コロナ後、世界の旅行者の「半分以上」が実践したい観光の形とは:国内外の事例も紹介

公開日:2020年12月29日

新型コロナウイルスの感染拡大によって、人々の意識や行動が変わり、旅行のスタイルにも影響が出ています。

そのなか、「サステイナブルツーリズム(持続可能な観光)」は今後の観光のあり方の一つとして、世界中からの注目を集めています。

サステイナブルツーリズムとは、訪問客や観光業界、観光地の環境やニーズに対応しながら、現在および将来の経済、社会、環境への影響を十分に考慮する観光のかたちです。

サステイナブルツーリズムは、観光業が抱える「オーバーツーリズム」問題を解決し、観光地の持続可能性を保持する取り組みとして注目されています。

本記事では、サステイナブルツーリズムの意味や、サステイナブルツーリズムに取り組む国内外の事例を整理します。

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サステイナブルツーリズムとは

サステイナブルツーリズム(Sustainable Tourism)は直訳すると「持続可能な観光」という意味で、国連世界観光機関(UNWTO)は、サステイナブルツーリズムを以下のように定義しています。

訪問客、業界、環境および訪問客を受け入れるコミュニティーのニーズに対応しつつ、現在および将来の経済、社会、環境への影響を十分に考慮する観光

サステイナブルツーリズムが従来の観光と異なるのは、観光客でだけではなく、地域や住民に対してのメリットも考慮している点です。

そのためサステイナブルツーリズムでは、観光客が観光地でコンテンツを消費し楽しむだけでなく、地域の住民や企業のニーズにも対応し、地域経済や環境、社会文化に好影響を与えることが求められています。

観光客増え過ぎ問題「オーバーツーリズム・観光公害」が世界中で警鐘/を国連世界観光機関(UNWTO)が提唱する新常識「持続可能な観光(サステイ

近年では「オーバーツーリズム」「観光公害」という言葉がよく聞かれるようになっています。今年9月に行われた「ツーリズムEXPOジャパン2018」でも、国連世界観光機関(UNWTO)事務局長、世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)理事長の講演や、世界12か国の観光大臣による会合など、世界の観光リーダーがこの問題に言及しています。今回は「開発のための持続可能な観光の国際年」の成果を中心に、オーバーツーリズムに陥らない理想の状態について紹介しながら、オーバーツーリズムに取り組むメリットを考察します。...


注目される理由:オーバーツーリズムとコロナ禍

従来の観光から、サステイナブルツーリズムへの転換が目指される背景には、観光業が長年抱えている「オーバーツーリズム」課題があります。

オーバーツーリズムとは、観光地に許容範囲以上の人が集中する状態を指しています。

観光地のキャパシティをはるかに超える大勢の観光客が集まることで、大気汚染、ごみ問題などの環境悪化や、住民生活の質と観光地の価値の低下にもつながります。

このような課題が問題視されはじめ、観光地は観光客を集客するだけでなく、自身の地域の文化や自然を保護する「持続可能な観光地づくり」が求められるようになりました。

また、新型コロナウイルスの感染拡大により、旅行者の意識や行動も変化しており、旅行でのサステイナブルな意識が高まる傾向にあります。

ブッキング・ドットコムが28ヶ国、2万人の旅行者に対するオンラインアンケートと、ユーザーの検索データにより、2021年以降の旅行トレンドを予測しました。

調査結果によると、53%の旅行者が「将来はよりサステイナブルに旅行したい」と回答しており、69%の旅行者が「旅行業界に対して、よりサステイナブルな旅行オプションを提供すること」と答えています。

また、「すべての移動・渡航制限が解除された際には、旅行先でのゴミの削減やリサイクルを検討する」と答えた旅行者は53%であり、55%が「自身が支払った金額がどのように現地のコミュニティに還元されているのかを知りたい」と回答しています。

こうした調査結果から、サステイナブルツーリズムの概念は旅行者の間でも浸透しつつあり、旅行者は自身の実践だけではなく、観光業者にもサステイナブルツーリズムへの取り組みも求めています。

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サステイナブルツーリズムの4つの指標

世界持続可能観光協議会(GSTC)は、持続可能な観光の基準を以下の4つの指標に分けています。

  • 持続可能なマネジメント

官民と市民が参画し、持続可能な観光開発を推進するための組織をもっていることや、長期的なマネジメント戦略を策定し実施すること、また来訪客の観光満足度などのフィードバックを基に計画を改善することなどが求められます。

  • 社会経済のサステナビリティ

観光による地域経済への効果を定期的に測定すること、観光に関わる雇用を支援すること、全ての人が差別や搾取を受けずに安全に過ごすことのできる地域づくりなどが求められます。

  • 文化的サステナビリティ

文化的資産や工芸品、音楽芸能などの無形遺産の保護に取り組むこと、文化的な観光地への観光客の来訪を管理する体制を整えること、来訪者に文化や自然の重要性について解説情報を提供することなどが求められます。

