飲食店のインバウンド対策9選!実施したほうがいい理由と食文化への対応も紹介

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インバウンド客が日本を訪れる大きな理由となっている日本食。その需要の高さから、飲食店インバウンド対策は欠かせない対策のひとつといえます。しかし、具体的にどんなことからはじめたらいいかわからない方も多いのではないでしょうか。

この記事では、飲食店が行うべきインバウンド対策について解説するほか、日本と外国の食習慣の違いについても紹介します。「どうインバウンド対策したらいいのだろう……」「なにからはじめるべき?」と悩んでいる飲食事業者は必見です。

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飲食店がインバウンド対策を実施したほうがいい「3つ」の理由

インバウンド客の増加に伴い、飲食店におけるインバウンド対策の重要性が高まっています。まずはインバウンド対策を行ったほうがいい理由を3つ解説します。

1. インバウンド需要の盛り上がり

現在、日本のインバウンド客数は回復を遂げ、コロナ前の水準を上回っています。

日本政府観光局JNTO)が発表している「訪日外客統計」によれば、2019年には約3,188万人の訪日数を記録しましたが、新型コロナウイルスの影響で2020年以降大幅に減少しました。その後、入国緩和や旅行需要の回復により観光客数は増加し、2023年には約2,500万人まで回復。2024年は9月時点で2023年の水準を超え、年間では3,500万人に達すると予測されています。

また政府は「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定し、2030年までに年間でインバウンド客6,000万人を目標としています。今後もインバウンド客は増え続けることが予想されるため、いまのうちからインバウンド対策をしておくことで集客アップが期待できます。

関連記事:岸田首相、インバウンドの地方分散「喫緊の課題」2030年に訪日消費額15兆円めざす

2. インバウンド客は「日本食」を楽しみに訪日している

観光庁が実施した「訪日外国人消費動向調査(2023年)」*では、「インバウンド客が訪日前に最も期待していたこと」として「日本食を食べること」が83.2%と最も多く、日本食が訪日の大きな理由となっていることがわかります。

寿司ラーメン・天ぷらなど定番の日本料理はもちろん、地方独自の郷土料理や居酒屋での食事体験も魅力のひとつとなっているようです。食文化を通じて日本の魅力を深く味わえるため、日本食は訪日の重要な要素となります。

関連記事:外国人が日本に来る理由ランキングTOP10!日本の食事とショッピング、どちらが人気?

*現在は「インバウンド消費動向調査」として実施

3. 日本人よりも客単価が高い傾向にある

観光庁が発表した旅行・観光消費動向調査(2024年7-9月期)を見ると、日本人国内旅行の1人1回当たりの旅行支出(旅行単価)は4万7,603円となっています。

一方で同じく観光庁が発表したインバウンド消費動向調査(2024年7-9月期)を見ると、観光・レジャー目的の訪日外国人1人当たりの旅行支出は21万7,883円と推計されています。なかでも飲食費は4万6,884円と推計され、日本人旅行者の旅行単価に近い金額となっています。

また飲食店向け予約管理システム「ebica」を運営するエビソルが同システムを利用する全国の飲食店を対象に実施したアンケートによると、昨今の急速な円安などを受けて、外国人観光客の来店により客単価に影響があるか聞いたところ、「単価が上がったと感じている」「どちらかといえば単価が上がったと感じている」という回答が全体の4分の1となる25.4%を占めました。

インバウンド客の単価はもともと国内客と比較して高い傾向にありましたが、近年では円安などの影響を受けてさらに単価が高まっています。

また国内客だけでは集客が期待しにくい平日の昼間にも集客できたり、ツアーなどで団体客が訪れたりすることもあるため、飲食店にとってインバウンド客は重要な収入源となっています。

関連記事:飲食店「外国人客増えた」57.7% 単価上昇も実感

【集客編】飲食店のインバウンド対策3選

飲食店インバウンド対策を行うには、まず自分の店舗を知ってもらう必要があります。まずは集客に有効な対策を3つ紹介します。

1. SNS

デジタルを活用したプロモーションとして有効なのは、SNSアカウントの運用です。SNSの活用によって見込み客へのアプローチが可能となり、より効果的なマーケティングにつながります。

