体験・アクティビティ系ではどうやってSNS・ソーシャルをインバウンドに活用すべきなのか?
今まで訪日外国人の日本観光のスタイルというと、訪日中国人に代表されるような「爆買い」を思い浮かべる方多いでしょう。これは2015年2月の春節休暇に訪日中国人が日本を訪れ、高級商品から日用品まで、本当にさまざまな商品を大量に購入していく様子を多くのメディアが取り上げたことから一気に知られるところとなり、「爆買い」は2015年の新語・流行語大賞になっています。これらの爆買いは高級商品だけでなく、日本製の歯ブラシ、子供用おむつなど、日用品にまで及んだことから多くの人の印象に強烈に残っているのではないでしょうか。こうした消費スタイルはまさ「モノ消費」の代表例です。
日本においても高度成長期にはこうした「モノ消費」が活発で、多くの家庭で白物家電、自家用車などが飛ぶように売れていきました。しかし、内閣府が平成28年に発表している「国民生活に関する世論調査」によると、日本では近年生活の豊かさを語る上で、「心の豊かさ」を求めている人の割合が増えており、逆に「物の豊かさ」を求めている人は減少を続けているという調査結果が出ています。つまり、もので得られる豊かさよりも、体験などから得られる心の豊かさを求めている人が今後増えていく、増えているとも言えます。
また同時に、訪日外国人の消費動向についても、近年は「爆買い」が収まりをみせ、「モノ消費」から「コト消費」へと消費の傾向が移っているとされています。これはつまり、日本ならではの体験型観光、アクティビティが人気となっているということですが、具体的には日本の伝統文化の体験や、田舎暮らし、着物体験、日本食を食べる、和太鼓体験、折り紙体験、能の鑑賞などといったこと以外にも、日本で楽しめるスキー、温泉、サイクリングなどのアクティビティーを楽しみたいと考える訪日外国人が増えて来ていると言われています。
こうした「コト消費」の盛り上がりと共に、これまで観光資源とは思われていなかった地域固有の体験、交流型の要素を取り入れた旅行形態である、エコツーリズや、グリーン・ツーリズムなどが注目を集めています。こうした地域固有の体験というのは、地元民からすると生活の一部で目新しさはないものの、外部から訪れた観光客、訪日外国人にとっては目新しいもので、こうした体験、「コト消費」を行いたいとする旅行者が、国内、海外を問わずに増えているようです。
それでは実際にこうした体験・アクティビティと言える観光スタイルの場合、SNS・ソーシャルをどのように活用しているのでしょうか?佐賀県佐賀市で田舎暮らしが体験できる「農家民宿 具座」、誰でも忍者体験ができる「伊賀流忍者博物館」、そして一度言ったら忘れられないほどの強烈なインパクトを誇る「ロボットレストラン」のSNS・ソーシャル活用方法について見ていきます。
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佐賀県佐賀市にある「農家民宿 具座」は平成18年2月に開業。建物自体は築100年の古民家で、客室は12畳と8畳の2部屋です。季節ごとの農業体験や田舎体験として田植えや川遊び、石釜でのピザ作りなど約20種類メニューが特徴の民宿です。「おもてなしの心は自給自足にあり」をモットーに、野菜、山菜の生産や収穫、加工や料理を行っています。またそれ以外にも、最近の日本の家では見られない囲炉裏、玄関・かまど、五右衛門風呂などの日本の伝統的でありながら、今は失われてしまった生活を体験することが可能となっています。こうした日本の原風景でありながら、失われてしまった生活を体験したい、農作業や田舎暮らしを体験したいというニーズを満たしたいとして訪れる方が多く、1度宿泊した方もその居心地の良さ、都会では体験できない体験にハマり、リピーター客も多数存在します。
「農家民宿 具座」は2016年頃から、韓国の観光連盟職員がブログで紹介、タイのテレビドラマのロケ地なったなどの理由で訪日外国人の間で人気となりました。実際に観光目的で「農家民宿 具座」を訪れているのは、日本のゴールデンルート観光は飽きてしまった、ゴールデンルート観光では得られない体験を求めて、日本の原風景である田舎で実際に田舎暮らしを体験してみたいとって訪日外国人です。このような背景を受けて、「農家民宿 具座」の宿泊客は、2016年に約500人だったのが、そのうち2割近くが訪日外国人に占めるまでに成長。現在も訪日外国人の比率が増え続けているようです。
非常に丁寧なFacebookページ運営
「農家民宿 具座」はFacebookページを効果的に運営しており、973人が「いいね!」をしており、フォロワー数は1,003人。運営の方針としては「農家民宿 具座」自体の運営方針と同様に、1件1件の投稿がとにかく丁寧であることが特徴です。投稿頻度は2〜3日に一回程度ですが、田舎の農家民宿だけあって、普段の農作業がそのまま魅力的なコンテンツとなっているのが大きな特徴です。投稿のスタイルとしては国外からのゲストが体験した農作業や体験、食事の内容を写真付きで紹介、ゲストと一緒に行う野菜の世話、収穫、畑の手入れ、川遊び、山菜の収穫、料理、農作業の様子を写真とテキストで紹介しており、中には動画でこうした田舎暮らしの様子を説明しているものもあります。そしてこうした投稿には日本、そして海外から宿泊したゲストなどのコメントがしっかりついており、民宿側もしっかりと返信をしています。
