WeChatミニプログラムの日本の活用事例を紹介 中国向け越境ECやインバウンド対策

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WeChatミニプログラムは、中国のメッセージングアプリ「WeChat微信)」によって2017年にリリースされたWeChatの機能です。

大きな特徴は、配車サービスやモバイルオーダー、ECなど様々なサービスWeChatの中から利用でき、新しいアプリをインストールが必要がないことです。

中国の企業以外にも、日本の企業からも導入事例があります。なかでも訪日中国人に向けた情報発信やECプラットフォームとして活用している例が多くあります。

この記事ではWeChatミニプログラムの概要と日本での導入事例について解説します。

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「アプリの中のアプリ」?WeChat ミニプログラムとは

WeChatミニプログラムとは、中国のメッセージングアプリ「WeChat」における機能の一つです。

ユーザーはWeChatミニプログラムを利用して、宅配サービスや配車サービスなどを個別のアプリをダウンロードせずに利用できます。

ここではWeChatの概要と、WeChatミニプログラムについての解説を述べます。

WeChatとは:MAU12億人の中国発メッセージングアプリ

WeChat微信)は、中国の大手IT企業テンセントが運営するメッセージアプリです。

メッセージのやり取りだけでなく音声通話やビデオ通話、簡単なファイルのやりとり、さらにモバイル決済もアプリ内から行えます。

テンセントの2020年第三四半期の財務報告によると、全世界におけるWechat(微信)の月間アクティブユーザー数(MAU)は12億人を突破しており、中国国民の生活には欠かせないアプリといえるでしょう。

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WeChat ミニプログラム(小程序)とは

WeChatミニプログラム(小程序)は、各種サービスアプリがWeChat内から起動できる機能で、2017年1月に実装されました。

これにより、ユーザーは新たにアプリをインストールしなくても、さまざまなサービスWeChat内から探して利用できるようになりました。

WeChatミニプログラムでサービスや商品を購入した場合、支払いはアプリ内にある「WeChat Pay」から行えるため、サービスの検索から決済までがすべてWeChatのアプリ内で完結する仕組みです。

ミニプログラム開発サービスを提供する「即速応用」が発表した「2020小程序年中研究分析报告(2020年ミニプログラム研究分析レポート)」によると、2020年6月の時点でWeChat内のミニプログラムの数は300万を超えており、デリバリーの注文やシェアカーサービスの予約、地下鉄やバスなどの乗車アプリを中心として、数多くのサービスが利用できます。

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インバウンド対策にWeChatミニプログラムを活用すべき理由

新型コロナウイルス感染拡大によって、国際的な往来が停止している現在、SNSでの継続的な情報発信や越境ECへの参入などはアフターコロナの訪日需要を喚起する手段として活用されています。

WeChatミニプログラムは、多くのユーザーを抱えており今後もその数は増加していくとされており、中国市場へのアプローチに活用できます。

ここでは、インバウンド対策においてWeChatミニプログラムを活用すべき理由について紹介します。

2020年GMVが16兆円超え:中国で第4のECプラットフォームに

WeChatは2020年1月に、2019年のWeChatミニプログラムの流通取引額(GMV)が2018年から160%増加の8,000億元(約13兆2,329億円)を達成したことを発表しました。

新型コロナウイルス感染拡大がもたらした巣ごもり消費の影響などもあり、前掲した即速応用の同レポートは、2020年のWeChatミニプログラムの流通取引額は1兆元(約16兆5,412億円)を突破すると予測しています。

また即速応用の同レポートによれば、WeChatミニプログラムの月間アクティブユーザー(MAU)も伸ばし続けており、2020年には9億を突破すると推計されています。

流通取引額の拡大と月間アクティブユーザーの成長から、WeChatミニプログラムは中国でアリババ京東拼多多に次ぐ第4のECプラットフォームと呼ばれています

このような普及率の高さから見ても、新型コロナウイルスの拡大によって海外渡航が厳しくなっている中、中国にいる人々に日本の製品の情報を発信するのにWeChatミニプログラムは有効であると考えられます。

また前述したとおり、WeChatミニプログラムには決済機能も備わっていることから、製品やサービスを知ってもらうだけでなく、実際に購入までつながる可能性もあります。

開発コストを抑えながら中国市場進出の足掛かりとなる

WeChatミニプログラムはWeChatアプリ内でアクションが完結するため、個別のアプリを開発する必要がありません。

また、iOSとAndroidで開発を分ける必要もないため、開発コストが抑えられます。

さらに、WeChatミニプログラムを搭載するWeChatは、12億人という大量のユーザーを抱えているため、ミニプログラムが多くの人の目に留まることで大きな宣伝効果が得られる可能性もあります。

自社開発が難しければ、マーケティングや運用などを含めてWeChatミニプログラムの開発支援を行っている企業なども存在するため、そのような企業に依頼することも検討するとよいでしょう。

日本企業によるインバウンド対策への活用事例

日本の企業にもミニプログラムの活用事例があり、その多くは訪日中国人観光客に向けたものです。

コロナウイルス禍で直接的な関わりができなくなっている現状でも、ミニプログラムを通した情報発信や越境ECも可能です。

ここでは、日本の企業によるWeChatミニプログラムの活用事例を紹介します。

1. 富士急行株式会社

山梨県・静岡県を中心に交通・運輸・観光業などを手がける「富士急グループ」は、2018年にテンセントと提携し、WeChat公式アカウントの開設するとともに、WeChatミニプログラムにてWeChatオンラインチケット(富士急门票预定)」を日本で初めて導入しました。