SNSは、国や地域ごとに利用するツールが異なります。多くの国ではFacebookInstagram、X(旧Twitter)が盛んに利用されている一方、中国ではWeiboWeChat韓国ではNAVERの利用者数が多いため、地域ごとの特性を理解することが大切です。

プロモーションにおいては、「まずは認知を拡大したい」「コアなファンを作りたい」など、目的によって運用の方向性が変わります。フォロワー数や広告運用の有無など、アカウント運用の目的を定めておくと良いでしょう。

また、「訪日プロモーションに向いているSNS」は「利用されているSNS」とは少し異なります。広告を出す場合は、Xよりもターゲティング精度が高いFacebookInstagramなどが有効とされています。

一方で、中国では世界的に使われているSNSの多くが使用できず、個別の対策が必要です。訪日プロモーションに向いているSNSの例として、中国Instagramとも呼ばれる「RED小紅書)」が挙げられます。実際にREDでは日本企業の公式アカウント開設が相次いでおり、インバウンド対策として見逃せないツールの一つとなっています。

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2. 地図サービス

飲食店の集客においては、地図サービスの活用も重要です。

世界的にシェア率が高く、利用するユーザーが多い点においてもGoogleを優先するのがおすすめです。Yahoo!やBingなどでも地図サービスは提供されていますが、通常検索から地図検索へ移行する場合の親和性はGoogleマップが圧倒的に高い傾向にあります。

実際に、エリアの特性にあった市場に向けて店舗のキーワードを強化した結果、ターゲット層の来店数が増加した事例があります。

Googleマップはインバウンドだけでなく日本国内のユーザーも多いため、国内外のプロモーションを同時に行えるのもメリットです。Googleマップの効果的な活用方法については、「Googleビジネスプロフィール活用はここからスタート!【Googleビジネスプロフィール 基礎から学ぶ!】 」で紹介しています。

訪日ラボの姉妹メディアである口コミアカデミーでは、ほかにも飲食事業者にとって有益な情報を多数ご紹介しているので、ぜひご登録ください。

3. 口コミ予約サイト

飲食店の集客において、口コミ予約サイトで予約手段を増やすことも有効です。実際にインバウンド客が口コミ予約サイトを積極的に活用しているため、認知拡大や売上アップを狙うことも可能です。

たとえば日本国内で「中国食べログ」とも呼ばれている「大衆点評」は、いまや訪日中国人の2人に1人が利用しており、そのほかにも毎月4億9,000万人ものユーザーが利用する「トリップアドバイザー」など、飲食店が活用できる口コミサイトは多数あります。

なかでも大衆点評については、多くの訪日中国人に利用されている点に注目し、実際に広告戦略を練った結果売上目標を達成したという事例もあります。

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【受け入れ環境整備編】飲食店のインバウンド対策7選

飲食店に集客してインバウンド客に満足してもらい、良い口コミを書いてもらうなどポジティブな結果につなげるためには、インバウンド客の受け入れ環境を整備することも重要です。

インバウンド需要が高まるなかで周遊促進や消費拡大などのために、観光庁をはじめとする行政も公募事業などを通して受け入れ環境整備の支援を行っており、観光事業者にとっても受け入れ体制の強化は喫緊の課題となっています。

飲食店での受け入れ環境整備のために必要な対策を7つ紹介します。

4. ホームページ・予約システムの多言語化

ホームページや予約システムの多言語化によって、インバウンド客の言語の壁による不安を軽減できます。

現代では、多くの旅行者がオンラインで旅行商品の予約をしています。飲食店についても同様で、オンライン予約ができる食体験の需要は高まっています。アクティビティ予約サイトのKKdayによると、日本の体験商品のなかで、「食体験」の検索数は前年同期比で40%増加しているといいます。需要の高さとともに予約システムの多言語化が効果的であることがうかがえます。

