百貨店・デパートはどうやってSNS・ソーシャルをインバウンドに活用すべきなのか?
インバウンド市場が盛り上がる中で、百貨店・デパートがSNS・ソーシャルをインバウンド集客で活用する事例が増加しています。インフラなど受け入れ体制の整備といったインバウンド対策と比較すると、イニシャルコストを抑えてスタートできることがSNS・ソーシャル活用のメリットです。
このページでは、百貨店・デパートのSNS・ソーシャルのインバウンド対策やインバウンド集客における活用について、次の3つの事例を取り上げます。
- 百貨店・デパート×SNS・ソーシャル事例その①:大丸松坂屋百貨店を傘下にするJ.フロントリテイリングのSNS・ソーシャルを活用した口コミ施策
- 百貨店・デパート×SNS・ソーシャル事例その②:大丸松坂屋百貨店の「WeChat(微信/ウィーチャット)」×「WeChatPay(微信支付/ウィーチャットペイ)」活用事例とは
- 百貨店・デパート×SNS・ソーシャル事例その③:口コミによるSNS・ソーシャル拡散を狙った新宿伊勢丹のイベント「Beauty Night For 中国人女子」
SNS・ソーシャルを活用したインバウンド集客やインバウンド対策においては、業界・業種やターゲットとする国籍によってかなり様変わりします。例えば、中国では日本と比べ物にならないほどSNS・ソーシャルが日常に浸透しています。また、業界・業種によってはSNS・ソーシャルを活用するにあたって、クーポンなどを活用し、集客施策に活用したほうがいい場合、ファン数を増やしてリピーター獲得や拡散させたり、認知を広めたりしたほうが良い場合などあるでしょう。
ここでは、百貨店・デパートという業界・業種におけるSNS・ソーシャルの各社の事例を元にして、効果的なSNS・ソーシャルを活用したインバウンド対策やインバウンド集客のケーススタディーをしてみます。それでは見ていきましょう。
Googleマップによる集客、うまく活用できていますか?
Googleマップでの集客ツール「口コミコム」を詳しく見る >大丸松坂屋百貨店を傘下にするJ.フロントリテイリングのSNS・ソーシャルを活用した口コミ施策
百貨店の「大丸」と「松坂屋」を運営する大丸松坂屋百貨店を傘下にするJ.フロントリテイリングでは、2015年までのインバウンドを「第一フェーズ」としており、いまのインバウンドは「第二フェーズ」に移行しつつあるといいます。すなわち、爆買い現象に代表される「モノ消費」から「コト消費」へのインバウンド消費の変換が起こっています。
「コト消費」変換をうかがわせる免税売上構成比の変貌
その変換は、免税売り上げの構成比を見ても明らかです。大丸松坂屋百貨店において、高級ブランド品の免税売上比率は2015年が、その30%がだったのに対し2017年には20%ほどに減少。対して、化粧品類の比率が19%から45%へ急激な伸びを見せました。というのも、同店舗で一人ひとりへのカウンセリングを行う「良質な体験」が訪日外国人に刺さったようです。
インバウンドの「コト消費化」で注目あびるSNS・ソーシャルの活用
このインバウンドのコト消費への変換は、SNS・ソーシャル活用との相性が良いものと考えられます。なぜならば、SNS・ソーシャルの活用はクーポンや商品紹介を通じた販促活動のみならず、消費者とのコミュニケーションや体験の提供ができるためです。
インバウンド売上で大きな伸びを見せた大丸・心斎橋店では、インバウンド向けにSNS・ソーシャルを活用したり、中国主要SNS「WeChat(微信/ウィーチャット)」と紐づくモバイル決済システム「WeChatPay(微信支付/ウィーチャットペイ)」の導入を進めたことで、化粧品類の免税売上高が最大前年同月比45%ほど成長しました。中国で人気の美容系KOL(インフルエンサー)を起用したリアルタイム動画プロモーションなど、SNS・ソーシャルでの拡散を意識したプロモーションを展開することで、訪日中国人の消費マインドを鷲掴みにすることに成功しました。
大丸松坂屋百貨店の「WeChat(微信/ウィーチャット)」×「WeChatPay(微信支付/ウィーチャットペイ)」活用事例とは
前項では大丸松坂屋百貨店のなかでも大丸 心斎橋店の事例をご紹介しましたが、今度は「松坂屋」のインバウンド向けSNS・ソーシャル活用に焦点を合わせてみましょう。松坂屋も早期からのインバウンド、特に訪日中国人の需要獲得の取り組みを見せていたことから、同社の様々な成功事例を見かけたことも多いのではないでしょうか。
老舗百貨店・松坂屋の「WeChat(微信/ウィーチャット)」活用法とは?
