越境ECは「売れなくてもいい」コロナ禍の今、海外に向けて出品すべき本当の理由:BEENOSグループ代表取締役 インタビュー

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コロナ禍によって世界的にヒトの動きが制限されている中で、「モノの動き」が活発になっています。

インターネット通販プラットフォームを通して行われる国際的な電子商取引「越境EC」は、今年は巣篭もり消費などの追い風もあり、市場が急激に拡大しています。

その一方で、海外に商品を売ったことがない自治体や事業者は、法律や言語の壁を前に及び腰になっているケースも多いのではないでしょうか。

今回訪日ラボではEC事業周辺のサービスを手掛け、20年あまりのノウハウを持つBEENOSグループの代表取締役兼グループCEOの直井聖太氏に取材を行い、中国やASEANにおける越境EC市場の可能性、越境ECインバウンド向けプロモーションとして機能すること、そしてこれから越境EC参入を検討する事業者へのメッセージを聞いてきました。

コロナ禍の今年、世界で売れた日本の商品ランキング:「日本ロス」消費が加速、第三次越境ECブームの内訳とは

訪日ラボ編集部は、11月10日に行われた、BEENOS株式会社による2020年の越境ECランキングの発表会に参加しました。ランキングは、BEENOSグループの商品代理購入サービス「Buyee」における2020年1月1日~2020年9月30日の売上及び前年同期比のデータをもとに、独自に算出されたものです。本記事ではBEENOSが発表した越境ECランキングの詳細をお伝えします。インバウンド対策にお困りですか?「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備...


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越境EC市場の可能性:需要爆発が間近に迫るASEAN

_越境ECと聞くと中国市場のイメージが強いように思われますが、他の地域が持つポテンシャルについてはいかがお考えでしょうか

まず、近年の中国の経済成長スピードは著しいものがありました。そしてその経済の成長度合いによって、中国人が日本の商品に求める物にも変化が読み取れます。

第一次越境ECブームが来たときにはベビー用品が売れていきました。所得水準が現在と比べると低く、為替も円高になったタイミングだったため、この後に続く第二次、第三次越境ECブームと比較すると結局一番お金がかかった時だったんですね。そのため、お金を優先的にかけるのは品質面が安全・安心なモノ、自分たちの子どもに向けて投資するという考え方がありました。

その後為替が変動して円安に、さらに中国経済の成長に伴って所得水準が向上したことで、日本の美容用品や家電などが飛ぶように売れるいわゆる「爆買い」が始まり、第二次越境ECブームに移っていきました。

越境ECブームの推移。BEENOSはコロナ禍によって今「第三次」越境ECブームが到来したと分析する BEENOS発表資料
▲越境ECブームの推移。BEENOSはコロナ禍によって今「第三次」越境ECブームが到来したと分析する:BEENOS発表資料


このような経済成長にともなう消費者の購買傾向の変化は、ASEAN地域の今後にも同じことがいえるのではないかと思っています。

今のASEANは、少し前の中国市場と共通点があるように思います。つまり「爆買い」が起きるより少し前の状況ですね。

中国の第一次越境ECブームの時と同様に、現在の東南アジアではベビー用品がよく売れています。また、購入者は比較的富裕層であることが多く、時計などの高級品も売れています。ASEANの経済成長にともなって、この購買層の裾野は急激に広がってくるでしょう。

_インバウンドにおいてもASEANの成長性は注目されていますが、越境ECも同様の傾向がみられるのですね

経済成長による所得水準の向上にともなって日本のモノやサービスが売れるようになる現象は、越境ECインバウンドも変わらないのではないでしょうか。

ASEANで次に起きる爆発的な需要増加のタイミングは、越境EC市場と訪日市場のほぼ同時か、越境ECが若干早いタイミングで訪れるのではないかと予想しています。

外国人が日本のモノを選ぶ理由

_「ベビー用品」が売れるなど、日本製品を買う理由はやはり品質の高さにあるのでしょうか

かつては日本といえば家電に強いイメージがありましたが、残念ながら家電はマーケットの中心が日本ではなくなりました。

その後日本ブランドに対するイメージとして残ったのが「信頼」だと私は考えています。ベビー用品や、直接人の肌につける美容系用品が人気な理由もそこにあります。

また、「信頼」と同様に日本ブランドが持つ武器としてあげられるのが、エンタメなどのコンテンツです。

例えばアメリカでは日本のホビー関連に興味を持っている人が多いです。コロナ禍の影響で自宅で動画を見る機会が増えたことによって、日本のコンテンツに触れる機会も増えた結果だと考えられます。そのため、今年は日本のコンテンツに関連するグッズもよく売れるようになっています。

