今後のインバウンドの行く末に関わる重要な提言か…日本経団連が考える「日本が観光先進国になるために政府が講ずるべき施策」(前編)

今後のインバウンドの行く末に関わる重要な提言か…日本経団連が考える「日本が観光先進国になるために政府が講ずるべき施策」(前編)

2017年もまだまだこれから先は長いですが、今年度末には観光庁が定める2017~2020年度を主な対象期間とするインバウンド向けの方針「観光立国推進基本計画」が改定されます。

【解説】明日の日本を支える観光ビジョン?ビジットジャパンキャンペーン?わかりにくい政府や観光庁の取り組みの構造をまとめました

日本のインバウンドは、円安などの影響から2014年以降急速に訪日外国人観光客が増加しています。政府は様々な施策を発表しており、訪日ラボでも主要なものをご紹介しています。しかしながら、「観光立国推進基本法」や「明日の日本を支える観光ビジョン」、「ビジット・ジャパンキャンペーン」など、単語単語で見聞きしながらも、その取組の全体像は非常に見えにくいと言わざるを得ません。そこで、政府の取り組みの全体像について訪日ラボにて独自にまとめました。今後、政府の取り組みが次々と発表・実現されていくニュースを...

2020年にはご存知、東京オリンピック・パラリンピックの開催が予定されており、日本のインバウンド観光を始めとしたあらゆる産業を取り巻く環境は大きく変化すると予測されています。

こうした流れを受けて一般社団法人 日本経済団体連合会は、2月14日に「改定観光立国推進基本計画に対する意見」を取りまとめています。その中から日本経済団体連合会が「政府が講ずるべき」と考えている施策について2回に渡って見ていきましょう。

この中でまず最初に延べられているのが、観光関連産業の成長力強化という内容で、

  1. 消費の喚起・創造
  2. 技術開発・普及促進
  3. 規制改革
  4. 人材の育成・確保について

という4つの項目でまとめられています。

 

1.消費の喚起・創造

訪日外国人観光客一人当たりのインバウンド消費額とリピート率の引き上げ、新たなインバウンド消費を創造するには、提供サービスの高度化、高品質化という供給側の努力だけなく、製作による環境整備が重要としており、そのためには以下の5つが必要としています。

①情報プラットフォームの整備

国内各地における「コト消費」や、富裕層・高齢者層等のインバウンドの潜在需要に関するデータは、コンテンツの充実やプロモーションの企画に有効活用出来るほか、訪日外国人観光客の移動や消費行動を詳細・具体的に把握することができれば、観光ルートの整備に活かすことが出来ます。地方自治体向けのデータ提供に関しては「地域経済分析システム(RESAS)」稼動しており、将来的には1つのシステムに統合させるほうが望ましい、としています。

コト消費とは? 訪日外国人の消費行動がサービスや体験に移行

コト消費とはインバウンドにおける「コト消費」とは、訪日外国人観光客が旅館やホテルなどでの宿泊、観光地やアクティビティーでの体験など、経験・体験に対して価値を見出す消費行動のことをいいます。インバウンド業界のみならず、一般のニュースにおいても、訪日中国人観光客の「爆買い」というキーワードが騒がせていましたが、為替相場が元安円高傾向にふれるにつれ、訪日中国人観光客の買い物消費額が減少し、より日本らしい観光などの「体験」を求めるようにシフトしてきています。「コト消費」はいつから使われ始めた?「コ...

【無料で利用可】詳細なインバウンド分析が出来るすごいサービス 地域経済分析システムRESAS(リーサス)とは

地方自治体、インバウンド事業者の皆さん、地域経済分析システムRESAS(リーサス)についてご存知でしょうか?これは人口急減・超高齢化という日本が直面する大きな課題に対し政府一体となって取り組み、各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生できるようにということで、内閣に設置された「まち・ひと・しごと創生本部」が、平成27年4月1日より、地方自治体による様々な取り組みを情報面・データ面から支援するために供用を開始したものです。地域経済分析システムRESAS(リーサス)には...

②「消費を促す場」の形成

インバウンド観光の玄関口となる空港や港は、お土産の購入等を含む重要な観光消費の拠点としており、活性化の余地は大きいとしています。施設内の導線、商業施設の拡充などが必要。また、国や地域を上げた大型イベントに合わせて観光客誘致が必要としています。

成田1強から変化 インバウンドの玄関口はどこだ!?訪日外国人の入国者数で見る空港・湾港ランキング

インバウンドのおもてなしの玄関口となる空港や湾港。その利用者数は、今まではゴールデンルートの出発点となる成田国際空港の1強でしたが、その勢力図に変化が見え始めています。今回は、訪日外国人観光客が日本のどこから入国しているのかを調査してまとめました。<関連>[blogcardurl=https://honichi.com/3679][blogcardurl=https://honichi.com/10015]インバウンド市場や各国の訪日外国人に関する調査やもっと詳し...