松坂屋では、訪日中国人の「爆買い」が世間的なトレンドとなった2015年の前年、2014年から「WeChat(微信/ウィーチャット)」のアカウントを立ち上げました。情報発信のメインコンテンツは店舗内でのイベント情報や、訪日中国人に人気の化粧品の情報などです。また、「WeChat(微信/ウィーチャット)」と相性のよい自撮りカメラ「Camera360」を活用した認知獲得プロモーションも実施します。松坂屋の公式キャラクターのデコフレームで写真が取れる、という取り組みで、これによってWeChat内のタイムラインに松坂屋の記事をユーザーにシェアしてもらい、認知獲得に成功しました。
支払いをより簡単・安心にするだけじゃない「WeChatPay(微信支付)」の活用法とは?
特に百貨店などの小売店において、「WeChat(微信/ウィーチャット)」の公式アカウントを運用しているのであれば「WeChatPay(微信支付/ウィーチャットペイ)」を活用しない手はありません。QRコードを介したモバイル決済システムである「WeChatPay(微信支付/ウィーチャットペイ)」は、公式アカウントに自動的に利用者がフォローすることになるので、顧客データの蓄積や、次回購入へアプローチするためのクーポンやメッセージ送付、越境ECページへの誘導などへ繋げることが可能です。
松坂屋でも「WeChatPay(微信支付)」を導入していますが、その目的は支払いの簡素化だけではありません。その支払をフックにして、訪日外国人とつながるためのツールとして活用しているとのことです。
口コミによるSNS・ソーシャル拡散を狙った新宿伊勢丹のイベント「Beauty Night For 中国人女子」
2015年の「爆買い」の頃に訪日中国人が高級ブランド品や家電商品を求めて殺到した新宿。その中心地に位置する伊勢丹もインバウンド業界では度々名を聞きます。インバウンド震源地に位置する伊勢丹ももちろんのこと、その主要顧客である訪日中国人によるインバウンド需要の囲い込みをねらいます。
注目したのは”在日中国人”の口コミ
2015年9月、新宿は伊勢丹でとあるイベントが開かれます。それは「在日中国人」のキャリアウーマンを集めた商品体験イベントです。イベント名は「Beauty Night For 中国人女子」。伊勢丹は、在日中国人女性の口コミ力に、インバウンドプロモーションの活路を見出します。
というのも、当時の「爆買い」最盛期のおり、訪日中国人の旅行形態は団体旅行がメインで、買い物は有限の自由時間で効率的にこなす必要がありました。そこで、彼ら訪日中国人は、旅マエの段階から入念な買い物リストを用意します。この、買い物リストに如何に名を連ねるか?が非常に重要でした。
そんななか、訪日を目前とした中国人女性が信頼を置く買い物リストの参照先は女性在日中国人がSNS・ソーシャルで発信する口コミでした。医薬品・日用品類で「日本に行ったら買わなければならない12の“神薬”」が出回ると、各地のドラッグストアで神薬12に名を連ねた商品が売り切れを起こしたように、SNS・ソーシャル上で、信頼をおける情報として口コミが拡散されるのはインバウンド対策として超重要指標です。
女性在日中国人に化粧品を体験してもらい、口コミを拡散してもらう
そのため「Beauty Night For 中国人女子」では女性在日中国人を集め、彼女らに化粧品を体験してもらいます。あくまでもイベントは、主催者からの売り込み的なものではなく、百貨店らしいきめ細かいサービスで、参加者の質問や体験に対応していきます。その結果、イベント終了直後から、参加者たちによる商品画像や伊勢丹フロアの紹介口コミがSNS・ソーシャル上に投稿されています。さらに、このイベントレポートを「Weibo(微博/ウェイボー)」でPR記事として配信したことで、口コミと合わせて60万人以上の潜在的訪日中国人にリーチすることに成功しました。