百貨店・デパートはどうやってインバウンドにおいて地方誘致・地方創生に取り組むべきなのか?
インバウンド市場が盛り上がる中で、百貨店・デパートが地方誘致・地方創生によってインバウンド集客で成功する事例が増加しています。都心部での訪日外国人受け入れのノウハウをそのまま持っていって成功する場合もあれば、地方ならではの特色を活かしたり、個別の取り組みが評価されている事例もあります。
このページでは、百貨店・デパートの地方誘致・地方創生のインバウンド対策やインバウンド集客における活用について、次の3つの事例を取り上げます。
- 百貨店・デパート×地方誘致・地方創生事例その①:様々なインバウンド対策を進める「株式会社そごう・西武」
- 百貨店・デパート×地方誘致・地方創生事例その②:訪日外国人向けの売り場づくりを進める「株式会社近鉄百貨店」
- 百貨店・デパート×地方誘致・地方創生事例その③:関西エリアへの訪日外国人増を上手く取り込んだ「高島屋」
地方誘致・地方創生のためのインバウンド集客やインバウンド対策においては、業界・業種やターゲットとする国籍によってかなりその内容が様変わりします。例えば、中国出身の訪日外国人には人気の観光地が、台湾出身の訪日外国人には人気ではなかったり、その消費動向が異なっていたりすることがあります。またこういた訪日外国人の国籍とは関係ない共通の手法が、色々な国からの訪日外国人にしっかりと効果がある場合もあります。
ここでは、百貨店・デパートという業界・業種における地方誘致・地方創生の各社の事例を元にして、効果的な地方誘致・地方創生を活用したインバウンド対策やインバウンド集客のケーススタディーをしてみます。それでは見ていきましょう。
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「インバウンドコンサル」の資料を無料でダウンロードする「広告運用」の資料を無料でダウンロードする「展示会出展サポート」の資料を無料でダウンロードする様々なインバウンド対策を進める「株式会社そごう・西武」
「株式会社そごう・西武」はセブン&アイ・ホールディングスグループの百貨店事業を1社で担っています。 経緯としては株式会社ミレニアムリテイリング、株式会社西武百貨店、株式会社そごうの3社が、そごうを存続会社にして合併、これにより株式会社そごう・西武が誕生しました。またセブン&アイグループの株式会社ロビンソン百貨店を吸収合併したことにより、グループの百貨店事業を1社に統合する体勢が完成しました。
この「株式会社そごう・西武」では訪日外国人向けのインフラ整備を急速に進めています。これは訪日外国人が日本を訪れた際に日本の伝統・文化の体験や、食事、買い物などを楽しみに日本を訪れていますが、各観光施設における訪日外国人向けのインバウンド体勢の整備などに関しては不満が多いことなどに着目したものです。
インバウンド対応スタッフを増員
こうした取り組みの中で特にインバウンド比率の高い西武池袋本店と西武渋谷店では、多言語対応が可能なスタッフを大幅に増員。訪日外国人向けの対策の中でも特に需要が多い免税手続きカウンターへの誘導に際し、業界初となる「多言語対応発券機」を導入しました。また西武渋谷店には免税手続きがスピーディーに終わるよう「自動免税機」を4台設置し、1件当たりの手続き時間が半減しています。
また訪日外国人からの要望が多い「フリーWi‐Fi」び関しても導入を進め、利用開始前に非常に煩わしい事前登録が一切不要な「SEIBU-FREE-WiFi」をスタートしているほか、日本円への両替を手軽に進めてもらうため、自動外貨両替機も導入するなど様々な形でのインバウンド対策を進めています。こうした対策は訪日外国人を地方に呼び込む上でも地方店舗の売り場づくりという意味でも大いに活用できる手法だと言えるでしょう。
訪日外国人向けの売り場づくりを進める「株式会社近鉄百貨店」
「株式会社近鉄百貨店」は近鉄グループの主要企業で、1920年1月に創業した百貨店京都府京都市が発祥の地の「丸物」(まるぶつ)をルーツとする旧京都近鉄百貨店と、近畿日本鉄道の直営百貨店部門から分離し発展した旧近鉄百貨店が合併したことで誕生しています。
訪日外国人向けの人気の売り場の拡大などで伸びる近鉄
「株式会社近鉄百貨店」では近年特に訪日外国人による売上の拡大が続いており、2018年4月に近鉄百貨店がは発表した平成30年の2月期連結決算によると、売上高は前期比5.9%増の2822億1100万円となり、営業利益は59.6%増の48億8700万円となりました。これは大阪市阿倍野区の商業施設「あべのハルカス」に入る本店での訪日外国人向けの販売が大幅に伸びたことが原因です。あべのハルカス近鉄本店では創業80周年を迎え、売上が好調な化粧品売場や食料品売場を中心に話題性のあるショップを導入しており、集客力を強化しています。特にこの中で訪日外国人向けに伸びていたのが化粧品やブランド品などの販売でした。
こうした背景には関西国際空港でアジア各国からの航空便の増加が理由として挙げられます。特に2017年1月末にはLCC専用だった第2ターミナルビルを拡張し、国際線の乗り入れも増やすなどして訪日外国人の増加に対応。そしてこういった形で増加した訪日外国人をしっかりと「株式会社近鉄百貨店」では取り込みに成功しているということです。
関西エリアへの訪日外国人増を上手く取り込んだ「高島屋」
株式会社 髙島屋は、大阪府大阪市中央区難波に本社を置く百貨店で、登記上の本店となる大阪店を中心に分店5店舗を含む9店舗展開をしています。
百貨店の中でも高島屋は一人勝ちをしていると言われるほどインバウンド対応には成功している企業です。2017年4月7日に2017年2月期決算説明会を行いましたが、その中でインバウンド需要にあたる免税売上高については2016年度で344億円となり、前期比+15% の伸びとなりました。2018円の3月から5月期の連結売上高は前年同期比1.9%増の2198億円、営業利益は同5.7%増の85億円となりました。またその中でインバウンド需要については前年同期比21.4%増の153億円に伸びており、京都店や大阪店の伸びが顕著で、いわば「西高東低」と言える状況となっています。こうした背景には格安航空券を使って来日した訪日外国人が、浮いたお金をショッピングに使うという典型的なインバウンド消費が生まれていることがあります。
早くから始めた様々な支払い形式への対応に加え、関西エリアへの訪日外国人増が影響
また訪日外国人対応として、2016年からAlipay(アリペイ)・WechatPayment(ウィーチャットペイメント)など様々な支払い方法への対応を開始しており、通信・サービスカウンターの機能強化などを行ったことで、訪日外国人が気軽に買い物をしやすい環境を実現しています。しかし高島屋ではこうした状況であっても楽観はできないとして2019年2月期の通期業績予想は据え置いたままとしています。