SNSで個人が強い影響力を持つ、中国とASEAN

中国とASEANには共通点があります。それは経済の成長がインターネットの発展とともにあったということです。

そのため、日米以上に個人の情報発信力とインターネットとの結びつきが強くなる環境ができあがりました。

実際、中国ではライブコマースなど日米にはみられない独自の文化が発達しています。また、東南アジアではFacebook上で個人間の売買がよく行われています。

中国や東南アジアでインフルエンサーマーケティングが効果的なのも上述の背景があります。

日本人の感覚からすると、個人間の取引に不安を感じる人は多くても、TV ショッピングでは思わず購入してしまう人もいるのではないでしょうか。一方中国やASEANではメディアが大規模かどうかよりも、ソーシャルメディア上の情報から信頼できるかどうかを判断する消費者が多いようです。

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越境ECをはじめるべき理由:今、最も大事なことは「忘れられないこと」

_越境ECで海外へ販路を拡大したい事業者にとって、SNSでの情報発信も今後重要度を増していくでしょうか

そうですね。新規のユーザーだけでなく、一度商品を手にしてもらったユーザーとの関係性の構築については今後より重要になるでしょう。

これだけインターネットが発達し情報が氾濫している今、一番大事なことはユーザーに「忘れられないこと」だと思います。

商品を購入してもらってそれで終わりではなく、そのあともユーザーにブランドを想起してもらう工夫が必要です。SNSはその手段の一つですね。

_インバウンド向けPRにも通じるところがありそうですね

インバウンドも同様に、その目的地のファンになってもらうには関係性を保つことが重要ではないでしょうか。

しかし、多くの外国人にとって訪日旅行は気軽にできるものではないため、次の訪日旅行まで数年先ということも珍しくありません。

その時、その観光地ならではのグッズの販売は有効な手段の一つではないでしょうか。グッズは自分の手元にあることによって、そのグッズに関する思い出や記憶が蘇ります。

実際、コロナ禍で日本に旅行に来れなくなったことで、海外から日本のアニメや漫画などのコンテンツに関わるグッズが売れる「日本ロス」消費ともいうべき消費傾向がみられています。

そして、越境EC結果として買われなかったとしても良いと思っています。

消費者が商品を目にして買おうかどうか悩んでいるような時間があったとして、その時間も関係構築という観点から見れば非常に価値のあることです。もちろん、商品が売れることに越したことはありませんが、本質は消費者から「忘れられない」ことです。

あとは、「買いたい時に買える環境」を作っておくことも大事ですね。

SNSが発達した今、普段行っている情報発信やキャンペーンなどが、なにかのきっかけで海外のSNS上で「バズる」こともあります。

その時、自社商品の販売ルートを構築できていなければそれまでですが、買える環境が整っていればそこから大きな売り上げにつなげることもできます。

コロナ禍の現在、情報を発信しなければ海外の方から忘れられてしまいますから、情報発信を継続することと、目に止めてもらった時に買ってもらえる環境を維持しておくことが重要でしょう。

BEENOSグループ 代表取締役 執行役員社長 兼 グループCEO 直井聖太氏
▲BEENOSグループ 代表取締役 執行役員社長 兼 グループCEO 直井聖太氏

これから越境ECに進出を検討する事業者に対して

_まだ海外であまり知られていない商品を、効果的に認知度を上げる方法はありますか?

インフルエンサーを起用したSNSでのプロモーションや、海外のリアル店舗で催事を行うなど、リアルとソーシャルの両面でいくつか方法はあると思います。

その中でも、海外で人気のある日本のコンテンツとのコラボがやはり強力な手段ではないでしょうか。

商品企画・開発などを行う弊社のグループ会社、モノセンスが手掛けた事例では、コスメブランドであるラヴィジアとポケモンをコラボさせた商品が、外国人を中心に非常に人気を博しました。

ポケモンにコスメのイメージはないと思われるかもしれませんが、ポケモンの持つ側面の一つであるかわいらしいイメージがコスメブランドとうまくマッチした事例だと思います。

