4割が「インバウンド客はコロナ前水準に戻った」 依然として人手不足課題【第3回インバウンド客受入拡大に向けた意識調査結果】

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日本旅行業協会JATA)は、2024年7月に第3回「インバウンド旅行客受入拡大に向けた意識調査」を実施しました。

第2回調査が行われた2024年2月は、訪日外客数が270万人を超え、コロナ前の2019年の同月比7.1%増が記録されたタイミングでした。本記事では、それから約5か月が経過した今回の調査において明らかになった、インバウンドの最新動向や課題について解説します。

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インバウンド・旅行・観光の最新動向

2024年7月に行われた第3回「インバウンド旅行客受入拡大に向けた意識調査」では、1,161件の回答が集まり、過去最高の収集数となりました。

調査対象者は旅行会社(406件)が最も多く、そのほかにも輸送事業者、宿泊事業者、自治体、観光協会など、さまざまな形態の受入事業者が回答しています。

インバウンド未取扱い事業者の新規参入意欲は低下傾向

ここからは、調査結果を見ていきます。

今後のインバウンド受け入れ計画について、現在インバウンド取扱いのない事業者のうち、「受け入れたいと思う」の回答は19%、「受け入れたいと思っているが、課題があると感じている」の回答は25%でした。インバウンド受け入れに対する肯定的な回答は、前回調査と比較すると、7ポイント減少しています。

理由としては、「人手不足や人材不足」「インバウンドを受け入れる余裕がない」「多言語インフラ整備が不十分」などの課題があげられています。

コロナ禍からの急激なインバウンド回復が落ち着き始め、事業者の新規参入も勢いが緩やかになっていると考えられます。

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▲将来のインバウンド観光客受け入れ計画:「インバウンド旅行客受入拡大に向けた意識調査 第3回アンケート分析結果報告」より
▲将来のインバウンド観光客受け入れ計画:「インバウンド旅行客受入拡大に向けた意識調査 第3回アンケート分析結果報告」より

インバウンドの戻り具合、41%が「コロナ前と同水準」と回答

コロナ前と比較したインバウンド客の戻り具合は、「2019年の水準以上に戻った」、または「概ね90%以上戻った」の回答が41%でした。第1回(2023年8月)は14%、第2回(2024年2月)は30%と、インバウンド客が順調に戻ってきていることがうかがえます。

2024年8月の訪日外客数は293.3万人で、7か月連続で同月過去最高を記録しており、今後も好調に推移していくと考えられます。

関連記事:【速報】8月の訪日外客数293万人 台風の影響で3か月ぶりに減少するも、同月過去最高を記録

▲観光客数の戻り具合について:「インバウンド旅行客受入拡大に向けた意識調査 第3回アンケート分析結果報告」より
▲観光客数の戻り具合について:「インバウンド旅行客受入拡大に向けた意識調査 第3回アンケート分析結果報告」より

引き続き「春・秋」に観光客が集中

インバウンド客が多い時期は、第2回調査に続き、「春季(桜のシーズン・イースター:45%)」「秋季(紅葉のシーズン:42%)」でした。

これまでの調査結果の推移をみると、春季と秋季の人気は上昇傾向にあり、インバウンド客が日本に訪れるタイミングが集中していると考えられます。

予約チャネルの傾向は変わらず、OTAや旅行者本人の予約も増加傾向

インバウンド客が利用する予約チャネルは、これまでの調査結果と変わらず、「日本の旅行会社(52%)」「海外の旅行会社(49%)」「OTAオンライントラベルエージェント:32%)」「旅行者本人(23%)」が上位を占めました。

国内・海外の旅行会社経由の予約が増えている一方、OTAや旅行者本人による予約も増加傾向にあります。

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「サステナブルツーリズム」「高付加価値旅行」への関心が継続

旅行・観光関連コンテンツの新規開発では、第2回調査に引き続き「サステナブルツーリズム(28%)」と「高付加価値旅行(27%)」に強い関心が寄せられていることがわかりました。

その他の回答についても、「ガストロノミー」「アドベンチャーツーリズム」「酒ツーリズム」と続き、傾向に大きな変化はありませんでした。

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重点市場は「台湾」、北米・欧州も成長

世界のインバウンド重点市場については、「台湾(49%)」が他市場を大きく引き離し、最も多く挙げられました。第1回調査の38%、第2回調査の45%からさらに上昇し、重要度が高まっています。

今回の調査における台湾に続く重点市場は、次のとおりです。

  • 中国(29%)
  • 東南アジア(27%)
  • 北米(25%)
  • 欧州(25%)
  • 香港(24%)
  • 韓国(23%)

第2回調査と比較すると、アジアに並んで「北米」「欧州」なども増加傾向にあり、重要な市場に成長していることがうかがえます。

また将来については、第2回調査と同様に「特にない(国・地域を問わない)」が49%で、今後、新規にインバウンド客の受け入れを強化する予定の国や地域がないという回答が半数を占めました。

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インバウンド客受け入れの課題と今後

第2回調査では、インバウンド客受け入れの課題として「人手不足や人材不足」「二次交通の整備不足」「情報発信先へのアプローチ方法の不明瞭さ」などが挙げられました。そのような課題に対して、改善は見られるのでしょうか。