  • 環境のサステナビリティ

観光による自然環境への影響を監視し対策を講じること、自然的な観光地への観光客の来訪を管理する体制を整えること、エネルギー消費の削減やごみの管理など観光による公害を抑制することが求められます。

日本国内での取り組み

ここからは、実際に日本国内で行われている、サステイナブルツーリズムの実現に向けた取り組みを紹介します。

1. 日本エコツーリズムセンター

NPO法人日本エコツーリズムセンターは、2014年度から独立法人環境再生保全機構による地球環境基金の助成を受けながら、「サステイナブル・ツーリズム国際認証」取得に向けた研修や、地域に向けた持続可能な観光地づくりの支援などを行っています。

「サステイナブル・ツーリズム国際認証」についての研修では、日本エコツーリズムセンターは前述したGSTCが定める国際基準についての講義や、認証を受けるためのサポートを行っています。

また、サステイナブルツーリズムの概念を普及させるために、2014年度から2018年度までに年に1回全国フォーラムを開催していました。

2. 群馬県みなかみ町

群馬県みなかみ町は、観光のコンテンツとして、自然を守りながら観光客に楽しんでもらう「ラフティング」を取り入れており、サステイナブルツーリズムの成功例として注目されている地域です。

具体的には、町内のアウトドア会社同士で自然環境の在り方について議論し、環境に配慮したコンテンツづくりや、普通救命講習等の資格を保有したガイドを採用し安全に配慮すること、ラフティング以外にも和太鼓や田植えなど訪日外国人に人気の高い文化体験ツアーも提供するなどの施策を実践しています。

海外での取り組み

サステイナブルツーリズムは国内外問わず注目されており、海外でも多くの取り組みがなされています。

1. タイ:政府観光局のウェブサイトで情報発信

タイは、TAT(タイ国政府観光局)のウェブサイトでサステイナブルツーリズムについての情報発信をおこなっています。

サイト内では、観光テーマの一つとしてサステイナブルツーリズムをあげており、観光事業者向けに「TATセブン・グリーンズ・コンセプト」として、持続可能な開発目標に基づいた観光を分かりやすく説明しています。

他にも、観光客に向けて「グリーンツーリズム観光ルート10選」が紹介されており、農漁業体験を楽しみながら地域住民との交流ができるツアーなどサステイナブルツーリズムを意識した観光コンテンツが紹介されています。

2. フィンランド:サステイナブルツーリズム認証制度を開始

フィンランド政府は、観光業界の持続可能な発展を促進する「サステイナブル・トラベル・フィンランド(Sustainable Travel Finland)」を2019年の夏より開始しています。

国プロジェクトでは、積極的にサステイナブルツーリズムに注力する企業・地域を認証することで、旅行会社や旅行者がサステイナブルツーリズムを実践しやすくなることを狙いとしています。

認証を受けるためには、持続可能な開発についての知識やそれに基づいた開発計画を有すること、観光地との協働などが求められます。

認証を受けた企業・地域は、持続可能な観光開発に向けた様々な支援を受けられます。

さらに、フィンランド政府観光局のホームページ「VisitFinland.com」でも紹介され、サステイナブルツーリズムを行っている地域や企業として国内外にアピールできます。

3. ニュージーランド:環境に配慮したホテルの取り組み

ニュージーランド南部・クイーンズタウンにあるホテル「Sherwood」は、サステイナブルツーリズムの成功例として注目を集めています。

まず、このホテルは地産地消を実施しています。

ホテル内のレストランでは99%ニュージーランド産の食材を使用しており、そのうち野菜の40%は敷地内にある畑で採れたものを使用しています。

このような地域の農産物を観光業で積極的に使用することは、地域経済への貢献につながり、持続可能な観光に向けた取り組みといえます。

また、食材の輸送から生じる二酸化炭素を削減することを図り、ドリンクの60%は家族経営のワイナリーから商品が提供されています。

さらにこのホテルでは、電力を施設内のソーラーパネルでまかなうなど、環境にも配慮した運営をおこなっています。

こうしたサステイナブルツーリズムの実践は世界各国の旅行者から好評を得て、2019年にExpediaが発表した「eco-friendly stays」TOP10に選出されました。

持続可能な観光地づくりへ

サステイナブルツーリズムは、オーバーツーリズムからの反省で、観光客の満足度だけでなく、観光地の経済、社会、環境への影響も考慮した観光の形です。

サステイナブルツーリズムの概念が広がっており、国内外で持続可能な観光の実現に向けた取り組みが行われています。

新型コロナウイルスで観光のあり方が議論されている現在、コロナ禍の収束を見据えて新しい観光のコンテンツを造成する際には、持続可能かどうかという視点を持つことが不可欠になるのではないかと考えられます。

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<参考>

Expedia:Expedia's 10 most recommended eco-friendly stays from around the world, according to our travellers

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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