サステイナブルツーリズムとは?定義・国内の先進事例を紹介

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サステイナブルツーリズム」という言葉は聞いたことがあるけど、詳しくは知らないという方も多いでしょう。

サステイナブルツーリズムとは、「持続可能な観光」を意味する言葉です。

マスツーリズムによる観光公害や持続可能な社会を目指す世界の動きによって、再度注目を集めています。

また、2030年達成を目標としているSDGには観光業の力が必要ということで、早急に取り組むことが求められています。

一体、サステイナブルツーリズムとはどんなもので、具体的にどのようなことをすれば良いのでしょうか。

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サステイナブルツーリズムとは?

サステイナブルツーリズムとは、「観光地の本来の姿を持続的に保てるよう、観光地の開発やサービスのあり方を見定め旅行の設定を行うこと」を指した言葉です。

観光産業は第二次世界大戦後に一般大衆へと拡大し、近年では観光地にあまりに多くの人々が集めることで自然破壊や環境汚染などが見られるようになりました。

その事態を防ぐために考えられたのが、サステイナブルツーリズムです。

近頃よく耳にするようになったSDGsとも非常に強い関わりがあり、国連世界観光機関SDGs達成には観光業が強く関わっていることを明言しています。

国連世界観光機関が開発した「観光地が最低限順守すべき項目」である「GSTC-D」は、以下の4つで構成されています。

  1. 持続可能なマネジメント
  2. 社会経済のサステナビリティ
  3. 文化的サステナビリティ
  4. 環境のサステナビリティ

観光事業者は、以上の4つを意識して今後の観光業に取り組むべきでしょう。

それぞれの詳しい内容については観光庁・UNWTO駐日事務所が発行した『日本版 持続可能な観光ガイドライン』で紹介されています。

世界の観光業界で起きている問題

サステイナブルツーリズムが考え出されたきっかけとして、世界的な観光業界の問題があったことが挙げられます。

ここでは、観光公害の例として以下の3つを紹介します。

  • 観光客数増加による交通渋滞
  • マナーの悪い観光客によるゴミ問題
  • ゴミや日焼け止めによる水質汚染問題

これらの問題を減らし、なくしていくためにサステイナブルツーリズムに取り組む必要があるのです。

関連記事:オーバーツーリズムとは?「観光大国」こそ考えるべき問題と対策 持続可能な観光のために

観光客数増加による交通渋滞

観光地では、観光客数が増加することで交通渋滞や人混みが発生しています。

それによって、地域住民が移動するときなどに支障が出ているのです。

原因となっているのは、格安航空会社の普及やさまざまな旅行サービスの登場、SNSの発展等による観光客数の増加です。

観光事業としては客数を増やしたいですが、そもそも観光事業を支える地域住民が離れてしまったら本末転倒です。

目先の利益ではなく、持続可能な観光地となるような取り組みが必要となるでしょう。

マナーの悪い観光客によるゴミ問題

観光客が集まれば、それだけゴミも発生するため、観光地はゴミの処理に追われています。

実際に、食べ歩きがひとつの楽しみとなっている京都の嵐山では、観光客が訪れるほどゴミが増えるといわれています。

ゴミ箱を多く設置してしまうと景観を破壊することになりますが、ゴミ箱を設置しなくてもポイ捨てによる景観破壊が起きます。

しかし、ポイ捨てされずにゴミが持ち帰られたとしても、ゴミ自体がなくなるわけではなく、ゴミは移動するだけです。

観光業の盛況とゴミ問題は切り離せないもので、常に観光事業者の頭を悩ませているでしょう。

ゴミや日焼け止めによる水質汚染問題

ゴミや日焼け止めによる水質汚染問題も深刻です。

観光客が増加することで、海岸にゴミが増えることはもちろんですが、日焼け止めによる成分によっても水質が汚染されています。

その結果、美しい珊瑚を破壊することにつながったり、食用魚に影響を与えることで人体に害を及ぼしたりします。

観光振興と水質汚染問題解決を両立させることが今後の課題となります。

サステイナブルツーリズムのためにやるべきこと

具体的にサステイナブルツーリズムのために観光地がやるべきこととして、環境、文化、そしてそこに住む住民への配慮が必要となります。

関連記事:観光公害から住民を救う?政府が本腰入れる「マナー啓発動画」の準備&持続性可能性を視野に入れた評価指標

環境へ配慮する

観光事業を持続的に発展させるには環境への配慮は欠かせません。

環境に配慮しない観光事業は、自然資源を破壊し、観光地としての魅力を損ない、結果的に観光客が訪れなくなります。

環境保全に向けて取り組めるものとして、以下のようなものがあります。

  • 入場規制を設け、ゴミ問題や水質汚染問題をコントロールする
  • 入場料を設け、環境保全のための資金に充てる
  • 観光客を分散させ、1つの観光地にかかる負担を軽減する