インバウンド客が訪日前に事前に計画を立てたり、予約を行える環境を整えたりすることで、メニューやサービス内容をスムーズに理解でき、来店率や満足度の向上が期待できます。

関連記事:KKdayと食べログが提携、インバウンド向けに4万2,000店舗以上のグルメ予約が可能に

5. メニューの多言語化

観光庁が2024年に実施した「訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査」によると、日本食を楽しみに訪日するインバウンド客が困ることとして挙がるのが「施設等のスタッフとコミュニケーションがとれない(22.5%)」「多言語表示の少なさ・わかりにくさ(13.4%)」です。そのなかでもっとも困った場所が飲食店という結果が出ています。

せっかく来店してくれたインバウンド客に楽しんでもらうためにも、メニューなどの多言語化は優先度の高い対策といえます。

外国人向けのメニューを作成する際には、英語は必須で中国語(簡体字繁体字)や韓国語など複数の言語に対応できるとなお良いでしょう。

今すぐの多言語化が難しい場合、まずはメニューに写真を掲載するだけでも、料理のイメージが伝わりやすくなるためおすすめです。

関連記事:今すぐできる飲食店の多言語対応とは?おすすめの方法や対応すべき言語も紹介

6. 無料Wi-Fiの設置

無料Wi-Fiの設置は、インバウンド客にとって重要な要素のひとつです。国際ローミングや、プリペイドSIMカードなどさまざまな通信手段があるなか、無料Wi-Fiを利用している人もいるようです。先ほど触れた観光庁の「訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査」を見るとWi-Fiに関する課題感は薄れてきているようですが、地域や周辺環境によってはまだ対応が必要な場合もあります。

無料Wi-Fiが設置されているお店として認知されれば集客も期待でき、インバウンド客の満足度アップにもつながるかもしれません。

関連記事:日本のWi-Fi環境は不十分?インバウンド対策に無料Wi-Fiを導入

7. モバイルオーダーシステムの導入

最近ではQRコードなどを読み取り、自分のスマホで注文できるモバイルオーダーシステムを導入する飲食店が増えています。

外国語での接客やメニューの多言語化になかなか対応しきれない場合でも、モバイルオーダーシステムなら安心です。モバイルオーダーシステムのなかには、多言語に対応しているものもあります。メニュー名だけでなく説明なども多言語化されるため、よりメニューがわかりやすくなり、注文数の増加につながった事例もあります。

関連記事:セルフオーダー導入で、インバウンドの客単価・売上アップ!? 飲食店DXの成功事例を取材した

8. キャッシュレス決済への対応

欧米や韓国中国台湾などではキャッシュレス決済が一般的なため、クレジットカードなどのキャッシュレス決済への対応は優先度の高い施策といえます。

国によって普及しているキャッシュレス決済ツールは異なるため、それぞれ特性を捉えるのが重要です。欧米ではクレジットカードのタッチ決済中国ではWeChat Pay、AlipayといったQRコード決済やデビットカード(銀聯カード)などがあります。

飲食店で導入する際には、対面決済に対応できるキャッシュレス決済の代行会社を利用するとスムーズです。決済サービスや決済端末もさまざまなので、お店の構造や営業サービスに合ったものを選びましょう。選び方については「インバウンド対策に必要なクレジット・QRコード決済への対応とは」の記事で紹介しています。こちらもあわせてご確認ください。

9. ハラル・ベジタリアン・ヴィーガン対応

多様な文化的背景や信条を持つインバウンド客が、安心して食事を楽しめる環境を提供することも重要な対策のひとつ。とくにムスリム(イスラム教徒)の訪日客にはハラル対応、宗教や健康などを理由にベジタリアンヴィーガンの食事を選ぶ訪日客には専用のメニューが必要です。

一般社団法人ハラル・ジャパン協会によると、イスラム教徒は世界中に18.5億人いるといわれていて、そのうちの10億人がアジアで暮らしているそうです。また、観光庁が2024年に発行した「ベジタリアンヴィーガンムスリム旅行者おもてなしガイド」によると、ベジタリアン人口は毎年増加傾向にあり、2023年時点では世界で約5.3億人に達しました。ベジタリアンヴィーガンのうち約75%がアジアの人々で占めるといわれています。

