アグリツーリズムとグリーンツーリズムの違い | 農業×観光・日本の農泊・取組事例3選

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アグリツーリズムは、農場や農村を訪れ、農業やその周辺の出来事を体験する観光のことです。

農山漁村地域に宿泊し、地域資源を活用した食事や体験等を楽しむ「農泊」の一形態といえます。

訪日外国人観光客の数は年々増加しており、その旅行目的も多様化しています。消費傾向は「モノ消費」から「コト消費」に変わり、その土地でしか体験できないことにフォーカスする人が増えています。

今回は、アグリツーリズムとはどのようなものなのか、また日本国内での事例や、アグリツーリズムが持つ課題を紹介します。

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アグリツーリズムとは

ここでは、観光目的で農場や農村を訪れ、農業を体験する「アグリツーリズム」の定義や注目の理由、「エコツーリズム」との違いについて解説します。

アグリツーリズムの定義

アグリツーリズムの「アグリ」は「アグリカルチャー(農業)」です。ファームステイに代表されるような、実際の農家で仕事を手伝ったり、農家民宿に宿泊したりする観光スタイルを指します。

そのほかにも、味覚狩りや農家レストランでの食事、普段都会で暮らしている人が休暇を農村で過ごすための施設などが含まれます。

アグリツーリズムグリーンツーリズムの範疇に含まれますが、農業という産業を体験あるいは観察する機会のある点が特徴です。

都会の喧騒を離れ、農村部でのスローライフを体験したいという人のニーズを満たすという点では共通しています。

「グリーンツーリズム」とは

地方に滞在し、現地の方々と交流しながら農業体験などを行う「グリーンツーリズム」が、ここ数年盛り上がりを見せています。また、新型コロナウイルスの流行は、これまでのように人の集まる繁華街が見どころとなる都市型の観光だけでなく、自然の豊かな地方や、オープンエアーな観光コンテンツへの関心を高めることにつながっています。先進国を中心に見られているコト消費ブームや、持続可能な社会を目指す意識も、グリーンツーリズムの商業的、社会的価値を高めているといえるでしょう。グリーンツーリズムは、地方の資源を活かし...

エコツーリズムとの違い

似たような観光の形態として、エコツーリズムが挙げられます。アグリツーリズムは、自然に触れるという点ではエコツーリズムに通ずる点がありますが、その目的が異なります。

エコツーリズム自然の保護を目的としているのに対し、アグリツーリズムは、農業を通じた農村部の活性化や、普段農業に接することがない人が農業体験をするための機会提供として位置づけられます。

アグリツーリズムは「コト消費」を求める訪日外国人観光客にとって、出身国の農業文化との違いを知り、新たな知識を得るといった異文化交流の要素が強い体験であるといえます。

エコツーリズムとは

近年、産業の持続可能性への関心の高まりから、エコツーリズムが話題となっています。日本観光振興協会、日本旅行業協会(JATA)、日本政府観光局(JNTO)が企画する「第5回ジャパン・ツーリズム・アワード」でも、こうした観点から社会性の高い取り組みの評価された組織がノミネート、表彰されています。インバウンド市場が拡大する現代の日本においても観光事業は経済の根幹を担う重要な要素の1つで、エコツーリズムは押さえておくべき基本概念と言えるでしょう。この記事では、エコツーリズムの概要、歴史や関連法、イ...

アグリツーリズムに注目が集まる理由

近年、訪日外国人観光客の消費傾向が変化してきているといわれています。特に、「モノ」よりも体験やアクティビティにお金をかけたいと考える人が増え、いわゆるコト消費の傾向が強まっています。

日本独特の文化に直接触れる「体験」を求める人が増えており、農業もその一つとして注目が集まっています。

アグリツーリズムの事例3選

農業と観光の組み合わせといっても、その形態は多岐にわたります。つづいては、日本国内で行われているアグリツーリズムの事例を紹介します。

1. 坂井あわら共生対流協議会

福井県にある坂井あわら共生対流協議会では、先進的なアグリツーリズムが推進されています。同協議会は、2017年に坂井・あわら地域で農業体験ができる場所を紹介するための公式サイトを設立しました。同サイトは英語にも対応しています。

坂井・あわら地域では、都市部に住んでいる人や訪日外国人観光客に対し、年間を通して農業体験ができることをPRしています。体験可能なコンテンツは果物の収穫、季節の野菜の植え付けと収穫、養鶏など多岐にわたります。

地域のアグリツーリズムの魅力を発信することで、多くの人に坂井・あわら地域のことを知ってもらうとともに、実際に足を運んでもらえるような環境の整備がなされています。

坂井・あわら地域のアグリツーリズムは、その土地がもとから持つ「農業」という文化を観光資源として発信している代表的な例です。

2. 一般財団法人こゆ地域づくり推進機構

宮崎県児湯郡新富町の一般財団法人こゆ地域づくり推進機構では、「体験」をキーワードに地元のブランド野菜「しんとみ野菜」のプロモーションを進めています。新富町の主要産業である農業を積極的にPRし、持続可能な観光コンテンツにすることが目的です。