文化へ配慮する

観光資源には、自然だけでなく文化的なものも含まれています。

サステイナブルツーリズムに取り組むなら、文化的な観光資源にも配慮しなければなりません。

具体的には、以下のような取り組みが文化へ配慮した取り組みとして挙げられます。

  • 景観を守った色のゴミ箱を設置し、文化的景観を守る
  • 入場制限を設け、文化的な活動が通常通り開催できる環境を作る
  • 多言語の看板等を用意し、文化的な資源を美しいままにする

さらに、何か問題があればガイドや観光客が報告できる管理体制を取ることも大事でしょう。

観光客がどれだけ増加しても、文化的な活動等が制限されないよう取り組むべきです。

住民へ配慮する

サステイナブルツーリズムにおいては、住民への配慮も欠かせません。

観光客増加による交通渋滞やゴミ問題等は、観光業だけでなく住民の暮らしにもダメージを与えています。

一般住民の伝統的な暮らしが観光地化してしまうことで、住民が住みづらさを感じるケースもあります。

観光から住民を守るためには、以下のような施策が考えられます。

  • 私有地であることを明記した多言語看板を設置し、観光客が足を踏み入れることを防止する
  • 歩行者を優先する道を作り、住民の移動にできるだけ影響を出なくする
  • 厳しいルールを設け、観光客によって住民の暮らしが阻害されないようにする

観光事業は、住民や街の協力がなくては成り立ちません。

最も大切にすべき住民たちを無視して事業を行うことがないようにしましょう。

サステイナブルツーリズムの取り組み事例

ここではサステイナブルツーリズムの取り組み事例として、以下の3つを紹介します。

  • 岐阜県の取り組み
  • 徳島県の取り組み
  • パラオの取り組み

取り組み事例を参考にすることで、すぐにでも取り入れられるものが見つかるでしょう。

関連記事:オーバーツーリズムとは?|問題点・対策・取り組み事例を紹介

岐阜県の取り組み

岐阜県は、日本国内におけるサステイナブルツーリズムの先進事例として日本政府観光局に取り上げられています。

SDGsやサステイナビリティツーリズムが語られる前から、岐阜県のブランド価値としていたものが時代にマッチしていました。

取り組みはシンプルで、「これまで先人たちが大切に受け継いできてくれた伝統や文化を大切にする」というものです。

岐阜県白川村は、「2020年サステイナブルな旅行先トップ100(2020 Sustainable Top 100 Destinations)」にも選出されています。

白川村では観光客が増加した際に予約制や車の乗り入れを禁止することで、観光公害等を防いできました。

これからはこれらの資源を下の世代に受け継ぎつつ、国際的に認められるよう活動していくということです。

徳島県の取り組み

徳島県の中部に位置する上勝町は、日本の伝統的な風景が残る町です。

2003年に日本の自治体で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」をした上町町は、人口が1,500人にも満たない小さな町にもかかわらず、国内外から注目されています。

「ゼロ・ウェイスト宣言」とはそれまで焼却処分をしていたゴミを「新たな資源」として考え、循環させていくことでゴミをださないようにするという考え方です。実際に同地域ではゴミを46に分別し、リサイクルできるものを増やしています。

その活動が世界から注目を集め、世界的な旅行ガイドブックである『ロンリープラネット』でも紹介されています。

上勝町内には、ゼロウェイストの暮らしを体験できる施設「ゼロウェイストセンターWHY」もあります。

環境問題を地域の人が自分ごとと捉えていること、町が予算や人員を配置してサポートを行っていること、そして行政主導でたち上げた「ゼロ・ウェイストアカデミー」で知識と知見を蓄積し、関わる人が変わっても変わらず「ゼロ・ウェイスト」を推進できるようにしていることが特徴といえます。

パラオの取り組み

パラオ誓約導入を知らせるページ
▲パラオ誓約導入を知らせるページ:駐日パラオ共和国大使館より編集部スクリーンショット

パラオは、水質汚染や環境破壊から観光資源を守るために徹底的な取り組みを行っています。

具体的には以下のような取り組みです。

  • 誓約書を用意し、入国前に環境保護を誓った人のみを入国させる
  • 珊瑚に害を与える日焼け止めクリーム等の禁止
  • 観光客から環境税を徴収し、環境保護の財源に充てる

なかでも特徴的なのが「誓約書」であり、誓約書に違反した場合には最大で日本円にして1億円の罰金が科されます。

パラオの自然資源は、地球上を見てもほとんどないほど昔のままの姿を留めています。

これはパラオに住む人々の努力や、自然を守るための制度を常にアップデートさせてきたことが可能にしたものでしょう。

サステイナブルツーリズムを意識した事業運営を

サステイナブルツーリズムは、これからの観光業において欠かせないものです。

SDGsが2030年の達成を目指しており、国連世界観光機関が「SDGsと観光業には密接な関係がある」という主旨の発言をしていることを考えると、サステイナブルツーリズムは早急に取り掛かるべきものだとわかります。

今後、サステイナブルツーリズムの注目度はどんどん拡大し、観光客もサステイナブルツーリズムの取り組みをしている観光地へ積極的に足を運ぶようになるはずです。

新型コロナウイルスによってまだ観光客が思い通りに動けない時期こそ、サステイナブルツーリズムに適したプランなどを考えるいい機会となるでしょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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