取引額1日で3兆円超 中国EC一大セール「618」仕掛ける「京東」、きょう香港上場 アリババ蹴落とす勢い

完全無料 口コミアカデミー 「インバウンドの教科書」出ました! 国別・都道府県別データ・トレンドをカバー 見てみる

きょう6月18日は、6月上旬から中国ECプラットフォーム各社が開催しているセールの最終日であり、プラットフォーム上の販促活動が最も盛り上がる一日です。

「618」の名称で親しまれているこの初夏の大型セールは、中国ネット通販2位の京東(JD.com)から始まりました。同社は創業日である本日、香港株式市場に重複上場することが報じられています。

「618」は、今ではアリババが主催する「独身の日」に匹敵するほどの超大型セールであり、本年の売り上げ記録にも注目が集まっています。

今回は大型ECセール「618」の概要と、ことしのトレンドをご紹介いたします。

関連記事
【越境EC】中国産プラットフォームTOP5と市場シェア
中国ECではもはや基礎知識「ライブコマース」


インバウンドの最新情報をお届け!訪日ラボのメールマガジンに登録する(無料)

1日の取引額3兆円超、夏の大型セールイベント「618」が「独身の日」と並んだ

中国ECサイトの大型セールといえば毎年11月11日に開催される「独身の日」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

2019年の「独身の日」では、仕掛け人であるアリババのECプラットフォームでは、たった1日で4兆円を超す取引額が記録されました。楽天市場の年間国内流通総額3兆8,595億円(2019年)を上回る金額であり、それが1日で達成されるところに中国EC市場の大きさが現れているといえるでしょう。

4兆円というインパクトから、世界でも「独身の日」には注目が集まりがちですが、実は中国のEC サイトでは「独身の日」だけではありません。年間を通して、いくつもの様々なセールイベントが開催されています。

その中でも特に「618」は、近年「独身の日」にも引けを取らない取引額を毎年更新しており、独身の日に並ぶ二大セールと呼ばれ、年々存在感を高めています。

618は京東の創業記念日、これまでの売り上げを紹介

「618」は、京東の創業記念日にちなんで、2010年からはじめた大型セールイベントです。

セール期間は6月1日から6月18日の18日間で、独身の日」に比べセール期間が長いという特徴があります。

▲[京東トップページ](公式サイト)

京東「618」の取引額が公表されるようになったのは2017年以降です。2017年の期間中の取引額は1,199億元(約1.79兆円)、2018年は1,592億元(約2.38兆円)、2019年は2015億元(約3.02兆円)と、前年比30%増の成長を続けています。

6月1日から始まった2020年の京東「618」では、セール初日の6月1日午後14時時点で前年同時点の取引額74%増を記録し、今年も取引額の記録更新が期待されています。

中国ECサイト「京東」とは

EC(電子商取引、Electric Commerce)は、インターネット上で商品を販売するネット通販を意味する言葉です。経済成長の著しい中国では、ECを利用したショッピングが盛んです。海外の商品を購入できる越境ECサイトにも注目が集まっています。 中国の大手EC事業者である京東(ジンドン、JD)は、豊富な品揃えやIoT技術を取り入れた配送技術で有名です。今月13日に発表された2019年4~6月期の純利益では6億1,881万元(約90億円)の黒字となりました。昨年同期には赤字を計上していま...

「淘宝網」は中国大手のショッピングサイト!アリババ・アリペイ・決済方法などを紹介

中国のEC市場は世界一の規模を誇り、その発展スピードは目覚ましいものがあります。その中国で有名な「淘宝網」は、アリババグループが設立した中国最大級のショッピングサイトです。淘宝網は日本人も利用できますが、注意すべき点やデメリットも存在します。この記事では淘宝網の特徴や、メリットとデメリット、注意点などを詳しくご紹介します。目次中国で流行している「淘宝網」とは?淘宝網は中国の巨大ショッピングサイト淘宝網の特徴もうひとつのショッピングサイト「天猫」なぜ淘宝網は人気なのか決済は商品が届いて確認し...