「伊賀流忍者博物館」のSNS・ソーシャル活用
三重県伊賀市にある「伊賀流忍者博物館」は忍者に関する博物館です。江戸時代末期の土豪屋敷を移築した「忍者屋敷」では、忍者がドンデン返し、仕掛け戸、もの隠しなど様々なカラクリを丁寧に解説しながら案内してくれるほか、古くからの忍者に関する非常に貴重な資料を集めた「忍術体験館」「忍者伝承館」があり、これらはを合わせると世界一の忍術資料となっています。また、本物の忍者道具、本物の忍術資料があるのも特徴で、歴史を感じさせるこうした忍者道具、忍術資料から、当時をうかがうことが可能です。さらには忍者集団 阿修羅による迫力満点の忍術実演ショー、手裏剣打ち体験などの体験を楽しめる他、忍者オリジナルグッズ売店「Ninja坊」で発売されているオリジナル忍者グッズも楽しむことができます。こうした忍者になりきれる各種体験が評価されているからか、トリップアドバイザーに投稿されている口コミでは、合計301件のうち、「良い」、「とても良い」が約40%を占めており、「普通」が32件と、全体的な評価は非常に高いと言えるでしょう。
「伊賀流忍者博物館」はFacebookページをメインのSNS・ソーシャルとして運用
「伊賀流忍者博物館」はFacebookページと、InstagramをSNS・ソーシャルとして運用しています。Facebookページは3,001人が「いいね!」をしており、3,018人がフォロー。運用の方針としては伊賀流手裏剣打選手権大会、伊賀上野Ninjaフェスタなどイベントの紹介、忍者屋敷の茅葺き屋根葺き替えなどの日常の風景の投稿、台風などの影響による営業時間の情報などを随時更新しています。投稿の間隔は約10日おきですが、コンテンツとしては手裏剣大会に関する投稿が目立ち、その他のイベントや施設などに関する投稿は比較的少なめです。
Instagramの運用に関しては2018年6月29日に解説されたばかりで、まだまだFacebookページほど上手く活用できていない様子です。約10日おきに更新されているFacebookページと異なり、Instagramに関しては運用を開始してから日が浅いこともあってか投稿の数はわずかに7つとなっており、写真の選択に関しても、Instagram用に考えて運用したと言えるようなものではなく、ややいきあたりばったりな印象を受けます。これはFacebookページと同様の投稿スタイルを行っていくのか、Instagramは完全に別の運用をしていくのか、投稿する内容を変えていくのか?など、運営の方針をある程度固めた状態で進めていったほうが良いかもしれません。
新宿歌舞伎町にある「ロボットレストラン」のSNS・ソーシャル活用
2012年に日本でも有数の歓楽街である新宿歌舞伎中にオープンしたのが「ロボットレストラン」です。この「ロボットレストラン」は「ここだけにしかないものを創りたい」という女性社長の強い想いから生まれたロボットと女性ダンサーによる、世界でも唯一のダンスショーが楽しめるレストランです。一番の特徴はまさに同店のコンセプトでもある、ロボットと女性ダンサーの組み合わせで、高さ3.4mの巨大女性アンドロイド(ロボコ)、アメリカからやってきたロボット(KING ROBOTA)などの他、小型のロボットダンサー、総勢30名のダンサーチーム「女戦~ジョセン~」などが極彩色非日常な空間の中で、和太鼓を打ち鳴らし、戦車、戦闘機などに乗って、ロボットと一緒にダンスパフォーマンスを披露します。ダンスショーの料金は一人8000円。食事は一人1000円か1500円のものを選択することが可能です。
SNS・ソーシャルに頼らないコンセプトの勝利
「ロボットレストラン」は特にSNS・ソーシャルで拡散される要素を既にレストラン自体が複数持っていることが特徴です。まず1つ目はド派手で一度見たら忘れられないほどの店内、そして巨大なロボットが女性ダンサーと一緒に踊るというコンセプトとしての面白さです。始めた行った場合に思わず写真に取りたくなる、思わず友人に教えてたくなる、思わずSNSに投稿したくなるような店内、そしてコンセプトが特徴です。
また公式サイトやアクティビティサイトからチケットを購入すると割引価格で購入できるチケットによって入店のハードルを下げていることも特徴で、さらにオープン時間が17時から23時という形であるのも、特に訪日外国人向けの集客には有効です。近年日本では大阪を中心に意識が高まりつつあるナイトタイムエコノミーですが、そもそも観光で来ている訪日外国人にとって日本のエンターテインメント、娯楽施設の開店時間は遅すぎることが多く、夕方から入れる、深夜近くまで楽しめるという絶妙な時間帯の設定が功を奏していると言えます。
こうして、思わずSNS・ソーシャルでシェアしたくなるという特徴があることで、「ロボットレストラン」のFacebookページは13,572人が「いいね!」を獲得、13,088人がフォローしています。運用方針としては有名人の来店情報、新型ロボットの制作に関する内容、新しいダンサーのオーディション、新しいダンサーの入店情報などの他の、ショーの様子を動画で紹介しています。SNS・ソーシャルの活用という意味ではそこまで手の混んだ運用はしていない印象ですが、コンテンツの魅力が高いことで、SNS・ソーシャルページにも自然に人が集まってくるという好例だと言えるでしょう。