人手不足の最大要因は「待遇の改善」、働き手の需要は回復か

インバウンド客の受け入れにおける課題として、「人手不足や人材不足を課題と感じている」と回答した事業者は、これまでの調査で最も少ない55%でした。

徐々に改善しつつあるものの、インバウンド受け入れにおける最大の課題であることは変わっていません。人手不足や人材不足の主な要因として、次のことが回答に挙がりました。

  • 待遇の改善(賃金、福利厚生、研修制度など):44%
  • 就職希望者が少ない:44%
  • 労働環境の改善(残業・休日出勤・シフト勤務など):29%
  • インバウンド客受入の経験者不足:24%

とくに、「就職希望者が少ない」については、第1回調査から徐々に増加しており、就職希望者の減少は将来的なインバウンド客の受け入れに大きく影響する可能性が考えられます。

一方で、「流出した人材が戻らない」「観光業界の魅力が乏しい」などの回答は減少しており、コロナ禍が明けて観光産業に対する働き手の需要や魅力が回復しているといえます。

「課題は未解決」の事業者が約60%

課題の解決状況に関する質問では、第2回調査で選択した課題について、「依然として未解決課題として残っている」と回答した事業者が約60%に上りました。

また、「選択した課題はむしろ悪化している」と回答した事業者は、第2回調査から2ポイント増加して11%と、課題解決に苦戦する事業者が一定数いることが浮き彫りになりました。

一方で、「選択した全ての課題は解決に向かっている」「選択した課題の一部は解決に向かっている」と回答した事業者は合計26%で、第2回調査と比較すると4ポイント増加しています。

多言語対応やインフラ整備は改善傾向、地方分散への意識高まる

インバウンド客を増やすために必要な条件については、第2回調査と比べると、「多言語対応の拡充」「観光DX推進」「観光インフラ整備」などを挙げる割合が減っており、改善しつつあると言えます。

一方で、「人手不足や人材不足」は改善しつつあるものの、回答率は最も高く、今後も継続して取り組んでいく必要があります。

また、今後のインバウンドの伸長に必要な条件としては、以下の項目を回答する事業者が増加していました。(カッコ内の数値は第2回調査結果との比較)

オーバーツーリズム解消のため、地方誘客や地方へのアクセスなど、観光客の地方分散の意識が高まりつつあると推測されます。

  • オーバーツーリズム解消、地方誘客:29%(+6ポイント)
  • 自治体の広域連携の拡大:26%(+2ポイント)
  • 主要都市から地方へのアクセス網の充実:19%(+3ポイント)

また、具体的に必要な国・政府の支援に関しては、「人材確保・教育に対する支援」「観光政策・制度の整備」を中心に回答がありました。官民連携のあり方については、日本ブランドのプロモーションとして「観光コンテンツ創出支援」や、「インフラ整備に対する支援」などの回答がありました。

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▲インバウンド観光客受入をさらに伸長させるための条件について(将来):「インバウンド旅行客受入拡大に向けた意識調査 第3回アンケート分析結果報告」より
▲インバウンド観光客受入をさらに伸長させるための条件について(将来):「インバウンド旅行客受入拡大に向けた意識調査 第3回アンケート分析結果報告」より

コスト上昇を価格に反映した観光事業者は66%、人件費が増加

第3回調査では、66%の観光事業者が物価上昇などの影響から価格へ反映させたことがわかりました。第1回調査では41%、前回の第2回調査では58%と、価格への反映が少しずつ進んでいることがうかがえます。

コスト上昇を価格に反映した理由としては、「仕入(物価)の上昇(78%)」「人件費(賃上げ・要員増:69%)」「水道光熱費の上昇(39%)」が上位を占めました。中でも「人件費(賃上げ・要員増)」は、第2回調査から6ポイント増加しており、人手不足や人材不足などに対する投資にも目が向かっていると考えられます。

大阪万博に関するインバウンド誘致意欲に大きな変化なし

第3回調査で、大阪・関西万博をきっかけにしたインバウンド客の誘致を考えていると回答した観光事業者は31%でした。第1回調査では32%、第2回調査では31%と、大きな変化は見られません。

一方で関西に拠点がある事業者は48%と、全体と比べると関心が高いことが見受けられますが、第1回調査から徐々に減少傾向にあります。

また大阪・関西万博を契機とした国際交流についても、これまでの調査と同様、半数以上が推進する予定や計画を立てていないことが明らかになりました。その他の回答としては「1社単体では難しく、DMOや行政の計画に便乗予定」「外国人来場者は増えていくと想定しているが、関西万博がフックになるとは考えづらい」などがあり、万博への期待や対応は、部分的であると考えられます。

関連記事: 大阪万博の来場者数は?海外からは「350万人」と予想、残された課題と対策とは

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<参照>
日本旅行業協会(JATA):インバウンド旅行客受入拡大に向けた意識調査 第3回アンケート分析結果報告

日本政府観光局JNTO):

2025 年日本国際博覧会来場者輸送対策協議会:大阪・関西万博 来場者輸送具体方針(アクションプラン)初版

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    この記事の筆者

    訪日ラボ編集部

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