戦略を練る各社:アリババはCEO600名のライブ配信&「京東より安い」を保証した蘇寧

「618」は元々京東の創業記念日にちなんで開催されるようになったセールイベントでしたが、2013年からはアリババ天猫(Tmall)も独自に「618」イベントを開催しています。今では拼多多(pin duo duo)、蘇寧(Suning)、小紅書RED)など各EC事業者が一斉に独自のセールイベントを開催するなど、大規模商戦になっています。

大型セール期間中には各サイト内のデザインも特別仕様に変わり、お祭りムードが高まります。

多くの人が注目するイベントであるため事前に記者会見が行われることもあり、今回の618では5月25日に京東アリババ、蘇寧がそれぞれ記者会見を行いました。

京東」は独自に主催する音楽祭のライブ配信、アリババ「Tmall」は総勢600名の各業界CEOを招いたライブ配信など各社の目玉施策が発表されました。

特に蘇寧では、京東で販売されている一部商品の販売価格から10%引きを保証する独自施策を発表し、セールの初日には対象商品の平均売上が通常時の850%に昇るほどの反響が起こりました。

▲[蘇寧トップページ](公式サイト)


割引保証の対象商品には、Appleやファーウェイ、小米などのモバイル、家電製品からDior、エスティローダーといった化粧品ブランドまで300以上のブランド品が含まれてます。

免税店大手のラオックスの今

免税店大手のラオックス株式会社は、かつて家電量販店として経営難に陥りましたが、中国の蘇寧電器の傘下に入ったことで免税店として業績を回復させました。 家電量販店の他にもインバウンド事業やエンターテイメント事業など、訪日外国人を対象とした多角的な事業を展開しています。 この記事では免税店として成功を収めたラオックスの事業内容やインバウンドでの成功の秘訣と、コロナ禍にともなう現状をご紹介します。 インバウンド対策にお困りですか?「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウン...


プラットフォームが注力「ライブコマース」での販売額に注目

時代のトレンドの移り変わりに伴いセールイベントで注力するポイントも毎年変化しています。前回2019年の「618」では、地方都市向けの割引セールに各社が力を入れましたが2020年はライブコマースに各社が注力しています。

EC事業の運営をメインとするEC事業者のみならず、「快手(Kwai)」「抖音(Douyin)」といったEC機能を兼ね備えたショートムービープラットフォームライブコマースを中心に据えた独自イベントを開催しています。

拡大し続けるライブコマース市場

ライブコマースはライブ配信を通して商品を販売する形態のコマースを指しています。2019年に勢い加速し、2020年は各社が力を入れる注力事業になっています。

ライブコマース市場で一番のシェアを誇るのは、アリババ系ライブ配信プラットフォーム「タオバオライブ」です。2018年に1,000億元(約1.5兆円)規模であった同社のライブコマース市場は、2019年に2,000億元(約3兆円)規模まで倍増しています。2021年までには5,000億元(約7.5兆円)突破の目標が打ち立てられています。

ショートムービープラットフォーム各社も、2020年は快手(kwai)」で2,500億元(約3.75兆円)、「抖音(douyin)」で2,000億元(約3兆円)の高い目標が立てられています。今回の「618」セールイベントで売上に弾みがつくかどうかは、2020年後半の運命を決定する大きな分岐点となります。

どのような人物を起用し、どのような内容で配信をすれば対象の商品が大きく売れるか、様々な手法を取り入れながらの模索が続く中で、今回の「618」では多くの消費者が一気にサイトを訪問する絶好の市場テスト期間であるとも言えます。

中国で市場拡大中「ライブコマース」って?「コンテンツ」がモノを売る時代に、マスク半顔メイクがヒットした理由

タレントやインフルエンサーがライブ動画を配信し、視聴者はリアルタイムに質問やコメントをしながら商品を購入できるという新しいECの形、「ライブコマース」の市場が近年注目されています。日本でも今後成長が期待される「ライブコマース」ですが、中国の事例を元にその背景と今後の展望を解説します。目次ライブコマースとは?巨大な中国のライブコマース市場「タオバオライブ」1.5兆円規模の取引能動的な買い物から受動的な買い物へ閲覧たったの6秒「モノを探さない、説明文を読まない」でも買い物はしたい「認知獲得」だ...