③免税制度の簡素化・電子化

インバウンド向け免税制度において、現在は販売者、消費者双方にとって一般物品、消耗品の区分の判断が困難となっており、パスポートに手動で押印が必要など免税手続きは複雑になっています。そのため、免税手続きの簡素化のために、早期に電子化、一般物品と消耗品の区別を撤廃、上限額を引き上げる必要があるとしています。

免税って何?タックスフリーとデューティーフリーの違いは?訪日外国人に関連する税について調べました[前編]

最近のインバウンド関連ニュースで「免税」というキーワードをよく目にします。読者の方にも海外旅行や海外出張をする時に空港の免税店でのお買い物を楽しみの一つにしている方が多いのではないでしょうか。先日のニュースで、観光庁が、訪日外国人観光客が酒造やワイナリーなどで日本で製造された酒類を購入した場合、酒税を免除する制度を2017年度税制改正要望に盛り込む方針を固めた、との報道がありました。そもそも、「免税」とは「税金を免除すること」の総称であり、この場合の酒税の免除も「免税」と言えます。

免税って何?タックスフリーとデューティーフリーの違いは?訪日外国人に関連する税について調べました[後編]

前回、訪日外国人観光客の消費活動にかかかわる「税金」について、種類や課税額、またそれらが「免税」になった場合にどうなるか、を解説しました。[blogcardurl=https://honichi.com/10890][前編]でも触れたとおり、「免税」や「免税店」というキーワードがインバウンド関連ニュースを賑わせています。しかしながら「免税店」が「免税」している「税金」とはどの税金なのか、どの「免税店」だとどの「税金」を免税しているのか、については、あまり浸透していない印象を受け...

④新たな市場の創造

より多くの観光客を見込むため、バリアフリー化、多言語対応を含め、インフラ、サービス等のユニバーサルデザイン化に務める。より高い付加価値を持ったツーリズムである、カルチャーツーリズム、アグリツーリズム、テクニカルビジットなどの形成に務めるべきとしています。

これからの旅行商品は「ユニバーサルツーリズム」が当たり前? インバウンドビジネスでも積極的な取り組みを

「ユニバーサルツーリズム」という言葉をご存知でしょうか? 年齢や障害などの有無にかかわらず、すべての人が楽しめるように整備された旅行を意味しており、障害に焦点を当てて「バリアフリー観光地づくり」と表現されることもあります。日本は世界でも類を見ないほどの急激なスピードで高齢化が進んでおり、以前から観光の「ユニバーサルデザイン化」が必要視されていたのですが、2020年東京オリンピック、パラリンピックに向けてさらなる動きを見せています。今回は、なぜ今「ユニバーサルツーリズム」が注目を集めてい...

【地方誘致】コト消費で期待が集まるグリーンツーリズム「農泊」 全国500地域での展開を政府後押しへ

2017〜2020年度が対象期間となる、政府の観光立国推進基本計画の改定素案が2日に判明しました。改定素案では、農業、林業、漁業などの体験型宿泊であるグリーンツーリズム「農泊」を、全国500地域でビジネスとして展開するというものです。訪日客の地方誘致に重要なのは、まず「知ってもらうこと」。効果的なインバウンドプロモーションについてより詳しい資料のダウンロードはこちらコト消費に対応!インバウンド動画プロモーションについてネット上の有名人を活用したインフルエンサープロモーシ...

⑤休暇の分散化

国内の年間旅行量の約4割がゴールデンウィーク、お盆、年末年始等のピーク期間に集中していることから、労働平準化や設備投資を阻害し生産性を押し下げている側面がある。こうした時期の混雑や価格の高騰は、観光需要および観光客の満足度を引き下げる要因となる。家族旅行の新興を図る点から、学校の休業日を地域ごとに分散化し、子供の休みに合わせた年次有給休暇の取得を促進する必要があるとしています。

 

2.技術開発・普及促進

提供サービスの高度化、高品質化や生産性の向上を図るうえで先端技術の導入は不可欠であり、完全自動運転車の普及は多言語対応が可能な二次交通や荷物配送サービスの維持、充実だけでなく、高齢者、障がい者を含め、あらゆる観光客の観光地へのアクセス改善をもたらすこととなるとしています。

また、宿泊や飲食各施設での接客、サービス提供が可能なロボット・AI(人工知能)、低コストの多言語翻訳ツール、施設説明を代替するVR(ヴァーチャルリアリティ)などは、効率化や労働力不足への対応のみならず、観光資源の魅力発信にもなるとしています。

【宿泊業向け】AIがコンシェルジュを代行?インバウンド宿泊者向けチャットガイドBebotとは?

