観光庁によると、平成30年訪日客消費額(インバウンド消費額)は、4兆5千億円と過去最高を記録し、過去6年連続で最高額を更新しました。しかし、訪日客による日本国内消費が好調に続く一方、外国人犯罪グループによる、偽造クレジットカード詐欺事件も増加しています。
警視庁によると、平成29年の偽造クレジットカードの事件摘発数は、総数75件あり、そのうちマレーシア人による犯行は33件でした。(マレーシア最多、ついで中国、台湾)平成27年、28年のマレーシア人による犯行は0件でしたら、この1年間で急増しています。その手口は、役割を細分化し、巧妙化されてきているようです。
インバウンドの最新情報をお届け!訪日ラボのメールマガジンに登録する(無料)
マレーシア人による、擬装クレカ事件多発
昨年11月、関西国際空港でマレーシア人の男が偽造クレジットカードを33枚所持していたとして逮捕されました。日本国内に持ち込んだカードは、「買い子」(買い物役)が高級ブランドのバックや時計、化粧品などの購入する際に使用されています。そして、その商品は別の商品受け取り役に渡り、本国へと持ち帰られるという犯罪の流れです。
多くの場合、この「買い子」は、商品総額10%ほどを報酬として手に入れていると言います。本国の犯罪グループは、一斉摘発を避けるため、日本国内に偽造カードを運ぶ役、実際に商品購入する役、商品を受け取る役など、役割細分化を図っていると見られます。
今年2月にも、マレーシア人の男女グループ6名が同様の詐欺で、偽造カードで商品購入した後の受け渡しのタイミングで発覚、逮捕に至りました。大阪府警は、この6名より計28枚の偽造カードを押収しました。ドン・キホーテ道頓堀店では、高級化粧品など合わせておよそ900万円の被害に遭ったようです。
犯罪数、0件からわずか1年で33件へ
警視庁によると、平成29年の偽造クレジットカードの事件摘発数は、総数75件あり、そのうちマレーシア人による犯行は33件でした。(マレーシア最多、ついで中国、台湾)平成27年、28年のマレーシア人による犯行は0件でしたら、この1年間で急増しています。要因として考えられることが二つあります。
一つ目は、ビザ緩和です。6年前からマレーシア人が短期滞在で入国する場合、ビザが不要となり、以前よりも楽に訪日することができるようになりました。
二つ目は、安全性が高い集積回路 (IC) を組み込んだカードへの切り替えに後れを取っていることが挙げられます。日本国内のICカードの普及率において、欧州主要国がほぼ100%なのに対して、日本は70%にとどまっているそうです。(平成28年時点)ICカード化は向上しているようで、2020年までにはほぼ100%になる見込みのようですが、このICカードに対応する店舗側の決済端末の導入の遅れが、遅れの原因と言われています。
偽造クレカによる不正を防ぐには?債務責任は加盟店に!(ライアビリティシフト)
2015年10月以降、カード発行会社の不正利用への対応が変更になり、ICチップ未対応の決済端末で偽造カードが利用された場合の補償責任を加盟店側(お店側)に移転されました。以前までは、偽造カードが使用された場合の被害補償について、イシュア(カード発行会社)側が負っていましたが、その責任を加盟側へシフトしました。このことをライアビリティシフトと言います。
現在多くのクレジットカード自体は、偽造対策にICカードに切り替わってきていますが、日本国内の店舗端末のIC対応が遅れている状況です。そのため偽造カード詐欺増加する一因にもなっているため、店舗におけるIC対応促進を図った制度変更だと言われています。
ICカード対応のPOS・決済端末を導入は、比較的安価な対策です。消費者と店舗側の安心安全のためにも検討することも良いかもしれません。
遅れているのはクレカ対応だけではない?電子決済の後進国、日本
日本人の定番決済手段は、圧倒的に現金払いが主流です。しかし、海外の決済トレンドは、クレジットカードや電子マネーなどによる「キャッシュレス決済」です。
上記に記述したように、クレジットカードのICチップ対応に遅れている日本ですが、スマホ電子決済への対応にも迫られています。
日本がキャッシュレス対応していくことは、日本通貨に両替したり、多額の現金を持ち歩かなくて済んだり、訪日外国人にとって大きなメリットと言えます。
日本で使用できるキャッシュレス決済方法は各国に合わせて様々あり、面倒のように感じるかもしれませんが、訪日外国人の消費増加を狙うには、キャッシュレス対応は不可欠です。
関連記事
インバウンドで決済対応・導入は必要?