【ユーザー数7億人越え】たった1分の動画(ショートムービー)が中国人に大ウケ!スマホアプリ「快手(Kwai)」をインバウンド集客に生かす方法

中国で人気となっている「ショートムービー」と呼ばれる動画編集・共有アプリの一つに「快手(Kuaishou/クアイショウ/Kwai)」があります。登録ユーザー数は2019年4月現在、7億人を超えています。 このショートムービーアプリは北京快手科技有限公司(Beijing Kwai Technology)が2011年に開発、サービスの提供を開始しました。動画にはコメントをつけることができるなど、SNS的側面を持ち合わせます。 動画の撮影と編集、ライブストリーミングサービスができ、中国人に人気...

最近良く見かける「TikTok(ティックトック)」をビジネス目線でどこよりも詳しく解説!2018年の中国はショートムービーが狙い目、インバウ

こんにちは、クロスシー編集部です。 今回は中国で昨年から人気となっている「ショートムービー(短视频)」について、人気サービスとその特徴と、中でも特に注目の「TikTok(抖音)」について紹介します。 5月にもすでにお伝えしたように、TikTokは手軽にプロのMVのようなスタイルを表現できるコンテンツで若者に大人気となっています。そんなTikTokのユーザー層とUI、人気コンテンツの法則について解説します。 [blogcard url=”https://honichi.co...


「大物芸能人」ライブ配信登場で、セールイベントを盛り上げる

「618」セール期間中は1日も休むことなく各プラットフォームにて商品の販売とセットになったライブ配信が行われます。

店舗スタッフが自ら自社製品を宣伝するライブ配信もあれば、大物ゲストを呼んで様々な商品を宣伝してもらう場合もあります。この大物ゲストはインターネット上のインフルエンサーだけでなく、テレビで見るような大物俳優、国民的アイドル、有名アナウンサーやスポーツ選手・・といった豪華な面々が揃っています。

中には格力(GREE)の董明珠(Ming Zhu Dong)のように大手家電メーカーの総裁が視聴者に向けて自社製品を直接アピールすることもあり、大きな購買転換に繋がっています。

董明珠総裁は5月にも京東での店舗オープン10周年を記念して自社製品50個をライブ配信で販売しています。

このライブ配信は745.12万人に視聴され,開始2分後には販売額は1億元(約15億円)を突破し、最終的に1回の配信で7.03億元(約105億円)の販売を記録しました。

▲[格力(GREE)総裁の董明珠](京東公式ポスター)


董明珠総裁は、6月18日当日にも京東が企画する“智恵618健康生活家”(快適な生活を送るための便利な家具家電)イベントにてライブ配信を予定しており、新たな記録更新に大きな期待が集まります。

このように「618」はただのバーゲンセールというよりも、国民の多くが注目するエンタメ的な意味合いも強くなっています。

日本でも、12月31日の大晦日に放送される「紅白歌合戦」では40%近い視聴率を記録しています。同じように「この日だから見たい」という消費者の期待が中国にも存在します。まずはエンタメ的な要素で多くの人の注目を集め、ECプラットフォームはそこから、購入に転換させようという狙いがあります。

「618」セールは、最終日であるきょう6月18日に一番のピークを迎えます。ライブ配信の戦績には、特に注目です。

セールイベントに凝縮される、中国トレンドの要素

大型のセールイベントでは、ただ盛大に商品の安売りが行われているだけではありません。注目の販売手法や影響力のあるライブ配信者の誕生など、これから中国での消費を後押しするであろうトレンドの要素が、色濃く反映されています。