しかし、コンテンツとのコラボはライセンサーとの複雑な契約が絡むため簡単ではありません。弊社の場合では、モノセンスが事業者様とライセンサー様との間を取り持ち、できる限りシンプルにしています。

ラヴィジア「POKEMON Cosmetic Series」フェイスマスクやリップクリームなどを展開:ラヴィジア公式webサイトより
▲ラヴィジア「POKEMON Cosmetic Series」フェイスマスクやリップクリームなどを展開:ラヴィジア公式webサイトより

_越境ECというと、販売先の国の文化や法律を熟知する必要があるように思います

確かに国によってレギュレーションが違ってきますので、それに合わせて対応していく必要はありますね。特に海外のマーケットプレイスはルールが厳格で、日本のマーケットプレイスよりも厳しいことがあります。

それらのルールに一つずつ対応していくことはとても大変であり、私たちのようなソリューションを提供する企業に依頼するというのは一つの手だと思います。

当社では各国のレギュレーションに関するデータや、現地の事情に精通したスタッフがいますので、それらを駆使しながらクライアントさんと一緒に解決策をつくっていくという形が多いです。

越境EC進出にあたって、良いソリューション企業を選ぶポイントは

_越境ECをはじめる上で、いいソリューション企業を選ぶポイントはありますか?

最初から固定費を高く請求する会社さんとお付き合いするのは厳しいですよね。かつての中国ECではそういう業態があったので、なかなかハードルが高い状況がありました。

まずは一歩目を踏むことが大事で、仕組みとかどうやるかというよりも一番大事なのはマーケティングを行うことだと思っています。

自社の商品の認知度を拡大していくことに予算を投じていくべきであって、越境ECをはじめること自体に大きなコストがかかってしまうのは継続しないと思います。

また、サポート範囲に関しては、やはり一気通貫のワンストップで依頼できるところが最初はいいのかなと思います。また、やるべきことがシンプルにまとまっているかどうかも重要ではないでしょうか。

当社の目標は、日本の事業者様が国内向けにEC事業を行うのと同じような感覚で越境ECをはじめられることですので、この辺りは自信を持っておすすめできると思います。

「まずはやってみる」ことが大切

_最後に、越境EC事業をこれからはじめようと検討している事業者さんへのメッセージはありますか?

僕たち日本人というのは海外に対してハードルを感じてしまいがちなのかなと思っていまして。

越境ECをはじめることに対して、実はそこまで身構える必要はありません。今では越境ECに関する多くのソリューション企業がそろっているため、ハードルはひと昔前と比べると格段に低くなっています。「まずはやってみよう」という気持ちでトライしてみても良いのではないでしょうか。

今までの訪日インバウンド需要に対応してきた日本の事業者ですから、越境ECに関しても全く問題なく対応できるはずです。まずは気軽にやってみてはいかがでしょうかというのはお伝えしたいですね。

参考

BEENOS 公式WEBサイト

・ラヴィジア公式WEBサイト:POKEMON Cosmetic Series

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2023年は2,500万人の外国人旅行者が訪れた日本のインバウンド市場。コロナ前の2019年に迫る勢いの回復をみせており、2024年の訪日外国人数は3,000万人を上回るとの予想もあります。

日本を訪れる外国人旅行者の間で、特に人気が高いアクティビティが「桜の鑑賞」です。桜の開花時期に合わせて日本を訪れる外国人も多く、日本の重要な観光資源の一つとなっています。

そこで訪日ラボでは、「『桜シーズン』に向けたインバウンド施策のポイント」と題したセミナーを開催しました。
登壇者としては、インバウンドの動向に詳しい訪日ラボ インバウンド事業部長 川西哲平に加え、台湾に本社を置くビッグデータカンパニーVpon JAPAN株式会社営業本部 会田健介氏をお呼びし、「桜」に関するインバウンドデータをもとに、訪日外国人旅行者の最新動向と、「桜のシーズン」に集客を向上させるためのポイントを解説しました。

本セミナーは大好評につきアーカイブ配信を行っておりますので、ぜひご覧ください。

詳しくはこちらをご覧ください。

「桜シーズン」に向けたインバウンド施策のポイント【セミナーレポート】

【インバウンド情報まとめ 2024年3月】2023年年間宿泊者数 1位は韓国 他

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この記事では、2024年3月版レポートから、2月〜3月のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。

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インバウンド情報まとめ 2024年3月

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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