「オミクロン株」現時点でわかっていること

11月8日に初確認された新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」は、渡航制限の解除が徐々に始まり、観光再開への機運が高まりつつある世界各国に新たな緊張感を高める契機となりました。

この記事では、オミクロン株の発生当初の状況から、各国の感染状況、2021年1月までのオミクロン株をめぐる各国の入国制限についてみていきます。

南アフリカでオミクロン株発見

オミクロン株の感染は11月8日に南アフリカで初確認された後、ECDCによると2022年1月7日時点でEU/EEA域内からは30か国、そのほか2022年1月6日までに日本を含めた149か国から感染例が報告されています。

南アフリカの国立感染症研究所によると、10月はデルタ株が84.6%(768件中650件)を占めていたのに対し、11月は検査された陽性例のうち83.5%(1,367件中1,141件)、12月には98.7%(1,071件中1,057件)がオミクロン株で占められており、急速にオミクロン株に置き換わる現状が浮き彫りとなっています。

南アフリカ大統領は、オミクロン株を受けての各国の対応について批判し、「我が国と南部アフリカの姉妹国を不当に差別している」と言及し、入国制限を強化した各国を名指しで批判したツイートを投稿しました。

Cyril Ramaphosa氏の投稿:Twitterより編集部スクリーンショット
Cyril Ramaphosa氏の投稿:Twitterより編集部スクリーンショット

関連記事:入国制限強化は「不当な差別」 南ア大統領が各国を批判 オミクロン株受け

オミクロン株の感染力の強さと重症化リスクの低さ、有識者の見解より

京都大学の西浦教授らは、南アフリカでの感染拡大初期において、1人が何人にうつすかを示す「実効再生産数」が、オミクロン株がデルタ株の4.2倍になったと分析しました。

オミクロン株が急激に拡大したことを示すもので、12月8日に厚生労働省の助言機関に報告されています。

また、西村教授は2022年1月18日のBuzzFeedの取材に対し、「当初の想定より実効再生産数が低く、流行規模も小さくなる可能性がある」と述べました。

感染者自身から2次感染を引き起こす「世代時間」については、デルタ株(従来株)が平均5日間であったのに対し、オミクロン株は2.1日間であるということです。

想定よりは感染率が抑えられ、他国と比較して脆弱な日本の医療体制を踏まえても当初の最悪な想定よりはマシであり、オミクロン株の流行は制御できる旨を強調しています。

米政府のアンソニー・ファウチ主席医療顧問は12月7日、オミクロン株の重症度について、判断には数週間かかるものの、初期データによればデルタ株よりも高くないと示されており、デルタ株よりも低い可能性もあると述べました。

また、WHO(世界保健機関)の事務局長であるテドロス・アダノム氏は12月8日、オミクロン株について「感染力は強いが重症化リスクは低い」との見解を示しました。

しかし、翌年1月6日のWHOの発表でテドロス氏は、「オミクロン株の症状はデルタ株に比べ、特にワクチン接種者では症状の深刻さは低いようだが、それは軽症に分類されるべきという意味ではない」と述べ、重症化リスクは低い研究結果が出ているものの軽症ではない旨を強調しています。

関連記事:「オミクロンはデルタより軽症という証拠」WHOが見解示す 感染力は強いとの考え

オミクロン株の急速な拡散力、各国の検査機関より

欧州疾病予防管理センター(ECDC)は11月30日、欧州連合(EU)でオミクロン株の感染が少なくとも44件確認され、全て無症状または軽症だったことを明らかにしました。

また南アフリカ医学研究評議会は、オミクロン株が初確認された、南アフリカ北部ハウテン州ツワネ地区に位置する医療機関の患者情報を、臨床報告として公表しました。

2021年12月2日時点で、酸素吸入機器を必要としない患者や呼吸器系の症状がみられない事例は、7割程度にのぼり、従来のデルタ型と異なり重症化リスクの低さがうかがえます。

前述したオミクロン株へと急速に置き換わる南アフリカのほか、イギリスでは12月31日時点で17,114人のオミクロン株の新規感染者が確認されています。

イギリスは約3週間後の1月19日、ワクチンの追加接種の進展および、入院患者数の減少を踏まえジョンソン首相は、イングランドで導入されている新型コロナウイルスの抑制政策「プランB」を終了し、より制限の緩い「プランA」に戻ることを発表しています。

「プランA」では公共施設でのマスク着用やワクチン接種証明の提示義務が廃止され、1月27日より実施されています。

アメリカではCDC(米疾病対策センター)の推計によると2021年12月26日~2022年1月1日の間に新型コロナウイルスに感染した人のうち、95.4%がオミクロン株へとほぼ置き換わりました。

12月5日~11日には8.0%にとどまっていたため、南アフリカ同様、オミクロン株の急速な拡散力がうかがえます。

関連記事:EU、オミクロン株感染44件確認も全て無症状か軽症

これまでに確認された、懸念される変異株

国立感染症研究所ではリスク度合いに応じて、変異株を「懸念すべき変異株(VOC)」「注目すべき変異株(VOI)」「監視下の変異株(VUM)」に分類しています。

「懸念すべき変異株(VOC)」については、2020年5月に南アフリカでベータ株が検出されて以降、同年10月にインドでデルタ株、11月にブラジルでガンマ株、2021年11月に南アフリカ等で今回のオミクロン株が、それぞれ最初に検出されました。