セールイベントをプラットフォームごとに横断して見てみることで、中国で起きている流行と消費者層との関係が見えてくる場合もあります。こうした気づきから、インバウンド施策にも応用できる仮説を立てることもできるかもしれません。

【2019年最新/保存版】中国EC人気サイトランキング5選

日本の日常でもECの利用が増えてきています。海外でも同様の傾向があり、インバウンド市場でも自社商品の購買チャネルとしてECの利用価値はますます高まっています。海外のECサイトを正しく利用することは、市場を広げ、売り上げを上げていくために重要になってくると考えられます。この記事では訪日旅行に関連した市場の中でもひときわ大きな存在感を持つ「中国」のECサイトについて解説します。目次越境ECとは?「旅アト」との関係は?そもそもECとは?越境ECとは?そのメリットは?越境ECと深い関係にある「旅ア...

訪日中国人向けインフルエンサーは「KOC」を重視すべき!著名人では通用しない?近年のマーケティング事情、インフルエンサーの探し方を徹底解説

インフルエンサーマーケティングでは、どのような人物を起用するかがポイントとなります。特に中国人向けのプロモーションでは、KOCという宣伝手法が注目されています。この記事では、KOCとKOLの概要、KOCが注目される理由、中国人向けマーケティングのポイント、KOCの探し方を解説します。目次KOCとは?中国のSNSで注目されている「KOC」KOLとKOCとの違いとは?訪日中国人向けインフルエンサーマーケティング中国人が求めるインフルエンサーとは訪日旅行で注目されるコンテンツは?中国人が使うSN...



<参照>

https://new.qq.com/omn/20200610/20200610A0EKMR00.html

https://m.sohu.com/a/401425253_114778?_f=m-sub_channel_911_feeds_1&scm=0.0.0.0

http://finance.sina.com.cn/stock/relnews/hk/2020-06-14/doc-iircuyvi8467493.shtml

中国SNS「RED(小紅書)」最新情報セミナー:訪日ラボ社内勉強会の内容を特別に公開します【訪日ラボ トレンドLIVE! Vol.6】

短時間でインバウンドが学べる「訪日ラボ トレンドLIVE!」シリーズの第6弾を今月も開催します!訪日ラボとして取材や情報収集を行う中で、「これだけは把握しておきたい」という情報をまとめてお伝えするセミナーとなっています。

今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。

今回もインバウンド業界最大級メディア「訪日ラボ」副編集長が、10〜11月のインバウンドトレンド情報についてお話ししていきますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

詳しくはこちらをご覧ください。

中国SNS「RED(小紅書)」最新情報セミナー:訪日ラボ社内勉強会の内容を特別に公開します【訪日ラボ トレンドLIVE! Vol.6】

【インバウンド情報まとめ 2024年11月前編】UberEats ロボット配達開始、万博需要見すえ大阪で ほか


訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月発行しています。

この記事では、主に11月前半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。

※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。

口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。

詳しくはこちらをご覧ください。

UberEats ロボット配達開始、万博需要見すえ大阪で:インバウンド情報まとめ【2024年11月前編】

今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。

「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!

→ 【無料】「インバウンドの教科書」を見てみる

完全無料 口コミアカデミー 「インバウンドの教科書」出ました! 国別・都道府県別データ・トレンドをカバー 見てみる

関連インバウンド記事

 

役にたったら
いいね!してください

この記事の筆者

兵頭 和(ビントウ)

兵頭 和(ビントウ)

2016年中国北京での社会人インターンを経て2017年よりEC事業会社にて越境EC天猫国際)運営、国内ECの開発企画、ディレクションを担当。現場目線で中国アプリサービスを解説する。愛媛生まれ。

プロモーションのご相談や店舗の集客力アップに