▲富士急行のWeChatミニプログラム画面:編集部キャプチャ
▲富士急行のWeChatミニプログラム画面:編集部キャプチャ

富士急行が発売するWeChatオンラインチケットとは、アプリ内から交通機関や富士急ハイランドの入園チケットの予約が可能となるもので、旅マエ旅ナカに利用できるものです。

2021年3月現在、富士急行のWeChatオンラインチケットでは、山梨と静岡にまたがる富士山地区における富士急行のバス・遊覧船・ロープウェイなどの乗車券がセットになったチケットが発売されています。

1日乗車券から3日間乗車券まで用意されており、1日乗車券は大人一枚5,000円、2日間乗車券は8,000円、3日間では10,000円です。

また富士急行はミニプログラムだけでなく、WeChat公式アカウントで記事や動画を更新し、ユーザーと積極的にコミュニケーションをとっています。

例えば、富士の紅葉を紹介する記事には「コロナが収まったら早く行きたい」というようなコメントも見られ、アフターコロナの訪日需要の喚起にもつながっています。

2. ドン・キホーテ

大手ディスカウントストアの「ドン・キホーテ」も、WeChatミニプログラム「惊安殿堂商城」を運営しています。

このミニプログラムでは、ドン・キホーテで取り扱っている商品を購入できるようになっており、商品を選択してから決済までの一連の流れがWeChat内で完結する仕組みです。

▲ドン・キホーテのWeChatミニプログラムの画面:編集部キャプチャ
▲ドン・キホーテのWeChatミニプログラムの画面:編集部キャプチャ

ドン・キホーテはインバウンド需要が叫ばれる以前から全店舗で免税免許を取得するなど、中国を含む訪日外国人の消費に注目してきました。

また、実店舗でWeChat Payによって商品を購入した消費者が公式アカウントを自動的にフォローする仕組みもあり、一度利用したユーザーに最新の情報が届くようになっています。

ミニプログラムでは日本の地域名産品の特集や日本で話題の商品を紹介する特集なども用意されており、コロナ禍で訪日できない現在、越境ECプラットフォームとしても利用されています。

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3. 阪急阪神百貨店

関西の大手百貨店を運営する「阪急阪神百貨店」も、WeChatミニプログラム「阪急阪神百货全球购<」を展開しています。

2019年に阪急うめだ本店と阪神梅田本店が、中国以外では初の「WeChat Pay スマート旗艦百貨店」に認定されました。

また、阪急うめだ本店では、フロアガイドだけでは分かりにくい部分を案内する「AI店内案内」や、訪日客に人気がある化粧品の事前注文ができる「化粧品予約受け取りサービス」をミニプログラム内で提供しています。

このようなミニプログラムとオフラインの店舗を融合したサービスを展開することで、訪日中国人の利便性向上に貢献しています。

また、ミニプログラムから直接商品を購入できるECの機能も備えており、越境ECプラットフォームとしても活用されています。

▲阪急阪神百貨店のWeChatミニプログラムの画面:編集部キャプチャ
▲阪急阪神百貨店のWeChatミニプログラムの画面:編集部キャプチャ

4.岐阜県

岐阜県は、県内で生産を行う法人または個人事業主が中国への越境ECを行える特設サイト「日本岐阜县跨境商城」を、2020年12月1日よりWeChatミニプログラム内に公開しました。

ここでは、岐阜県内の事業者から募集した県産品が販売され、さらにKOL(Key Opinion Reader)を活用したライブコマースも行われる予定です。

現在サイトは改修中で4月1日に新しいバージョンが公開される予定です。

▲岐阜県のWeChatミニプログラムの画面:編集部キャプチャ
▲岐阜県のWeChatミニプログラムの画面:編集部キャプチャ

5. 小田急百貨店

東京都の小田急百貨店は、上海に拠点を置くベンチャー企業「上海橙感信息科技有限公司(チェンガン)」が提供するWeChatミニプログラム「橙感(チェンガン)」を通じた中国向け越境EC事業を、2020年5月13日より開始しました。

ミニプログラム内のタブに「新宿甄选特辑」というページが設置され、化粧品やベビー用品、生活雑貨、アクセサリーなどが展開されています。

今回の「橙感」を通じた越境ECの参入で、小田急百貨店は百貨店の認知度向上とアフターコロナインバウンド誘客を目指しています。

▲小田急百貨店の「橙感」内のミニプログラムの画面:編集部キャプチャ
▲小田急百貨店の「橙感」内のミニプログラムの画面:編集部キャプチャ

中国での生活になじみ深いWeChatミニプログラム

WeChatミニプログラムは、中国のメッセージアプリWeChatから利用できるサービスです。

配車サービスやECなど生活に必要なサービスを手軽に利用でき、商品やサービスの検索から購入までをワンストップで完了させられます。

その利便性の高さから、中国国内では人々の生活になじみ深いものとなっており、今後もその需要は高まっていくと予測されます。

インバウンド対策として活用している日本企業も増えており、現在百貨店や自治体などもミニプログラムを活用して、自社の商品や県の特産品を販売しています。

新型コロナウイルス感染拡大の影響により国境をまたぐ移動が制限される今、WeChatミニプログラムは中国市場に向けた情報発信や越境ECの展開をする上での一つの手段として考えられるでしょう。

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199IT:即速应用:2020小程序年中研究分析报告

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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