「注目すべき変異株(VOI)」は現時点では該当がなく、「監視下の変異株(VUM)」については2020年8月にペルーでラムダ株が検出されて以降、翌9月にイギリスでアルファ株、翌10月にインドで旧カッパ株、2021年1月にコロンビアでミュー株などが検出されています。    

世界と日本の感染状況

日本ではオミクロン株の感染者が未確認の時期から、国立感染症研究所が警戒レベル最大の「懸念すべき変異株(VOC)」に引き上げていました。

ECDCで把握された情報の範囲では、12月9日時点で死亡例は報告されていません。

12月19日までに日本を含め全世界67か国から感染例が報告されており、日本では11月30日に初確認されたナミビアから帰国した男性を筆頭に、12月8日時点で4人の感染が確認されています。

同月17日には沖縄本島の米軍基地において新型コロナウイルスのクラスター感染が発生しており、その多くがオミクロン株とみられています。

沖縄県では2022年1月7日時点で新型コロナウイルスへの感染が1,414人確認されています。

2021年12月26日時点では新規感染者のうちオミクロン株の占める割合が15%でしたが、12月30日時点では97%に達しておりCDCのデータ同様、オミクロン株への急速な転換が明らかとなっています。

厚生労働省によると1月13日21時までに、計3,699件の感染事例が報告されています。

また、1月26日に公表された東京都健康安全研究センターのスクリーニング検査結果によると、都内における6,616件変異株PCR検査実施数のうち、およそ92%にあたる6,131件でオミクロン株に感染している疑いがあることが判明しています。

オミクロン株をめぐる日本政府の渡航制限の動き

日本政府は11月8日から、海外からのビジネス目的の短期滞在者、留学生、技能実習生の新規入国と、待期期間の緩和を認めました。

その後11月26日から、入国上限者数を1日当たり3,500人から5,000人へ引き上げる方針を固めました。

インバウンド再開に向けてついに門戸を開きはじめるように思われましたがしかし、オミクロン株の発見を受け11月30日以降は外国人の新規入国は認めていません

さらに国土交通省は11月29日付で、全ての航空会社に新規予約停止を要請しました。12月1日からは入国者上限を11月26日から緩和された5,000人から、3,500人へと再び引き下げています。

こうした一連の日本の対応を受け、WHOの緊急事態対応を統括するライアン氏12月1日、「ウイルスは国籍や滞在許可証を見るわけではない」と述べ、自国民か否かで入国制限を判断するような対応は「矛盾している」と批判しました。

その後日本政府は12月2日に、国際線の新規予約に対する一律停止要請を取り下げ、航空会社に通知しました。

邦人の帰国需要に配慮した結果の措置で、1日あたりの入国者数上限の引き下げは維持しています。上記の通知を受けた航空会社は、12月4日より新規予約を再開しました。

水際措置をめぐっては、当面の間継続するとしていた「外国人の新規入国停止」および「有効なワクチン接種証明書保持者に対する行動制限緩和措置の見直し」については、2022年2月末まで継続することとしています。

関連記事:オミクロン株への水際対策「1月以降も措置継続」視野に

再び世界に緊張走る。対応はより迅速に

オミクロン株の発見を受けての各国の動きは、かつて新型コロナウイルスの感染拡大が確認された2020年1月ごろと比較すると、総じて迅速なものといえます。

2022年が始まり、日本では相次ぐ市中感染で第6波としてオミクロン株の爆発的な拡大と、感染拡大に歯止めがかからない状況が懸念されています。

岸田首相は1月18日、ワクチンの2回接種後も新型コロナウイルスへの感染が相次いでいる状況を受け、「ワクチン・検査パッケージ」の一時停止を表明しており、経済活動に再び制約がかけられつつあります。

今後どのように感染が拡大していくかは不透明ではあるものの、新型コロナウイルスとの戦い方が初期とは大きく変わってきていることは事実です。

関連記事
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<参照>
外務省:水際対策強化に係る新たな措置について(オミクロン株に対する水際措置の強化)(令和3年11月29日)
外務省:水際対策強化に係る新たな措置について(令和4年1月11日)
厚生労働省:オミクロン株に対する水際措置の強化(2)
厚生労働省:オミクロン株の国内発生状況について(1月13日21時時点)
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症対策推進本部:新型コロナウイルス感染症(変異株)への対応
国立感染症研究所:SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)について(第6報)
東京都新型コロナウイルス感染症対策本部:変異株スクリーニングの状況について(第2839報)
BuzzFeed:第6波ピークアウトは早く、流行規模も小さい? 当初想定と異なるオミクロンとどう向き合えば良いのか
CDC:COVID Data Tracker
ECDC:Weekly epidemiological update: Omicron variant of concern (VOC) – week 1 (data as of 7 January 2022) EU/EEA
GOV.UK:England returns to Plan A as regulations on face coverings and COVID Passes change today
NICD:SARS-COV-2 GENOMIC SURVEILLANCE UPDATE. 7 JAN 2022
South African Medical Research Council:Tshwane District Omicron Variant Patient Profile - Early Features
UK Health Security Agency:Omicron daily overview: 31 December 2021
WHO:WHO Director-General's opening remarks at the media briefing on COVID-19 - 6 January 2022

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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