2016年11月2日、日本政府観光局(JNTO)により、2016年1月から10月までの訪日外国人観光客数が2,000万人を超えたとの報道発表がありました。訪日外国人観光客数は異例のペースで増えており、JNTOは2020年の訪日外国人観光客数4,000万人誘致を目指して、これからもインバウンド誘致に向けた取り組みを加速させていくとしています。「インバウンド誘致」はホットなキーワードになっているという背景から、国内では訪日外国人観光客向けアプリやサービスが続々とリリースしています。

インバウンドビジネスにもVRコンテンツを活用! プロモーションなどに役立つ製品事例

「OculusRift」「PlayStationVR」「GearVR」「HTCVive」などのヘッドマウントディスプレイの登場により、盛り上がりを見せているVR市場。よく話題になるのはゲームをはじめとしたエンターテイメント分野での活用ですが、インバウンド分野での利用を模索する動きも現れています。これまでの映像よりも没入感が強いと言われており、各種業界から注目を集めているVR技術はインバウンドビジネスでどのように役立てられるのでしょうか。今回は、その各種事例をご紹介しましょう。...

 

3.規制改革

多様なニーズに対応し地域の特色ある観光地を形成するには、既存の枠に捕われない新たなサービス提供を可能とする環境整備が必要で、特に農村や古民家等における民泊は、重要な観光資源であるのみならず、宿泊施設の需給が逼迫している地域における代替手段となる可能性があるとしています。

古民家を使った旅館やレストランがオープンしやすく! 国交省、市街化調整区域の建造物を観光振興などに運用する方針

国土交通省は平成28年(2016年)12月27日、空き家になった古民家や住宅を地域資源と捉え、観光振興などを目的とした用途変更に柔軟に対応する方針を明らかにしました。類似の取り組みは各地で行なわれており、さらに活性化する可能性があります。訪日客の地方誘致に重要なのは、まず「知ってもらうこと」。効果的なインバウンドプロモーションについてより詳しい資料のダウンロードはこちらコト消費に対応!インバウンド動画プロモーションについてネット上の有名人を活用したインフルエンサープロモ...

こうした民泊に関する法律も将来的には旅館業法への一本化も考慮するとともに、現行の旅館業法等についても、先端技術の導入等も見据え、フロント(玄関帳場)の設置義務、ロビーの面積制限等の規制を緩和・撤廃する必要がある。公共施設、道路についても、安全確保、景観との調和を前提として、通行人に対応した言語、内容の表示、スマートフォンとの連携が可能なデジタルサイネージの設置などを見据え、道路交通法はじめ関連法制を見直すべき。

Airbnbでの集客に陰り?Airbnbが民泊新法に対応 180日規制で検索から外れる仕様に

AirbnbJapan(エアビーエヌビージャパン)が、先日2月21日、今国会提出予定の「民泊新法」を見据えたAirbnb(エアビーエヌビー)での施策を発表しました。「民泊新法」で目玉となっている180日規制にシステムで対応するなどの対応策をアピールしました。Airbnb(エアビーエヌビー)、180日規制対応へ180日以上営業している物件は検索対象外へ政府が今国会で提出予定の「民泊新法(正式名称:住宅宿泊事業法)」。今までグレーゾーンとして野放しになっていた民泊に対して、新たな...

10分で理解する民泊サービス その実態とは?背景や法的要件、課題などを解説

民泊サービスとは?:Airbnb(エアービーアンドビー)を例に日本でも急速に広まりつつある民泊ビジネス。業界の中でも最も有名なAirbnb(エアビーアンドビー)を例に見てみましょう。Airbnb(エアビーアンドビー)は2015年11月時点で全世界191カ国、3万4000都市に200万物件を誇る民泊サービスです。日本でも知らぬ人がいないほどに知名度が高まってきましたが、Airbnb(エアビーアンドビー)はアメリカのカリフォルニア州で生まれた企業で、創業は2008年。生き馬の目を抜く厳しさのシ...

 

4.人材の育成・確保

観光産業は対面サービスの多い労働集約型産業であり、労働人口減少の影響は深刻。基幹的な人材から、観光政策と観光地経営を担う高度観光人材に至るまで、その育成・確保は喫緊の課題であるとしています。

基幹的な人材については、多言語対応の必要性の高まりも見据え、必要とされる専門職に在留資格(技能)を適用して外国人労働者の活用も視野に入れるべき。高度観光人材については国や自治体が地域大学における育成を積極的に後押しするとともに、学生の関心度を引き上げ、観光関連産業への就業を促すため、官民連携で高度観光人材のキャリアパスの発信に努めるべき。国の観光政策立案、執行を担う人材については、政府一丸となり、異動間隔の長期化や各地観光推進機構への出向等を活用した育成に取り組まなければならないとしています。

 

まとめ

この提言の中で日本経済団体連合会は、日本が観光立国、観光先進国として今後大きく羽ばたく事が出来るかどうかは、2020年までにどのような施策を実施するかによって変わってくるとしています。官民一体となって、それぞれの領域で出来る事を着実に進めていきたいですね。次回は「受入体制の整備」という項目について詳しく見ていきます。

<参考>

関連インバウンド記事

 

役にたったら
いいね!してください

この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客のインバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!