2018年の訪日外国人数は3,000万人を突破しました。国が掲げる2020年までの目標4,000万人は確実に射程に入りつつあります。外国人観光客を誘致し、全国津々浦々で消費してもらうことで、地方経済を活性化させようというのが政府の目論見です。今後、外国人旅行者は都市部から地方へさらに関心を移していくことが予想されます。地方では早急にインバウンド対策を講じ、来るべき時に備えておく必要があります。そのためにインバウンド受け入れ体制整備としての決済対応はどのようなものがあるのでしょうか?クレジッ...
他には、どんなインバウンド関連事件・トラブルが?
今回取り上げた外国人による偽造カード詐欺事件の他にも、外国人による犯罪が報道されています。
警視庁によると、2015年に外国人(非永住者)による事件数は9417件に及び、最も多かった国はベトナム、2位は中国、3位はブラジルと続きます。外国人犯罪数は、2005年がもっと多く、年々減少していますが、ベトナムに限っては3倍以上に増加していることから、警察関係者は警戒を強めているそうです。
1. 関西、大麻所持および窃盗事件(ベトナム)
兵庫県の6LDK民家で、大麻草216株を販売する目的で栽培し、乾燥大麻や大麻草を所持したとしてベトナム人の男2名が逮捕された事件です。栽培を始めた理由を聞くと、別のベトナム人から栽培方法を教わったと供述しており、県警は販売ルートの解明を進めています。(2018年2月報道時点)
ベトナム訪日数は年々増加しており、ビザ緩和やLCC増便などが背景にあります。訪日数自体も昨年1番の伸び率26%で、母数増加がベトナム人犯罪増加の一因とされています。
2. インバウンド客、レンタカー事故多発
訪日外国人客、特にリピーター客の中には、公共交通機関では行けないような観光地に足を運んでみたいと思う旅行者が増えてきています。外国人によるレンタカー需要の高まりに比例して、彼らによる交通事故が多発しています。
総務省の調査によると、大阪府内レンタカー52営業所で、外国人事故率を調べてみると、日本人の約4倍以上であることが分かりました。事故を起こしてしまう背景として、走行向きの違いや標識ルールの差が強く関連しているようです。
事故防止対策のため、国土交通省始め、レンタカー会社などは、ガイドライン配布や多言語ナビ導入、外国人が運転していることがわかる「外国人が運転しています」ステッカーなどの対策をしています。行政・民間の連携と協力が必須になるでしょう。
関連記事
沖縄 外国人観光客のレンタカー事故が3年で3倍に…保険未加入問題に対応 レンタカー損害補償プランに医療保険を追加!
沖縄ツーリストのレンタカー事業「OTSレンタカー」と大同火災海上保険(以下大同火災)は、2019年よりインバウンド向けに、レンタカー損害補償に病気や怪我の治療費の補償も付帯した「One Two Support訪日旅行保険 」の提供を開始しました。昨今は訪日客によるレンタカー事故があとを絶たない一方で、旅行保険への加入率が低いといった事象が問題となっています。訪日客のレンタカー事情をふまえた上で、保険加入の利便性向上が期待される「One Two Support訪日旅行保険 」について見ていき...
事故率"4倍"訪日外国人のレンタカー利用/「公道カート」人気・地方訪問増加で多発、必要な安全対策とは?
総務省近畿管区行政評価局は、近年の訪日外国人観光客によるレンタカーの利用増加を受け、大阪府・京都府および兵庫県内の事業者や運輸局に対し、訪日客のレンタカー利用実態の調査を実施しました。調査の結果、訪日客のレンタカー事故率が日本人の4倍という事実が発覚し、インバウンド誘客を促進する上での新たな課題として挙がっています。訪日客のレンタカー利用の実態と調査対象地域で実施されているインバウンド向け安全対策をふまえ、訪日旅行サイトで実施されている取り組みにも触れた上で、今後求められる対応を見ていきま...