アジア圏からの訪日客は増加傾向にある一方、多くの店舗では対応しきれていないのが現状です。対応することで集客アップが期待できます。

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10. スタッフ向け外国人対応研修

インバウンド客が増加するなか、言語や文化の違いに対応できる接客スキルも必要とされています。接客に使用する基本的な英語フレーズの習得や多言語での接客方法、食の多様性などの異文化理解を深められる研修や、マニュアルを用意するのも一案です。

スタッフがインバウンド客に対してスムーズかつ丁寧な対応ができることで、コミュニケーションミスやトラブルを防げます。また、外国人対応に慣れたスタッフの存在は店の信頼性を高め、リピーターの増加や口コミによる集客効果も期待できます。

関連記事:外国人対応の研修とは | 接客業の現状・3種のツール・おもてなしの品質を向上させる研修サービス2選

意外と知らない!?日本とは違うインバウンド客の食習慣4選

日本では当たり前の食習慣でも、インバウンド客には好まれないことが実は多くあります。知っておけば、よりインバウンド客の満足度アップにつながるかもしれません。その例を4つ紹介します。

1. 中国や台湾では冷たい水はNG?温かいものが好まれる

中国台湾では、「冷えは健康の大敵」という東洋医学の考えが深く根付いているため、体を冷やす冷たい料理や飲み物よりも、温かいものが好まれる傾向があります。

中国台湾からの訪日客に氷の入った冷たい水を提供するのは避け、夏でもお湯か常温の水を用意するといいでしょう。

2. お通しはトラブルになる可能性も?

日本では居酒屋などに行くと頼んでいなくても当たり前のように「お通し」が運ばれてきます。お通しは外国にはない習慣で、注文していない料理が勝手に運ばれてくるうえに料金が発生するため、困惑する訪日客も多いようです。

たとえば韓国では、キムチやナムル、卵焼きといったおかずは追加料金なしでおかわりできる店が多いため、有料のお通しには馴染みがありません。お通しを出す場合は、トラブルを避けるためにも日本独自の文化であることを意識し、事前にシステムについて説明しておくと安心です。

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3. 日本食は「量」が少なくて物足りない?

実はインバウンド客の多くが日本食に対して、ボリュームの少なさに不満を抱いています。外国に比べ、日本の飲食店の料理は全体的に量が少ないため、物足りなさを感じている人が多いようです。

たとえばアメリカでは日本の大盛りサイズが一般的で、1人前の量が日本における3人前程度、中国でも日本の1.5倍くらいの量が腹八分目といわれています。

そのため、メニュー上に写真を掲載して量をわかりやすく伝えたり、肉のグラム数を記載したりといった工夫をしておくことで、インバウンド客と店側の認識の齟齬を減らせるでしょう。

4. 汁物にはスプーンがあると◎

味噌汁などの汁物は、スプーンを一緒に提供すると喜ばれます。日本では汁物を直接お椀から飲むのが一般的ですが、欧米などでは汁物はスプーンですくって食べるため、スプーンがあれば慣れ親しんだ方法で安心して食事を楽しんでもらえるでしょう。

また、韓国台湾では器を持って食べる習慣がなく、韓国料理のチゲや台湾料理の酸辣湯(サンラータン)などの汁物もスプーンを使って食べるため、一緒に用意するのがおすすめです。

飲食店のインバウンド対策で日本の魅力を高めよう

今後ますます増加が期待されるインバウンド需要。多くのインバウンド客が日本食を楽しみに訪日しているため、個々の飲食店の魅力や利便性がさらに高まれば、日本は観光地としてもっと魅力的な国になるに違いありません。

多言語対応や多様な食事ニーズへの配慮、スタッフの接客などによってインバウンド客の受け入れ環境を整備することで安心感を高め、顧客満足度の向上だけでなく、リピーターの増加や口コミによる集客拡大も期待できます。

おもてなしの心をもって多様なニーズに応え、日本の飲食店の魅力を発信していきましょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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