2019年4月には、公式サイト内でしんとみ野菜のブランドムービーが公開されました。さらに同年5月には、しんとみ野菜の中でも希少な一粒1,000円の国産ライチを試食できるイベントを開催し、農業を身近に感じられるような体験を提供しました。

同年6月には、インバウンド向けのダイニングイベント「新富ガストロノミー」を実施しました。新富町内のカフェで新富町産の食材を使った料理を味わうというもので、カフェの店長から食材の生産者や歴史といった話を聞きながら食事が楽しめる企画です。この回は招待制でしたが、その後は一般の参加者を募って季節ごとに開催されています。

ほかにも、児湯郡のお茶の栽培が盛んに行われているエリアで、お茶をテーマにしたインバウンド向けアグリツーリズムを開発しているということです。

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3. 星野リゾート リゾナーレ那須

リゾートホテル大手の星野リゾートでも、アグリツーリズムを取り入れた観光誘致策が実施されています。

アグリツーリズムをコンセプトとして2019年11月に開業した栃木県那須市の「星野リゾート リゾナーレ那須」では、「地域の魅力×リゾート滞在」という、リゾートホテルでの滞在にその土地ならではの付加価値をつける取り組みが行われています。

滞在中は、地域の生産活動に参加できるだけでなく、農作物がどのように育てられて食卓に並ぶのかを実際に肌で感じられます。

畑や温室では通年でさまざまな農作物が栽培されており、種まき、収穫体験など、実際に自分の手で農業を体験し、それを食事として摂ることもできます。農業体験に気軽に参加できるため、日本らしい特別な体験を望む訪日外国人観光客からの支持も期待されます。

アグリツーリズムの課題

農業という既存のコンテンツを活用した観光誘致であるアグリツーリズムは、地方部でも比較的参入しやすい形態です。しかし同時に、課題もいくつか挙げられます。

訪日外国人観光客へのプロモーション

訪日外国人観光客を呼び込むための問題点の一つは、集客方法です。エコや農業に関する体験に関心を持っている訪日外国人観光客は増えているとはいえ、ターゲット層に的確に情報を発信できなければ、誘客にはつながりません。

アグリツーリズムは、訪日外国人観光客だけでなく、日本にすでに住んでいる外国人もターゲットになります。より詳しく日本のことを知りたいと思っている人に対して、どのように情報を伝えていくかがカギになります。

さらに、その土地によって農業の特徴は異なるため、差別化した情報発信も必要です。それぞれの地域の農業が持つ特性を把握し、方向性を絞ったPRに取り組むことが重要です。

多言語対応

訪日外国人観光客の多くが不満に思うのが、日本の多言語対応への遅れです。特に地方部では都心部に比べて観光整備が行き届いていないことが多く、訪日外国人観光客アグリツーリズムの開催場所までたどり着けない可能性も考えられます。

しかし、街中の看板や表記をすべて多言語にするこには手間も時間もかかり、また翻訳を複数言語で依頼するとなると費用がかさみます。

このような問題を解決するには、多言語で書かれた地図や、ガイドブックの整備が有効です。多言語で書かれた現地情報に触れられれば、訪日外国人観光客が訪れたときにもストレスなく滞在できるほか、アグリツーリズムの前後で地域を観光する際にも役立つでしょう。

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体験内容の差別化

農業という一般的なコンテンツを観光資源として活用するために重要なのは、「なにが特別なのか」をはっきりと主張することです。ほかの農村でも同じような体験ができると思われると、訪日外国人観光客はより滞在場所からのアクセスがよい地域やほかの観光地から近い地域に流れていってしまいます。

地元の特産品に関連した体験を軸にしたり、ほかの地域にはないようなサービスを展開したりするなど、観光客にとっての「特別感」をうまくアピールすることが重要です。そのためには、地域にある産業の現状や歴史などを正しく理解し、ターゲットに刺さるコンテンツ構成にする必要があります。

「ここでしか体験できない」という特別さをPRすることで、効果的に訪日外国人観光客を集客できます。

アグリツーリズムでインバウンド集客

アグリツーリズムは、農業を観光資源として活用した集客の一つの方法です。地域が持つ農業という文化を観光客に体験してもらうことを基本にしています。

訪日外国人観光客をターゲットとして集客する場合、まず課題となるのは認知度の向上です。良質なコンテンツを持っていても、知られなければだれも訪れてはくれません。

そのほか、訪日外国人観光客が安心して滞在できるように多言語対応を進めることや、ほかの地域との差別化を意識することなど、アグリツーリズムを展開するためにはクリアすべき課題が存在します。

しかし、コト消費への注目が高まっている今、その土地でしか体験できないコンテンツは、上手くPRできれば非常に有効な集客方法となり得ます。ターゲットを絞り込み、地域の特徴を分析することで、「特別感」のあるアグリツーリズムを目指すことが重要です。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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