気都道府県ランキング:人気観光地がズラリ
訪日外国人に人気の都道府県は、1位から順に東京都、大阪府、千葉県、京都府、奈良県でした。東京都と千葉県、大阪府、京都府と奈良県はそれぞれ隣接しており、東京都市圏や大阪都市圏を周遊する訪日外国人が多いことが分かります。
千葉県には東京ディズニーリゾート、京都府や奈良県には数々の文化遺産が存在することから、東京観光、大阪観光と合わせて多くの訪日外国人が訪れているようです。
東京、大阪、京都に訪日外国人の人気が集まる理由の一つとして、そもそも知名度が高いことが考えられます。名古屋や福岡などの地方都市にも訪日外国人を呼び寄せるには、認知度の向上を図る必要があります。情報発信には海外におけるプロモーションの強化やインターネット上での情報発信などが重要です。
特筆すべきは訪日中国人で、千葉、東京、山梨、静岡、愛知(名古屋)、京都、大阪が特に高い訪問率を示しています。このことから、成田空港や東京ディズニーリゾートから東京を経由し、富士山のある山梨や静岡を訪れ、名古屋を経由して京都・大阪に至るゴールデンルートが多くの中国人に好まれていると分かります。
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目次自地域と他地域との取り組みの違いは積極的なインバウンド対策が誘客のカギに自地域と他地域との取り組みの違いはinbound insightは、9月25日、【2019・最新】全国都道府県・市区町村訪日外国人観光客数ランキングを発表しました。【2019・最新】全国都道府県・市区町村訪日外国人観光客数ランキング積極的なインバウンド対策が誘客のカギに今回の調査結果から、インバウンドが多く訪れる都道府県の1位は、東京都であることが判明。2018年滞在者数は、前年比112%の8,416万2,383人...
訪日中国人観光客に人気の都道府県ランキング
訪日中国人観光客は、日本のインバウンド市場で人数、消費額ともに最も大きな比率を占めています。訪日中国人観光客に人気の目的地は主に東京や大阪といった大都市ですが、近年リピーターの増加や、地方空港と中国核都市を結ぶ直行便の増加、体験の希少性を求める旅行者のトレンドを背景に、日本全国の各都市に対する関心も高まっています。2019年の訪日外国人数は全国籍3,188万人で、そのうち訪日中国人数は959万4,300万人を記録しました。訪日外国人市場全体で、950万人を超えたのは初めてのことです。また中...
東京オリンピック開催の2020年、インバウンド業界に熱狂を
今回のインフォグラフィックでは、訪日外国人をいくつかの角度から分析しました。その結果、アジア諸国からの訪日外国人の多さや菓子類の人気、宿泊における消費額の高さやホテル利用率の高さなど、さまざまな現状が判明しました。その中でも、旅館利用率の低さや大都市圏以外の認知度の低さなど、今後の改善を必要とする課題が何点か浮き彫りになっています。
日本政府は「観光立国」をスローガンに、4,000万人の訪日外国人と8兆円の総消費額を2020年の目標として掲げています。
「おもてなしの日本」をより多くの外国人に体験してもらうためにも、外国語対応やプロモーションの強化など、各方面におけるインバウンド対策は欠かせません。訪日ラボでは、今後のインバウンド業界をよりいっそう盛り上げるべく、2020年も価値ある情報の発信を進めていきます。
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<データ参照>
- 観光庁「訪日外国人消費動向調査 2019年4月~6月期」
- JNTO「訪日外客統計」
- ※訪問者数はJNTO「訪日外客統計」の実測値および伸び率より、人気都道府県は観光庁「訪日外国人消費動向調査 2019年4月~6月期」の訪問率と前掲訪問者数より訪日ラボ推計
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