オーバーツーリズムとは、観光地に過剰な混雑がみられるほど観光客が押し寄せ、近隣住民や観光資源そのものに悪影響を与え、様々な問題を引き起こす総称のことを言います。
よく事例としてあげられる京都では、「混雑でバスに乗れない住民」「嵐山の竹林への落書き」「食べ歩きのゴミポイ捨て」など深刻な問題になっています。このような観光による公害対策が、今後のインバウンド、観光立国になろうとしている日本には重要な課題です。
混雑対策として同市は、「分散」というキーワードを出しています。オープン時間などを早める「時間の分散」新たな観光スポット開拓・発信していく「場所の分散」、春秋の人気シーズン以外の魅力発信を提供していく「季節の分散」に取り組んでいくと言います。京都市は、日本のオーバーツーリズム問題に取り組む、モデルケースになり得るかもしれません。
近年、オーバーツーリズムは日本に限ったことでありません。国外の事例を参考にしながら、プロモーション・集客PRをしていくと同時に、受け入れ環境の整備も急務と言えます。
関連記事
外国人多すぎて困った→周りの観光地に分散だ!
京都市および京都市観光協会はVisaやVoyaginと連携し、伏見や大原などの隠れた周辺観光スポットにおける体験型メニューの開発に着手すると、2018年12月に発表しました。京都市は近年、訪日客による混雑で観光公害「オーバーツーリズム」に悩まされていることから、混雑緩和による観光客の満足度向上などを目指します。連携までの背景やインバウンドのコト消費需要を満たす体験サービス内容をふまえ、京都市のオーバーツーリズム対策を見ていきましょう。目次京都におけるオーバーツーリズム対策は急務京都市のオー...
外国人の迷惑行為で新宿ゴールデン街が悲鳴/人気と共に増える「観光公害」に早急な対応を
ディープな東京を味わえるスポットとして注目を集めている新宿ゴールデン街。一時は衰退の一途をたどっていましたが、近年訪日外国人観光客の急増の後押しもあり、かつての賑わいを取り戻しています。一方で、訪日外国人観光客の増加に伴って、これまでにはなかった新たな「観光公害」に直面しているというのも事実。この記事では、新宿ゴールデン街で起こっている観光公害とそこから学ぶべき対策を考察します。目次新宿ゴールデン街で問題視される観光公害訪日外国人観光客が集まるスポットの共通問題ナイトタイムエコノミーはイン...
まとめ:インバウンドの良い面、悪い面と向き合わないといけない
マレーシア人による偽造カードの話から、その他の外国人観光客の増加による被害、事件について紹介しました。
このように、訪日外国人増加に伴うメリットもあれば、デメリットもあることを踏まえて、それぞれ対策もしっかりしていきましょう。
<参照>
中国SNS「RED(小紅書)」最新情報セミナー:訪日ラボ社内勉強会の内容を特別に公開します【訪日ラボ トレンドLIVE! Vol.6】
短時間でインバウンドが学べる「訪日ラボ トレンドLIVE!」シリーズの第6弾を今月も開催します!訪日ラボとして取材や情報収集を行う中で、「これだけは把握しておきたい」という情報をまとめてお伝えするセミナーとなっています。
今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。
今回もインバウンド業界最大級メディア「訪日ラボ」副編集長が、10〜11月のインバウンドトレンド情報についてお話ししていきますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
詳しくはこちらをご覧ください。
→中国SNS「RED(小紅書)」最新情報セミナー:訪日ラボ社内勉強会の内容を特別に公開します【訪日ラボ トレンドLIVE! Vol.6】
【インバウンド情報まとめ 2024年11月前編】UberEats ロボット配達開始、万博需要見すえ大阪で ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月発行しています。
この記事では、主に11月前半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→UberEats ロボット配達開始、万博需要見すえ大阪で:インバウンド情報まとめ【2024年11月前編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」
スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。
「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!