伝統工芸品はどうやってインバウンドにおいて地方誘致・地方創生に取り組むべきなのか?
インバウンド市場が盛り上がる中で、伝統工芸品が地方誘致・地方創生によってインバウンド集客で成功する事例が増加しています。都心部での訪日外国人受け入れのノウハウをそのまま持っていって成功する場合もあれば、地方ならではの特色を活かしたり、個別の取り組みが評価されている事例もあります。
このページでは、伝統工芸品の地方誘致・地方創生のインバウンド対策やインバウンド集客における活用について、次の3つの事例を取り上げます。
- 伝統工芸品×地方誘致・地方創生事例その①:常識を破るカラフルな鉄器で世界に進出「南部鉄器(なんぶてっき)」
- 伝統工芸品×地方誘致・地方創生事例その②:まずは海外にECという形で伝統工芸品をアピール「WAYO」
- 伝統工芸品×地方誘致・地方創生事例その③:伝統工芸品を特設ページを作ってPR「eBay(イーベイ)」
地方誘致・地方創生のためのインバウンド集客やインバウンド対策においては、業界・業種やターゲットとする国籍によってかなりその内容が様変わりします。例えば、中国出身の訪日外国人には人気の観光地が、台湾出身の訪日外国人には人気ではなかったり、その消費動向が異なっていたりすることがあります。またこういた訪日外国人の国籍とは関係ない共通の手法が、色々な国からの訪日外国人にしっかりと効果がある場合もあります。
ここでは、伝統工芸品という業界・業種における地方誘致・地方創生の各社の事例を元にして、効果的な地方誘致・地方創生を活用したインバウンド対策やインバウンド集客のケーススタディーをしてみます。それでは見ていきましょう。
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「インバウンドコンサル」の資料を無料でダウンロードする「広告運用」の資料を無料でダウンロードする「展示会出展サポート」の資料を無料でダウンロードする常識を破るカラフルな鉄器で世界に進出「南部鉄器(なんぶてっき)」
訪日外国人に人気のある伝統工芸品の中で、今も昔も注目を集めているのは「南部鉄器(なんぶてっき)」でしょう。「南部鉄器(なんぶてっき)」は岩手県南部鉄器協同組合連合会の加盟業者によって作られている鉄器で年間生産額はおよそ92億円とされています。その歴史はなんと約400年で、岩手を代表する伝統工芸の1つです。日本においてはこうした南部鉄器を家庭で使う機会が現象しつつありますが、海外ではこうした鉄瓶や急須が欧米や中国・東南アジアを中心に人気となっています。そしてこうした海外向けの製品が逆輸入されることで、その魅力に再び日本も気づいているという循環が生まれています。
常識を破るカラフルな鉄器で世界に進出
その中で革新的な商品を生み出し、海外で「イワチュー」として親しまれているのが盛岡市に本社を置く岩鋳(いわちゅう)です。元々南部鉄器は黒いもので、鉄分補給ができるなどで人気ですが、欧米からのカラフルな商品が欲しいという声に応えて、岩鋳ではウレタン樹脂を鉄器の表面に焼きつけて着色する技法によってカラフルな鉄器を制作。赤、ピンク、緑、白などのカラフルな鉄器、これが大ヒットし、鉄器に新たな生命を吹き込みました。こうした商品は海外ではもちろん、日本を訪れた訪日外国人にとっても魅力的な商品であり、こうした商品の魅力によって地方誘致を実現している好例と言えるでしょう。
岩手県ではこうした鉄器について、今後は特にその人気が高まっている東アジア市場において重点的、集中的に中国で販路拡大に取り組み、岩手ブランドの浸透を図っていくとしています。
まずは海外にECという形で伝統工芸品をアピール「WAYO」
日本の素晴らしい伝統工芸品を世界で使ってもらうには、まずは認知してもらうことが必要です。個別に海外の博覧会、品評会、展示会などに出店するのも有効ですが、日本の伝統工芸品を世界に届けるために、全日本空輸株式会社(ANA)はECサイトを通じて世界にこうした日本の優れた伝統工芸品をアピール、そしてまずは認知してもらった後に伝統工芸品の産地である日本の地方に訪れてもらうという手法を取っています。
まずは海外にECという形で伝統工芸品をアピール
全日本空輸株式会社(ANA)と株式会社LiveArtsは共同で、日本の逸品を世界の人々に届ける伝統工芸ECサイト「WAYO」を2018年1月18日にオープンしました。日本の伝統工芸品を扱うこの「WAYO」は、日常使いができるスタイリッシュで機能性の高い製品を扱う「SHOP」、人間国宝に認定された作家による木工藝や刀剣界最高賞を受賞した巨匠による日本刀など、日本が誇る希少価値の高い逸品を、巨匠のこれまでの軌跡とともに紹介する「STORY」から成り立っています。単純に商品を紹介するのではなく、どのような背景からこうした伝統工芸品が成り立っているかについても丁寧に紹介しているのが特徴です。
オープン時の取扱商品数は300品種、2,000点以上となり、今後もこの取扱商品数を伸ばしていくとしており、全日本空輸株式会社(ANA)では今後、自社で保有するマイレージサービスを活用していくほか、マイルが貯まる・使えるなど、購入者にとって利便性の高いサービスとしています。
伝統工芸品を特設ページを作ってPR「eBay(イーベイ)」
「eBay(イーベイ)」は世界最大規模の海外ECサイトとして知られていますが、「eBay(イーベイ)」の日本法人イーベイ・ジャパンは、日本の伝統工芸品をeBayを使用して越境ECで販売することをサポートするため「小売・製造業者 海外展開支援プロジェクト」を開始しました。
伝統工芸品を特設ページを作ってPR
このプロジェクトにはオンライン決済サービス大手のペイパル、京都市、京都商工会議所が参画しており、まずは京都から開始し、全国の伝統工芸品に取扱いを広げていくとしています。伝統工芸品の生産額は最盛期の5分の1に縮小しているとされており、イーベイ・ジャパンによると訪日外国人の12%が伝統文化・工芸品を購入しているほか、イーベイのサイトでの日本の伝統工芸品に対する検索も年々増加しているという背景があるようで、2015年度の伝統文化・工芸品に関する取引額は400億円にまで達するほどに、海外での日本の伝統工芸品に対する注目は高まっています。
イーベイはこうした流れを受けてeBay.comに英語の特設ページを開設。京都の伝統工芸品について商品概要だけでなく歴史なども解説し日本の伝統工芸品への理解を高める施策を取っています。またイーベイに出店している店舗にはイーベイのロゴ入りステッカーを配布。これによって店舗を訪れた訪日外国人にイーベイで購入可能な商品であることをアピールしてもらう狙いもあります。こうした流れを進めていけば海外からの日本の伝統工芸品への関心も高まり、訪日の際に購入、帰国してからはイーベイでも購入可能など、地方を盛り上げる仕組みとして機能しています。